1-11:スキル解禁

「「ご馳走さまでした。」」


「一葉、今日は配信するの?」


「いいや、しないよ。だから一緒にやろう」


「やった!色々試したいことあったんだよね。付き合ってよ。」


「もちろん!じゃ、先お風呂入ってくるね。」


「はーい。」


 今日も朝から大学に行ってきた。梨花もいなかったので特に何事もなく普通に講義を受けて普通に過ごしてきた。今日は金曜日で、明日明後日は休みなので夜更かしできる!一日ぶりに一緒にプレイできるのを楽しみにしながら食器を片付け、私も風呂に入り体を洗いゲームする準備を整える。


 そして二人で並んでリクライニングチェアに座りSLAOWを起動する。目を開けると昨日泊まった宿屋の部屋が目に入ってくる。とりあえず中央広場で待ち合わせしてるので向かう。


「カケルー!!久しぶりー!!」


「いやいや、毎日会ってるでしょ」


「この世界での話だよ!で、試したいことって?」


「あぁ、妖術っていうスキルの使い方がわかったんだけど、少し手伝ってほしいことがあってね。街中じゃできないから外いこうか?」


「おおー!やっと使えるようになったんだね!西の草原でいい?」


「いいよ。」



西の草原にて


「ついたー!!!で、僕は何したらいい?」


「うん、用意するから少しまってね。」


そして尻尾に魔力を流して狐火を発生させる


「おぉー!何それ何それ!?凄いね!!それはどういうのなの?」


「なんていえばいいかな・・・妖術を発動させるための媒体とでもいえばいいかな?カズハは杖を使って魔法を発動させてるけど、私はこの尻尾の先から出てる狐火を使って発動させてるの」


「なるほどなるほど。ってことは僕は攻撃を受ければいいの?」


「いや、狐火に対して使えるスキルを使って欲しい。ライトボールとか看破とか。」


 そういって、妖術の説明をする。相手のスキルをコピーして再現するというスキルであり、そのためには魔力感知で見たり、自分で受けたり、狐火で吸収したりして理解度を上げることで発動できるようになるという話をした。


「なるほど、スキル説明の『属性や種類という分類の概念が存在しないとされている。』っていうのはコピーするからってことかな?」


「ぽい、あと、極めればアレンジしたり複合したりできるらしい。とりあえずライトボールを撃ってみてよ」


 そういいながら、意識を集中させ魔力感知を発動させる。


「了解、ライトボール!」


 カズハの発動したライトボールは狐火にあたり、吸収されていった。うん、ウィンドアローのときと同じだね。どの魔法も同じことになるとは限らないけども。


ピコン『ライトボールの理解度が上がりました。スキルの発動が可能になります』


「おおー!そういう感じなんだね!!どうなった?」


「うん、発動可能になった。けど完全に再現するにはまだ足りないみたい。あと2回お願いできる?多分それで理解度100%になるから」


「了解」


 それからライトボールを2回狐火に放ってもらった。最後の一発は狐火にあたると吸収されずに狐火と共にはじけ飛んでしまったが、理解度は100%になった。どうやら狐火にも最大容量みたいなのが存在するようだ。


「ありがとー。理解度100%になったよ!」


「おお!ちょっと使ってみてよ!」


「したらあそこのホーンラビットに撃ってみるね!ライトボール!」


「ピギャっ!」


 攻撃を受けたホーンラビットは軽く押されたような感じになったが、たいしてダメージは受けてないようだ。そしてこっちに向かってくる。


「あっ、零距離戦闘陣っていう個性のせいで1メートル以上距離あると威力が10分の1になるんだった。」


「あ~、そういうのあったね。まぁけん制にはなるんじゃない?」


 そんな感じで話ながらもこちらに走って突進してきたホーンラビットを避けて、今度は近距離でライトボールを放つ。その一発でホーンラビットは倒れた。1メートル以内だと威力二倍だから通常より全然威力が高い。


「おおー!かっこいいね!尻尾が9本になったらより凄いことになりそう!!」


「だねー、他のスキルもお願いできる?」


「うん、他で出来そうなのはライトヒールとヒールだね。看破と鑑定は必要?」


「あー、それ最初にスキル取得してるんだよね・・・先に自分で試してみるからライトヒールとヒールをお願い。ダメだったらお願いする」


 そして狐火を用意してライトヒールとヒールを使用してもらい、理解度を100%にした。


「ありがとー!出来たよ!ほれ、ライトヒール!ヒール!」


「おおー!!ちゃんと出来てるね!」


「よし、次は鑑定と看破を試してみるね」


「頑張れー!!」


 鑑定と看破の発動を試してみる。といってもどう使っていいのかわからないけど、多分狐火を通せば発動できるはず。発動する元は持ってるわけだし。



 ということでその辺の薬草を対象に鑑定を使用するというイメージを魔力と共に狐火に送る。特にエラーとかも表示されず発動待機状態になったので、鑑定を発動する。


◆雑草

 ・その辺に生えてる雑草。まだ知らぬ何かが眠ってるかもしれない。


「おっ、鑑定は出来たよ!!」


「凄い凄い!じゃぁ、次は看破だね!」


一葉に対して看破を使用してみる。


■名前:カズハ

■レベル:14


「名前とレベルしか表示されないけど出来たよ!というかカズハもうレベル14なんだね。エリアボスいけるんじゃない?」


「どうだろう?まだエリアボス見つかってないんだよね、いるかどうかも判明してない。」


「あー、そうするとNPCに聞いてフラグを立てないとダメとかかもね。それか単にまだそこまで進んでないか。」


「だねー、この後何かしたいことある?」


「とりあえずレベル上げたい。」


「了解。そしたらこのまま西の森に入ってみようよ。まだ僕も入ってないし。」


「いいよー、んじゃいこっか。」


 ということで西の森に向かう。道中の敵は倒しつつだけど、私もスキルが使えるようになったことで狩りのペースがかなり早くなった。そして森の中に入っていく。森の中は見通しがわるく、尚且つ夜ということもあるので魔力感知を常に展開しておく。というか一葉は大丈夫なだろうか?私は夜目が効いててハッキリみえるけど、一葉は人族だから見えないんじゃ?


