1-12:ネームドモンスター

 ウルフの群れを倒した私たちは更に森の奥へと進んでいく。最初の一回以降は5匹以上の群れに出くわすことはなく、ゴブリン×2とかウルフ×3、偶にブラックウルフ×2程度だったので、問題なく突破していった。そして今、私たちの目の前には熊がいる。


◆ブラックベア:Lv15


今までで一番レベルが高く、全長も三メートルくらいありそうだ。


「カズハ、攻撃よろしく。私はあいつの気を引くから」


「回避タンクってことだね。了解。気を付けて。」


 とにかく近づかないことには大したダメージにならないので、狐火を起動、ライトボールを待機させてからブラックベアに近づいていく。


「グァア!」


 ある程度近づくと、ブラックベアからこちらに向かって走ってきて、右腕で攻撃してくる。


「うわっ、危なっ!」


 見た目のわりに早く、そして思った以上に攻撃が伸びてくるので危うく当たりそうになるが、ギリギリで回避。待機させておいたライトボールを放つ。しかし大したダメージにはなっていないようで、何事もなかったようにこちらに攻撃してくる。


「ライトボール!」


 私の方に意識が向いている中、一葉がライトボールで攻撃してくれる。今度はそこそこのダメージが入ったようで、ブラックベアの攻撃がキャンセルされる。


 その間に腕に多めに魔力を纏わせて思い切り頭を殴る。一葉もライトボールを継続的に撃っていきダメージを稼いでいく。ある程度時間が経つと怯みから復活したブラックベアが腕を払ってくる。バックステップで回避して距離を取るが、更にそこに黒い槍が飛んでくる。


「うおっっと」


 暗い中で黒だと視認しずらい。魔力感知で魔法が飛んでくることが分かったから反応できたけど、あれがただの槍だったら反応できなかったかも。


 距離が開いたのでもう一回距離を詰めようとするのだが、ウルフが使う魔法よりも鋭く、短い間隔で飛んでくるから中々近づけない。


「ライトボール!」


 そこに一葉がライトボールを放ちブラックベアの気を反らす。


「カケル!私が気を引いてるうちに!」


「いわれなくても!」


 即座に距離を詰めて魔力強化した指で目を抉る。


「グオオオ!!」


 突然目を抉られたことで大きく怯んだ。その隙に私と一葉で攻撃を繰り返していく。攻撃していくうちにブラックベアの魔力が濃くなっていくのを感じ取った。


「っつ・・・まずい!!」


「グッ・・ガオオオオオオオオ!!!」


「うわぁっ!!ぐふっ!!」


 これ以上近くにいるのは危険だと思い、距離を取ろうとするが間に合わず、咆哮により吹き飛ばされ、木に体を打ち付ける。


「ヒール!カケル、大丈夫!?」


「がはっ、ごほっ。大丈夫、ありがとう」


 HPは回復したものの、まだ体が痛む気がするがそうこう言ってる場合じゃない。赤い線が全身に入り目が真っ赤になって禍々しい見た目になったブラックベアが二本足で立っている。恐慌状態とかそういうのだろうか。一瞬も気を抜けない。


「ガオオオオオオオ!!!」


「うそでしょ!?!?」


 魔法で出来た黒い槍が10本、ブラックベアの周囲に展開されそれが発射される。


ドン!!


 一発一発の威力が非常に高く、後ろにある木に大きな穴が開き、細い木は次々と折れていく。それが終わると私の方に一瞬で距離を詰めて攻撃してくる。


「ちぃっ!!」


 回避が間に合わずに一発目は受け流す。が、それでもかなりのダメージを追う。


「ライトボール!」


 一葉がライトボールで攻撃して気を引こうとするが、まるで意に介さず私に攻撃を繰り出してくる。


「くそっ、がぁっ!」


 一か八かで全身に魔力強化を展開して強引に受け流す。初めてやったが上手くいったようで問題なく受け流し反撃する。頭脳も強化されているのか頭が冴えわたっている。


 脚を蹴りブラックベアのバランスを崩そうとするが、わずかに体勢が崩れたのみで、それを無視して私に腕をふるってくる。それを避けつつ、ウインドカッターで脚を攻撃。一葉もライトボールで脚を狙ってくれた。


