18 勉強会③

 昼食を終えた俺たちは午前中と同じく俺と優輝、中川さんと和泉さんの二手に分かれてそれぞれ勉強に励み続け、現在時刻は六時を回っていた。

 午前中は優輝のあまりの勉強のできなさに軽く絶望を覚えていたが、地頭は意外に良いのか午後には思ったよりも勉強が進み、少しは希望が見えてきた。

 しかし普段勉強をしていないであろう優輝は当然一日中集中力が続くはずもなく、今は完全に切れているのが目に見えて分かる。

 それに和泉さんも優輝と同じく集中力は切れているように見える。

 勉強は集中力があるのとないのとでは勉強効率に雲泥の差があるため、決して長時間休まずに勉強すればすぐに勉強できるようになる訳ではない。

 今日はこれ以上勉強をやってもあまり効果はないだろうから、もう終わりにしてまた明日やった方がいいだろう。

「そろそろいい時間帯だし、今日は終わりにしようか」

 俺が全員に向けて声をかける。

「そうだね。いやー疲れたー」

 和泉さんが俺に賛同し、うーんと体を伸ばした。

「俺、一日でこんなに勉強したの生まれた初めてだわ」

 そう言いながら、優輝はぐったりと机に倒れた。

 この疲れようを見るに、本当に一日にこれだけ勉強したのは初めてなのかもしれない。

「そうか。それはお疲れ様。まあ明日も同じくらい勉強するわけだからすぐに慣れるさ」

 達成感を感じてそうな優輝に対して俺は現実を教えてあげた。

 優輝は俺に向けてあからさまに嫌な顔をしたが、気のせいだと思うことにした。

「それで、この後どうする?」

 普通であれば明日の予定などを話したのちに解散なのだろうが、それだとどこかあじけないと感じたので誰かがこの後の予定を立ててくれないかという期待を込めて俺はこの発言をした。

「うーん。このまま解散……というのもどこかあじけないよね」

 どうやら和泉さんも俺と同じような心境らしい。

「だな」

 優輝が和泉さんに頷いた。

「中川さんはどうかな?」

「私もこの後は特に用事もないので大丈夫ですよ」

「じゃあ決まりだね!」

 和泉さんは嬉しそうで楽しそうな表情になった。

「お、俺の意思は?」

 聞かれてないので話の流れを汲んで、一応突っ込んでおく。

「やる気満々って顔してるのに別に聞くまでもないでしょ。ねえ、そうでしょ?」

 全部分かってるんだぞと言っているかのように目を細めた表情で和泉さんが俺に詰め寄る。

 どうやらばればれだったらしい。

 もう少しポーカーフェイスの腕を上げなければと心の底から思うのであった。

「でも具体的にこの後何をするんだ?」

 優輝からは当然の疑問の声が出る。

 こればっかりは俺もよく考えていないため、和泉さんの案に任せようと思っている。

「そうだねー。あ、改めて昨日のダブルス大会のお疲れ様会をやろうよ。プラスわたしたちの親睦会とかでいいんじゃないかな?」

「面白そうじゃん。俺はいいぜ」

 和泉さんの案にすぐ優輝が乗った。

「確かにいいかもな。俺たち四人グループが結成したのも実のところ昨日だしね」

 俺はこの四人グループ、通称TRグループのメンバーとは一応グループ結成前から全員と面識があったわけだが、全員が全員きちんと会話をしたわけではない。

 それこそ優輝と中川さんの組み合わせとかがいい例だろう。

「そうと決まればさっそく準備しよっか」

「準備って?」

「決まってるじゃん。パーティーのだよ!」

 俺の問いに和泉さんが自信満々に答える。

「早速買い出しにいこう!」

 そう言って俺たちは近くのスーパーで今夜の宴に必要な食材などを購入した。

 こうしてテスト勉強をした夜という、なんとも謎なタイミングでの親睦会が幕を開くのであった。


 

 

 

 

 



 

 

 

 

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