第−#廻 芥神について

 俺は中学を卒業し、高校に入学するまでの期間で、あることを調べたことがある。それは日本の神話についてだ。特に深い理由は無く、単純に暇だったから、という訳で図書館で借りた本などを用いて、自分なりに古代日本の神話について色々調べていた。

 そんなある日、俺は一冊の本の中に、気になる単語を見つけた。

 。頭の中に鮮やかな紅色の髪を持つ少女が連想されたが、そのときは、たまたまだということにした。しかし、読み進めていくうちに、果たしてそうなのか、と自分の中で疑問が重なっていった。

 本の内容はこうだ。

 昔、芥神という神がいた。芥神は信仰を必要としない一人歩きする神である。しかし神は、人々の信仰なしには存在し得ないと古代日本ではなされていた。例外として土地に宿る神も存在するが、先刻も申したように、芥神は一人歩きする神だ。

 信仰も、宿木も必要としない、歪な存在。

 だが芥神は力を持っていた。

 天候を変えることもできれば、傷を癒すこともできた。その力を使って、人を助けることもある。だがその力は未知数であり、何の神様なのか。何を司るのかすら不明であったそうだ。

 あまりにできることが多く、当時は全能の神だとか言われたそうな。

 そして、いつしか人々は芥神を信仰し始め、一時は一国を支配するに至った。

 しかし、芥神を恐れた神々によって討伐され、芥神はある地へと逃れたという。その地こそがいま、俺が住んでいる県らしい。具体的な場所はわかっていないのか、本にはどこに降り立ったのかが、書かれていない。

 そして、芥神の姿について一文だけ、記述してある。俺はその、最後の一文に驚愕し、自分の目を疑った。


 《《その髪は、鮮やかな紅葉のようだっ

た》》。


 間違いなく、これは廻本人だろう。正直、あいつが神様だなんて信じられなかったから、驚いている。おまけに、本に書かれるレベルで有名だとは思いもしなかった。

 しかしだ。なぜこんな存在が世間に認知されていないのだろう。ネットで芥神と調べても出てくることは、そう多くない。

 ネットではダメだと判断し、継続して廻についての調査を進めることにした。


 

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