 重点的に脚を攻撃し続けると、それを嫌がったブラックベアが頭を下ろし四足歩行に戻った。そこを狙って、顔に蹴りを入れる。いままでで一番体が揺らいだので更に追撃。一葉の援護もあり、最後の追撃でブラックベアのHPが0になり、光となって消えていった。


ピコン『ネームドモンスター「血暴熊けつぼうぐま」を倒しました』

ピコン『称号「暴徒鎮圧」を取得しました。』

ピコン『レベルが上がりました』

ピコン『魔力強化のレベルが上がりました』

ピコン『魔力操作のレベルが上がりました』

ピコン『魔力感知のレベルが上がりました』


<<ワールドアナウンス:ネームドモンスター『血暴熊』がKazuha、カケルの二名によって討伐されました。ネームドモンスターが発見・討伐されたことにより、ヘルプに基本情報が追加されます。詳細はヘルプを参照ください。>>


◆ネームドモンスター

 ・通常のモンスターよりもステータス・スキルが強化された個体。何らかの条件を満たした際に現れる。世界各地に様々なタイプの個体が存在する。


わわわ、なんかいっぱいログ流れた。てか


「ネームドモンスターだって!!!すごいね!!!」


「どうりで強い訳だ。ネームドなら配信に映したかったなぁ、残念。あ「暴徒鎮圧」って称号取得したんだけどカケルも?」


「うん、私も出てるね。」


◆称号:暴徒鎮圧

 ・血暴熊を倒した者に送られる称号。恐慌状態の敵に対してダメージが3倍になる。


「でも効果は微妙だね・・・いや、条件を満たせば強いんだろうけど、意図的に恐慌状態にするのは難しそう・・・。カケルはなんかいいドロップあった?」


「血暴熊の肉、爪、毛皮、皮・・・あっ、なんか『血暴熊の指輪(力)』っていうのがドロップしてる。効果はSTR・VITが+20だってさ。はぁ・・・防具扱いみたいで装備できないからカズハに上げる。」


 せっかくネームドを倒してワールドアナウンスにも名前出たのにドロップが全然美味しくない・・・。悲しい・・・。


「装飾品もダメなのは悲しいね・・・。したらありがたく貰うね。ちなみに僕は血暴熊シリーズの素材と『血暴熊の指輪(魔力)』をドロップしたよ。効果はINTとMNDが+20だって。」


「倒した時の戦闘方法に合わせた効果で出るっぽいね・・・。でも装備がドロップするならわざわざネームドモンスターを倒す必要ないなぁ。」


「妖術で使役系のスキルをコピーできれば使えるだろうけど、結局自分で使えないもんね。あんま狙う意味はないよねー」


「だね、この後も狩り続ける?」


「少し休憩してMP回復するの待ってから狩りしよう。これ以上奥に行くのはやめて、この辺で狩りするのが丁度いいとも思う。てかHPとか大丈夫?」


「えっ?あっ、めっちゃ減ってる。ヒールお願い!あとMPポーションあったら頂戴」


 確認したら残り体力はたったの3、あと数秒倒すのが遅かったら自傷ダメージで死んでたかも。MPも残り80しかない。最後の魔力強化でめっちゃ魔力を使ったらしい。どうりで身体が怠いわけだよ。


「はい、ヒール。MPポーションはあと一本しかないんだよね。そんな減ってるの?」


「うん、80しかない。これだと妖術も魔力強化も使えない」


「あー、そしたらカズハが使って。一本で150回復するよ。なんかMPポーション店頭に全然並んでないんだよね。」


「ありがと。それって作り手が少ないとか、素材が足りないとかそういうのがあるんじゃない?」


「どうなんだろ?そういう話は聞かないなぁ・・・。でも、それが一番ありえそうだよね。MPポーションの素材は魔力草だったと思うから狩りをしつつ、見つけたら採取してこっか。鑑定しながら移動していけばわかるでしょ。」


「ようは手当たり次第鑑定してみてってことね。まぁいいけど、ちょっと怠いから横になるね。」


「ん、了解」


 レベル上がったからSP振ろうか。ってレベル2も上がってるし。したらMNDに10、DEXに10割り振ろうか。これでMNDが50以上になる、DEXもあと10上げれば40になって種族クエストのタスクを一つクリアできる。


