34 説明と答え

 夕食と入浴を終え、現在の時刻は深夜九時。

 合宿初日ということもあってかなり慌ただしい一日が続いたが、ようやく部屋の中で優輝と二人でいる時間が訪れた。

 なので今日の中川さんとのことを話すために俺は口を開いた。

「なあ優輝」

「なんだ?」

 そう言って優輝はこちらを振り向いた。

「今日バスに乗っているときに俺と中川さんはお前の告白に協力するって言ったよな」

「ああ、確かにそう言ったな。だけどそれがどうした?」

 優輝がキョトンとした反応を見せる。

 どうやら優輝は俺がこの話題を出した目的がまだ見えていないようだ。

「だからさっきテニスの練習が終わったあと、夕食までの自由時間の間に散歩がてら中川さんと一緒に告白するのに良さそうな場所をいくつかピックアップしといたぜ」

「それ本当か!ていうかお前ら行動するの早いな」

 俺の話を聞いた優輝は驚き半分、嬉しさ半分というような反応を見せた。

「ていうかさっきの雅也の話を聞くに、おれが合宿中に和泉さんに告白するっていうことを中川さんに伝えたのか……」

「それはまあ、当然だろ」

「だよなー」

 優輝が冷静さを取り戻すと、真っ先に慌てた様子で中川さんにも告白のことを教えたのか俺に問いかけてきた。

「中川さんに言うことが何か問題あるのか?」

 そう優輝に聞くと、

「いやーそのー、まあ、なぁ……」

 となんとも歯切れの悪い反応が返ってきた。

「もう、一体何が問題なんだ。言ってみろよ」

 少し強い口調で俺が優輝を催促すると、

「中川さんは和泉さんと仲いいから、もしかしたら中川さんは和泉さんの好きな人知ってるのかなー、って思ってな」

 と優輝は渋々口を開いた。

 それを聞いて、俺は優輝が言いたいことをおおよそだが理解することができた。

 要するに俺と中川さんはもうすでに和泉さんの好きな人を把握しているのではないのか、というような懸念をしているのではないだろうか。

「それなら多分知らないと思うよ。今日、中川さんに優輝の告白は成功すると思うかどうか聞いたんだが結論は『分からない』だった」

「そ、そうか」

 それを聞いた優輝は不安そうな表情から安堵の表情に変わった。

「だがな、そのあと中川さんは優輝と中川さんはお似合いだと思うとも言ってたんだぜ。だから自信を持ったらどうだ」

「ははっ、確かにそうだな。うじうじしててもどうしようもないしな」

 それを聞いた優輝はいつもの元気を取り戻した。

「それで、今日お前らが見つけた告白するのに良さそうな場所ってのを教えてくれないか?」

「ああ、もちろんだ」

 ようやく俺は優輝に本題の今日見つけたスポットについて教えてた。

「それで、お前が告白したい場所とかあったか?」

「うーん、実際にその場所を見てみないと分からないけど、おれはどっちかと言えば綺麗な海岸よりかは落ち着いた自然のベンチの方がいいかなー」

 どうやら優輝は広場の奥にある緑であふれている場所の方がいいらしい。

「理由を聞いてもいいか?」

 一応優輝の考えを聞いておく。

「やっぱり告白するなら落ち着いた場所がいいと思うんだよ。夕日が綺麗な海岸とかの絶景スポットは告白する場所というよりかは付き合ってから彼女と一緒に行きたいぜ」

「なるほどな。じゃあひとまず明日の朝そこに案内するよ」

「おーよ!」

 その後お互い布団に入って、優輝との会話は続いた。

 そして深夜十時を回るころには優輝は眠りについていた。

 しかし俺はまだ眠ることはできない。

「そろそろかな」

 待つこと深夜十時半。

 ようやく中川さんから連絡がきた。

 俺は寝ている優輝を横目に、部屋を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 


 



 

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