3-2:勉強会

 騎士団長と手合わせした後は特に何もなく、ご飯食べてそのまま寝た。普通に美味しかった。今日の午前中はこの世界についてのお勉強、午後は魔法についての勉強となっている。魔法は多分だけど習得できない気がする。代わりに妖術があるから必要ないとは思うけどね。ただ覚えられるなら覚えておきたいかも。手数を増やすこともできるしね。SLAWOの時はできなかったけど、いまは色々変わってるから覚えられるかもしれないし、やるだけやってみようと思う。


 あ、そういえば種族クエストの扱いはどうなったんだろうか?あれを進めていかないと強くなれないんだけどな。

 

「失礼します。用意が出来ましたので、早速授業を開始しましょう。」


「コチョウさんが教えてくれるんですか?」


「はい、基本的なことについては私が。あまり深くは触れませんので、より詳しく知りたい場合は資料室に行けば色々と学べますよ」


ピコン『”アステラ”があなたを認識しました。これよりSLAWOの一部機能が使用可能になります』

ピコン『種族特性を変更。武器防具装備不可→装備品に付与された効果無効』

ピコン『ストーリークエストを受注しました。”世界について学ぼう”』


ストーリークエスト:世界について学ぼう

<概要>

 アステラについて知ろう!


<クリア条件>

□コチョウから話を聞く。


 ふぁっ!?えっ?今普通に生身の人間なんだけど?もしかして掲示板とか配信も見れる?ワンちゃんインターネット見て知識チートとか・・・、あ、無理ですね。はい。配信も掲示板もインターネットも見れない。ただヘルプ機能、インベントリ、クエスト機能が使えるだけでも御の字かな。ちゃんと進行中クエストに種族クエストも入ってるね。よしOK。


「??どうかしましたか?」


「あっ、いえ。何でもないです。初めてください。」


 ふぅ、なんつータイミングでログが流れるんだ。他のことは後から確認しよう。昨日からいきなりのことばかりで凄い疲れる。


 それからコチョウさんより、この世界について大まかな説明を受けた。


 まず、この世界には3つの大陸があること。多くの人々が暮らしている新大陸、魔王がいるとされる魔大陸、大昔に人類が暮らしていた未知の大陸、旧大陸。この3つ。私たちがいるのは新大陸で、人族を始め、多くの種族がこの大陸で暮らしているそうだ。魔大陸は作物は育たないが鉱石類の質が非常に高い。ただし魔物の数が多く最低でもLv50以上、奥に進めばLv200以上の魔物も出てくるためそこで暮らすのは難しい。旧大陸は魔大陸以上の魔境と呼ばれ、旧大陸に行って帰ってきたものはいないと言われている。そのため何があるのかどんな魔物がいるのかすらわかっていないらしい。


 次に国について。まず私が召喚されたのは聖妖国。新大陸の極東に位置し、東は海、他は大きな山々で囲まれており、なおかつ山を越えた先は荒野と砂漠が広がるため陸の孤島と呼ばれている。この国は他国を追放された人や馴染めなかった人々が辿り着いて出来た国だそうだ。周囲に敵国はなく、資源も豊富なため楽園と呼ばることもあるらしい。他に覚えるべきは二大国家と呼ばれてる南の帝国と北の皇国。西側は神聖国家を中心とした連合が存在している。東で国と呼べるのはここ聖妖国のみ。他の地域は砂漠か荒野が広がっているため小さな集落は存在しても国を形成するまでには至っていないそうだ。


 ちなみにどうやって情報を得ているのかと思えば、主に海を渡ってくる商人から情報を得ているそうだ。海も決して楽な道ではないらしいがそれでもやってくる人はそれなりにいるらしい。あとは偶にやってくる旅人とかから情報を得ているらしい。


「大前提として知っておくべきことはこれくらいでしょうか。他になにかありますか?」


「あ、そういえば救世軍ってなんです?」


「あー、あれですか。いまのところ国の垣根を超えて結成された魔王を倒すための軍ということくらいしかわかってないです。どの国がまとめるのかとか、いつから動き出すのかとかさっぱりみたいですね。そもそも本当に救世軍が結成されるのかどうかとか来訪者云々だってハッキリしてないみたいですし。なにせ神託が私たちの国に降りてきたのなんて初ですからね。英雄召喚の儀だって半信半疑。なんなら暇だからやってみるかーくらいの気持ちですから。あ、だからと言って雨宮様の扱いが雑になるとかそんなことはないですよ。やるからにはちゃんとやりますので。」


 ・・・その言い方だと他にすることなくて暇だったからやってますって感じなんだよな。もしかして謁見の時に貴族たちが浮かべた安堵の表情って暇じゃなくなったことへの安堵?さすがにそれはないか。てかそんな軽い気持ちで召喚されたの私。結構重要なことのはずなのになんか虚しくなるんだけど。


「他に何か聞きたいことはありますか?」


「いえ、あとは大丈夫です。」


「そうですか。では午前中の業務はこれで終わりです。昼になったらまた呼びに来ます。部屋を出る際はベルを鳴らしてどこに行きたいか言っていただければ、近くの者が案内いたします。」


「わかりました」


 そしてコチョウさんは部屋を出ていった。


ピコン『ストーリークエスト「世界について学ぼう」をクリアしました。話の内容をヘルプに追加しました。』

 

 おっ、クリア判定はあるのね。何かこういうログがでるとゲームの世界に思えてくるんだけど、ちゃんと現実なんだよね。変な気分になる。

 さて、SLAWOの機能をどこまで使えるか確認しておこう。


 まずは、メニュー画面を開く。元々ログアウトのボタンだったところが「地球に帰還」になってるけど、グレーアウトされてて押すことはできない。そのうち選択できるようになるんだろうか。


 ヘルプの内容はゲームの時の内容が引き継がれてる。インベントリも同様。冒険者カードもちゃんとある・・・けどここで使えるんだろうか?陸の孤島っていってたし使えない可能性もあるよね。お金持ちなのに一文無しとか悲しくなってくるからそうじゃないといいなぁ。


 クエストについては種族クエストが進行中になってて、他は特に変わりなし。掲示板とか配信とかインターネットに繋がるボタンはそもそも用意されていない。悲しい。でも時間と日付を確認できるのはいいね。しかも地球時間とゲーム内・・・じゃないやアステラ時間の両方がわかるのは地味に便利。地球時間はプレイヤーがこっち来るまで不要だけど、こっちに来たら何かと必要になるだろう。神託が本当なら彼らの先頭に立たないといけないわけだし。


 それから装備品については装備は出来るけど、付与された効果、だからステータスUPとかそういう効果は発揮しないってことかな?ってもしかして昨日着てた服に付与されてたっていう自動修復。あれ機能してないんじゃ・・・。だとしたら申し訳なさすぎる。ちゃんと修復されてることを祈ろう。

 

 あと取得可能スキルはどうなっているんだろうか。特にログには表示されてないからキャラクリエイトの時に選択できなかったものはそのままな気もするけど。まぁ、使えないからといって何か不都合があるわけではないからいいけど。


 さて、確認すべきことはこれくらいか。今はまだ9時。昼まではまだまだ時間があるし、訓練場にいって奥義の練習でもしてこようか。あれを安定して使えるようにならないと種族クエストが進まないからね。万能走法もまた一からやり直しかな。狐の時と感覚が違うだろうから。


 

 そして訓練場で奥義の練習や万能走法の練習、あと時折訓練場にいる騎士達とお話して午前中を過ごした。昼飯を済ませ、いまは魔法師長のラインさんの所に向かっている。案内は相変わらずコチョウさんがしてくれる。