 それから何気ない話をして時間を潰し、MPが半分まで回復したので探索を開始する。道中のモンスターを倒しつつ、その辺の雑草に鑑定をして魔力草を探していく。


★薬草

 ・HPポーションの素材。これ単体でもHPを少量回復することができる。


★夜光草

 ・暗い所に持っていくと発光する草。錬金術の素材になる。


★辛井草

 ・辛味を持つ草。香辛料の素材になる。


★魔力草

 ・MPポーションの素材。これ単体でもHPを少量回復することができる。


 1時間ほど狩りをしつつ鑑定しながら歩いてやっと見つけた。関係ないのもたくさん見つけたけど。


「おっ、魔力草あったよー!なんかわずかに魔力を持ってるみたい。」


「あー、僕の魔力感知のレベルはまだ2だからわからないかも。カケルはいくつなの?」


「4、あ、さっき上がったから5だね。」


「もうそんな上がったの!?凄いね。とりあえず草の形見せて。・・・ふむふむ、こういう形なんだね。ありがと。これを参考に探してみるよ。」


ピコン『レベルが上がりました』

ピコン『DEX40以上、MND50以上。をクリアしました。』

 

 さらに2時間ほど、道中のモンスターを倒しつつ採取を続け、魔力草が50個ほど集まり、レベルも上がった。取得したSPは全部DEXに割り振った。


「ふう、今日はこんな感じで終了かな。街ってギルドに報告しようか。」


 そして街に戻りいつものウルフの素材を納品し、余った素材は買い取ってもらう。血暴熊の素材は何かに使えるかもしれないので倉庫に預けて置く。


それからMPポーションが少ない件について受付に話を聞いてみる。


「そうですね、MPポーションは西のアラン街から仕入れしてるんですけど、いつも使ってる道がモンスターによって封鎖されてて迂回しないといけないんですよね。その分仕入れるのに時間もお金もかかってしまってるという状況でして・・・。私たちでも作ることはできるんですけど人手も素材も足りてなくて。」


なるほど。早いとこ解放しないと解決しないというわけか。


「ちなみに、同じような理由で不足してるモノってあるんですか?」


「今のところ表に出てる問題はMPポーションだけですね。一応同じように南のライラ街に繋がるルートもモンスターに封鎖されてるみたいで・・・。これが封鎖されると食料に影響するんですよね。ただこっちは来訪者の皆さんのおかげで大量に手に入ってるのでしばらくは問題ないと思いますよ。」


「そうだったんですね。とりあえず魔力草もってきたんで納品したいんですけどいいですか?」


「おお、こんなに取ってきてくれたんですね。ありがとうございます。これも納品依頼が来てるので、達成扱いにしておきますね。今後ともよろしくお願いします。」


そして私たちはギルドから出て、宿屋に入る。


「はぁー、なんか物資少ないと思ったらそういう理由かぁ・・・。西と南だけ会話に出て来たけど、この分だと東と北も何かありそうだし、早めに解放したほうがよさげだね。ちょっと掲示板にこの内容書いてからログアウトするね。」


「ん、了解。」


 私が先にログアウトし、少しして一葉がログアウトしてきた。その後一緒のベッドに入りやることやってから眠りについた。




★ステータス

--------------------------

■名前:カケル

■レベル:14

■種族:九尾の妖狐

■種族特性:擬装(妖狐族)

■個性:零距離戦闘陣

■職業:妖術師

■所持金:95,550z

■ステータス:

 HP :110

 MP :1470

 STR:70  [64 * (1.1)]

 VIT:11   [28 * 0.4]

 INT:147  [64 * (1.8 + 0.5)]

 MND:51  [30 * (1.2 + 0.5)]

 DEX:40  [40 * 1.0]

 AGI:70  [64 * 1.1]

 

 SP :0

■取得スキル

 妖術Lv1、封印(九尾)Lv1、鑑定Lv1、看破Lv1、言語Lv1、無手格闘術Lv1、魔力操作Lv5、魔力感知Lv5、魔力強化Lv2


■称号

 暴徒鎮圧

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