「そういやカズハは見えてるの?」


「ん?あぁ、夜目スキル持ってるから大丈夫だよ。ほら、このゲームってリアルの時間と同期してるから夜に狩りすること多いでしょ?だからいつの間にか夜目のスキルを得てたんだよね。種族的に夜目が効くとかじゃなければ、今プレイしている人の多くは持ってると思うよ。」


「なるほどね。じゃぁ森の中でも大丈夫なんだ。っと15mくらい先に魔物がいるみたいどうする?」


 私の魔力感知に反応があった。今気が付いたけど、スキルレベル4にもなると結構な範囲でわかるらしい。


「行ってみようよ。まだ浅い区域だからいてもウルフかゴブリン、それかそれと同程度の強さの敵しかいないだろうし。」


「了解。」


 魔力感知に反応のあった方向へと進んでいくと、ウルフが五体固まっていた。とりあえず看破を使用する。


◆ウルフ×4:Lv10

◆ブラックウルフ:Lv13



「真ん中の個体がブラックウルフという種族で13、他はレベル10。どうしよっか」


「先に取り巻きを倒そうか。カケルは右の2体をよろしく。僕は左の2体を倒す。ブラックウルフは一旦放置で。」


「了解」


 そして私はウィンドアローを、一葉はライトボールを発動して左右のウルフの気を引く。私たちに気が付いたウルフの群れはこちらに走ってくるので左右に分かれて分断させる。狙い通り左右に二匹ずつわかれ、ブラックウルフは後ろで待機して指示を飛ばしているようだ。


 こちらに向かってきた先頭の個体が足で攻撃をしかけてきたので回避する。カウンターを仕掛けようとしたところで更に後ろからもう一体が攻撃。これも回避すると先ほどの一体が攻撃と、攻撃と攻撃の間が小さく、カウンターを入れるのは難しい。


「ウィンドアロー!」


 ま、難しいだけで出来ないわけじゃないんだけどね。攻撃のリズムを読み、タイミングを合わせてウィンドアローを叩き込む。そしてもう一体からの攻撃をいなし腹を蹴り上げ、魔力を纏わせた腕で殴りつける。


 その直後、先ほどウィンドアローを当てた個体がダメージから復帰しこちらに襲いかかってくる。先ほどと同じように避けようとするが、今度はそれを読んでいたようで避けた方向に攻撃してくる。けど、甘い。尻尾を使って受け流し、頭を蹴り上げ、ライトボールを当て、最後に殴ってフィニッシュ。そしてもう一体の方にも距離を取られる前に近づいて倒しきる。


 一葉の方はまだかかっているようだが、安定してるので倒しきるのも時間の問題だろう。私は後方のブラックウルフに攻撃をしかけにいく。


「ウ"ォ"ン!!」


 ブラックウルフの力強い鳴き声と共に、複数の魔法が飛んでくる。一つはウィンドアロー。もう一つはウィンドカッターだろうか?その二つで弾幕を作られ、中々近づけない。とりあえずウィンドカッターは狐火で吸収して使えるようにしておく。


パァン!


 あら、一回吸収しただけではじけ飛んでしまった。理解度が足りてないようなのでもう一度狐火をつけウィンドカッターに当てる。ウィンドアローは普通に避ける。これを3回ほど繰り返すと、ウィンドカッターの理解度が100%になり、弾幕にも慣れたので攻撃をしかけにいく。


 両足に魔力を纏わせ、一気に距離を詰めて頭を蹴り上げ、体が少し浮いたところで頭を殴る。更に追撃を加えようとすると、体を回転させ尻尾で攻撃してきたのでしゃがんで避け、この体制からタックルをしかけて弾き飛ばす。更に追いかけて体を蹴り、殴り、そしてもう一度蹴ったところで体力が0になったようだ。


 そして一葉の方もいつの間にか終わっていたらしい。


「お疲れー!!カケルの強いね~!全然間に入るタイミングなかったからびっくりだよ!!しかもあれまだ余力あるでしょ??」


「お疲れカズハ。いやいや、あれ以上大きいのが相手だときついよ。こっちの攻撃で怯むのが前提でコンボ組んでるから、あのサイズがギリギリ。攻撃するには1メートル以内に入ってないから大した威力にならないし。」


「あぁー、動きにはまだ余力ありそうだけど、そもそも攻撃が通らない場合があるのか。せっかくスキル使えるようになったのに、まだまだ大変なんだね。」


「だねー、ま、もう少し強くてもなんとかなるだろうし、奥に進もうか」


「OK-!いっそ行けるところまでいこうかー!」


私たちは更に奥へ進んでいくことにした。


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