「ライン魔法師長、雨宮様をお連れしました。」


「あ、どうぞ。入りなさい。」


「失礼します。」


 部屋に入ると、ザ・魔法使いって感じの恰好をした中性的なイケメンがソファで待機してた。この人がラインさんだろう。赤髪の長髪で背中の半分ほどまである髪を後ろで束ねている。顔が中性的で線も細く見えるので女性なのか男性なのかわからなくなりそうだ。多分声で判断する分には男性。これで女性ですって言われたらどうしよう。ってそもそも本人に聞かなければ問題ないか。


「初めまして。私が魔法師長のラインです。魔法師団のトップです。あ、魔法師団っていうのは主に魔法の研究、魔道具の整備などを行うところです。偶に騎士団と共に魔物と戦うこともありますね」


「そうなんですね」


「えぇ、そうなんですよ。なので戦闘に関しては騎士団からの方が多く学べるかと。陛下からあなたを鍛えろと言われてますけど、私が教えられるのは魔法の活用方法とか対処方法ですね。ごくまれに一切魔法を扱えない人もいますけど、そういう人は魔力が完全にない人だけですね。雨宮さんは魔力があるので何かしらの魔法は使えるはずです。どんなのを使えるのかはこれから確認します。」


 なるほど。初期スキルとしては選択できなかったけど、何かしら覚えられるのがあるっていう感じかな?無手格闘術、いまは古武術になってるけどそれも確か初期スキルになかったはずだし。始めたころは縛りきっつーとか思ってたけど、こうしてみるとそんなにきつく感じないね。今更だけどさ。


「ではこちらの水晶に手を置いて魔力を流していただけますか?」


 そういってどこからともなく水晶を取り出した。人の頭ほどのサイズはありそうな大きな水晶だ


「これはなんですか?」


「これは魔法適正を見る古代魔道具ですね。ほぼすべての魔法適性を見ることができるとされてます。ただ、古代の魔道具なので我々も知らない適性が出ることもあるかもしれませんが、まぁ、そうそうないので安心してください。さ、ではどうぞ」


 ・・・なんかその例外を引きそうなフラグが立った気がする。ま、使えなくても問題ないし気にせず魔力を流しますか。


 水晶に魔力を流すと、白と黒の炎が水晶の中に発生し、お互いに反発しあうようにぐるぐると回転している。炎ではあるが、特に熱は感じない。


「おぉ!これは妖属性ですか。これは珍しい!初めて見ました!あぁ、そういえば陛下があなたのことを半妖と言ってましたね。もしかして妖術とか使えます?」


 初めて・・・、ってことは私は新たに魔法を覚えることは出来ないってことかな。ちょっと残念。あとやたらテンションが高いなこの人。研究気質な人なんだろうな。


「え、えぇ。妖術使えますね。」


「おぉ!我々の記録には紫炎、狐火、隠形、変化、魅了、支配、生毒、殺陣、天駆、神転という妖術が残されてるのですが、どれか使えたりします?」


 なんか色々とやばそうな術が記録されてるし、後ろの二つは妖術なのかっていう疑問が残るけど、そういうのもあるって知れたのは大きい。あとで記録を見せてもらえないだろうか。気になる。


「今使えるのは紫炎、狐火、獣化ですね。獣化は恐らく鍛えていけば変化になるかとは思いますが。」


「なるほどなるほど!今使えるのはということは今後さらに増える可能性があると?」


「恐らくは。最初は狐火と紫炎しか使えませんでしたし。」


「おぉ!それは今後の成長が楽しみですね!よければ我々に妖術を使うところを見せてもらえますか?何せ記録にはこういうのがあったよ程度しか残ってないので、研究のしようがないんですよね」


「はぁ、それは構いませんが。」


「ありがとうございます!では早速研究所へ行きましょう!」


 そして王城の離れにある研究所に向かう途中、陛下に会った。


「あら、翔くんじゃない。こんなところで何してるの?」


 ・・・陛下・・・だよね?なぜそんな口調なんだろ?

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