27 説明
一つの大きな決意をした俺は、その後テニス部に向かいいつものメンバーと合流した。
「遅かったね。何かあったの?」
「クラスのやつとちょっとした話をしてただけだよ」
「そうだったんだね。何か問題が起きたわけじゃないなら良かったよ」
先に部活に向かった和泉さんに心配されてしまった。
とはいえさっきの晴人との会話をわざわざ話す必要は間違いなくないだろう。
ひとまずさっきの晴人との会話は忘れて、部長が来るまでみんなといつも通りの調子で雑談していると
「よし、全員揃ってるな」
とようやく部長が姿を見せた。
「これから来週の月曜日から木曜日までの夏合宿について説明するぞ。その前に先に行っておくが今週の定期試験で赤点を取ってしまった人は補習があるだろう。その場合は合宿よりも補習が優先されるので合宿に参加することはできない。まあそのことはあらかじめ伝えておいたから赤点を取った人はいないと思うけどな」
部長はあくまで決まっていることを淡々と話している。
おそらく定期試験で赤点を取ってしまった人にとっては、現実として受け入れたくはない話だろう。
しかし、周りを見渡してみると部長の話を聞いても動揺している人は見当たらない。
おそらくだが、このテニス部の中には赤点を取った人はいなかったのだろう。
逆に言えば、それだけみんなこの合宿が楽しみだということ。
その概要が今から説明される。
「まず場所はここから少し離れた海に近い旅館だ。もちろんテニスコートはたくさんある。そしてスケジュールだがそれは今から配る資料を見てくれ」
そしてテニス部員一人一人に資料がわたっていく。
「基本はテニスの練習がほとんどだが、自由時間なども存在する。詳しくは各々で資料を見て確認してくれ」
そう言われたので俺は配られた資料に目を落とす。
朝ごはんや夜ご飯、入浴時間は固定されていて、部屋のメンバーも決まっていた。
だが起床時間や就寝時間が決まっているわけではなく、そこらへんは練習に支障をきたさないようにと書いてある。
また昼間は基本テニスの練習だが、水曜日の午後は自由時間であり、夜には花火やバーベキューをやるらしい。
このスケジュールを見るだけでも、きっと楽しい合宿になるだろうなと思える人は多いだろう。
「とりあえず今日はこの後いつも通り活動するため、詳しくは部活終わってからか家に帰ってからにでも見てくれ。それじゃー練習始めるぞー」
そうやっていつも通りの活動が始まった。
「いやー今日は特段疲れたねー」
「だなー。足つりそうだわ」
「そりゃあ二週間ぶりだからなあ」
「みなさん、その割にはよく動けてましたよ」
部活が終わり、いつも通り四人で帰路についた。
「そういえば部屋のメンバーを見たんだが、どうやらおれと雅也は同じだったぜ」
「まじかー」
「なんで嫌そうな反応なんだよ」
「だって暑苦しそうな夜になりそうだし」
とは言いつつ一応資料を確認する。
「うわ、まじじゃん」
「そう言ったじゃんか!ていうかその嫌そうな反応やめろよ。悲しくなるわ」
本当に悲しそうな顔をし始めたので優輝をいじめるのはこの辺りにしておこう。
「まあ楽しくはなりそうだから全然いいよ」
「ははっ、だろー!」
そう言った途端に優輝は笑顔になった。
こいつ実は俺のことの方が好きなのでは?
「確かに優輝くんと部屋が同じだと楽しくなりそうだよね」
「ですね」
和泉さんと中川さんも俺に同意するように話している。
「そういえば、資料を見るに二人も同じ部屋だったよ」
俺が資料で見た確かな情報を二人に伝える。
「やったー!わたしは栞ちゃんと同じで嬉しいよ」
「私も結衣さんと同じで嬉しいです。あっ」
どうやら本当に嬉しかったのか、衝動的に名前呼びが出てしまっていた。
それに気づいた中川さんがこっちを見て、照れたような表情を見せている。
正直めちゃくちゃかわいい。
「次会うのは合宿の時だね」
「ああ。すげえ楽しみだ」
「じゃあここで解散だな」
「ええ、ではみなさん来週の月曜日に」
そう言って俺たちは解散した。
そして待ちに待った夏合宿が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます