第13廻

 玄関の扉を開くと、春の暖かい風が俺たちを出迎えてくれた。その優しさと心地よさが、覚めた脳に再び眠気を催す。


「それじゃ。行ってきます」

「美春姉さん!行ってくるね!」

「ういぃぃぃ〜。いってらっしゃ〜〜」


 肴のスルメを噛みながら酒を飲みつつ、すっかりできあがった姉さんは、回らない舌を回しつつ見送りをしてくれた。

 今日はせっかくなので、廻と一緒に学校に行くことになった。今日は、というよりかはこれから、と言うのが正しいのだが。


「はあ........」


 俺に気にかけてほしいのか、廻がチラチラとこちらを見ながら大きなため息をついた。構ってやってもいいが、めんどくさいので無視して歩き始めた。


「はあ....はあぁぁぁ!!!!!!!」

「うるせぇぇぇ!!!!!!!!!」

「だいち、近所迷惑だから静かに!ね!」


 マジで一発ぶん殴ってもいいかな?神様なら一発ぐらい許してくれるよね?


「いやダメだぞ?」

「なんで心を読んでるんだよ…」

「しょうがないだろ?聞こえたんだから」


 意図してないのかよ。と心の中で思ったら廻がドヤりながら親指を上げていた。だから俺はその親指を掴んで、曲がってはいけない方へ曲げようとした(?)。


「痛ッ!?痛いねッ、痛いよねッ?!しかも今思考を挟まずに行動したよね?!無意識で骨折ろうとしてるってこと?!!?」


 本気で痛がっているかは知らないがそろそろ懲りたと思うので、指から手を離してやった。


「うー!痛かったヨォ!!」

「廻」

「なによ!いまさら!」

「近所迷惑だ」


 その瞬間、ブチっと何かが切れる音がした。

 廻からドス黒いオーラが湧き出たかと思うとそれが剣、槍、弓など様々な武器の形になった。廻はその中から剣を手に取りこう言った。


「だいち、ダルマか黒髭危機一髪、どっちがいい?」

「五体満足で」


 俺たちが住んでいる場所に爛星学園の生徒は少ない。それどころか朝はそもそも人気が少ない。そのため、廻は力を使いたい放題。

 結局何が言いたいかと言うと、俺は人がいる場所まで逆ギレした廻から、全速力で逃げなければならなかった。







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