8 男女混合ダブルス①
面倒くさい授業が終わり、俺は今日の放課後もいつも通り部活に参加している。しかし大会が終わったばかりのせいか、全体的に集中力が欠けているような気がする。
「全員集合してー」
そんな空気を見かねたのか、部長が全員を集合させた。
「どうしたんだお前ら。全然集中できてないじゃないか」
「・・・・・・」
部員たちはみな黙っている。
「まぁお前らの気持ちもわかる。来週は部活がないし、大会も終わったばかりじゃ無理もないだろう」
ちなみにうちの高校は、再来週の月曜日から水曜日まで定期試験があり、その一週間前は部活ができなくなるといった校則がある。つまりは今週の月曜日から金曜日までの五回の活動の後、約二週間のブランクができるのだ。
ブランクができると分かっていては、今週練習したところで意味がないと考える人がいてもおかしくはない。
「そこで、だ。今週はいつもとは違うことをしようと考えている」
部員みんなが部長の次の言葉を固唾を呑んで見守っている。
「それは……男女混合ダブルス大会だ」
それを言われたとき、ほとんどの人は呆気にとられていた。
「参加は自由、男女でペアを組んで金曜日にトーナメントで戦ってもらう。そのためにも今日から木曜日まではペアで練習に取り組んでもらう感じだ。まずは参加したい人はここに残ってくれ。家で勉強したい人は遠慮なく帰ってくれてかまわないぞ」
そう言われると、周りがざわつき始めた。それも当然だろう。急に男女でペアを組めと言われれば戸惑いもする。正直みんな帰ってしまうのではないかと思うのだが……
「お前は参加するよな?」
「どうしようかな」
「えー参加しようぜー。きっと同じペアになった子と仲良くなれるぜ」
案の定、優輝が話しかけてきた。こいつは当然だが乗り気である。でもまあ家に帰っても勉強ぐらいしかやることないし、参加してもいいか。
「32人か結構残ったな」
俺の想定よりもかなり残っていた。しかし受験生である三年生はほとんど帰ってしまったため、一、二年生が大半を占めるという形になった。
「しかも男女16人ずつ残ってる。これならペアを決めるのも簡単だな」
出来すぎって感じもするが、まあいいだろう。
それよりも問題なのは……
「部長、それでペアの組み合わせはどう決めるんですか?」
当然、誰もが気になっているであろう質問を部員の一人が会長にぶつけた。
「そうだなー、まあくじ引きでいいだろう。1から16までの数が入ったくじを男女ともに引いてもらって同じ数の人同士でペアになればいいだろう。すぐに作るからちょっと待ってろ」
そう言って部長は走ってどこかへ行ってしまった。
残った人を一通り確認してみると、俺の知っている人だと宮内先輩や和泉さん、そして驚いたことに中川さんも残っていた。初対面な人に対しては、とんでもない人見知りを発揮するであろう中川さんは本当に大丈夫なのだろうか……俺は一人で勝手に不安を感じていると優輝が俺に向かって口を開いた。
「雅也はペアになりたい女子とかいる?」
「別にいないよ。ほとんど知り合いいないし。優輝はやっぱり和泉さん?」
「当然だろ。結衣ちゃんとはもっと仲良くなりたいしな」
「一緒になるといいな」
「絶対にペアになってやるぜ」
優輝は相変わらず和泉さんにご執心である。正直に言えば、俺は知り合いである中川さんと一緒になりたいが、優輝に電話であれだけ気になる人はいないと言い張ったため、それを話すわけにもいかない。
「よし、ではくじを引いてくれ」
部長がくじを作って持ってきたので、みんなが順番にくじを引いていく。
「雅也は何番を引いた?」
「11、お前は?」
「7だよ。あとは女子がくじを引き終わるを待つだけだな」
そして待つこと数分後。
「では、左から右へ1から16の順番で並んでー」
部長の合図で全員が一斉に動き出す。
俺は11の位置であろう右真ん中らへんに移動し、一端周りを見渡した。すると驚くべきことに優輝と中川さんが話している光景が俺の目の中に飛び込んできた。おそらくは優輝と中川さんがペアになったのだろう。これはかなり面倒くさいことになったと、この先のことを考えて肝を冷やしていると、俺のペアらしき人が背後から話しかけてきた。
「11番ですか?」
「そうですよ」
そう振り返って答えたあと、相手の顔を見た途端に俺は言葉を失ってしまった。
「あ、たしか同じクラスだよね?よろしくね!えーっと、島崎くん」
「こ、こちらこそよろしくね。和泉さん」
そう。俺がペアになったのは、優輝が狙っていた相手である和泉結衣さんなのであった。
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