第27話 緊急クエスト発生
「いやぁ……最後の方は危なかったな。なんとか勝てたぜ!」
「本当だよ。カリンのオーバーヒールがなければ僕とガンズは死んでいたかもな。危ない橋だったよ。来る前はここまでなるとは思わなかったんだけどな」
「アハハハハハハハハハ!」
「……いや笑い事じゃないんだけど」
「本当だよお姉ちゃん。疲れた……」
みんながその場で崩れ落ちる。
俺もその場で座りこんだ。魔力はもうない感じだ。なんとなくだがわかるのだ。
そしてミクは何故か立っている。タフな奴だ。
俺はその中で大きく深呼吸をした。
……疲れた。やっと終わった。
なんとかなったけどホントギリギリだった!
ちょっとでもミスってたら死んでいたなんてことにもなったかもしれない。
危ねぇ。
でもこれでちょっとばっかしの金は入ったか。
今度はもう少しましなクエストを探してやってみるか。ここまでギリギリだと命が何個あっても足りないからな。
「……ミク、ナイスだったぞ。頑張ったな!」
結構ミクの活躍もデカかった。
俺とカリンさんだけじゃ無理だったかもしれない。
やっぱり前で戦ってくれる奴がいるだけで楽だった。
「そ。ふん」
「なんだよ嬉しくないのか、勝ったのに」
「……嬉しいわよ。でももしかしたらまだ残党がいるかもしれないでしょ。油断は禁物だわ。レインもクエストで油断すると死ぬって言ってたもの」
「お前……意外とちゃんとしてんだな。驚いたぞ」
「意外とってなによ意外とって!」
「ごめんごめん」
残党がいるかもしれないって言ったけどいたとしてもゴブリンロードはもういないから心配しなくても大丈夫なはずだ。
「じゃ、帰ろうか」
クリアさんの言葉で俺たち立ち上がり歩いていく。
どうやら俺たちが前にやったクエストとは違い、死体の回収はしなくてもいいらしい。あくまでも追い払うことが目的だそうだ。
ミクは剣を持ったまま歩いていた。
さっきと同じように考えて動いているんだろう。
だがそのミクの考えは当たらず町につくまでモンスターに出会うことはなかった。
ギルドにつき、酒場の空いている席に5人で座る。
「ふうやっとギルドについたな。これで終わりか。ギルドにつくと安心感があるな!」
「そうだね。モンスターに襲われることなんて聞いたことがないし」
ミクもそれを聞いて剣をしまい、ため息をついた。
こいつもやはり疲れていたのだろう。
よく頑張ったと褒めてやりたいが……なんか怒られそうなのでやめておく。
「じゃあ僕が換金してくるね。もう少しだけ待っててよ」
「ありがとうございます! 疲れているはずなのに……」
「いや、僕じゃないと換金できないし、しょうがないよ」
そういって受付の方にいそいそと歩いて行った。
「それで、ファクト。さっきから聞こうと思ってたんだけど中級魔法ってのがあんたの切り札だったの?」
「そうだよ。爺さんが前に見せてくれた魔法でさ。簡単に覚えられたんだけど、魔力量も激しい上に一気に爆発する感じだから使うところが少なくてとりあえずヤバいときの切り札としてとっておいたんだ。役に立って良かったよ」
「……助かったから感謝はしてるわ」
恥ずかしいそうに顔をほんのり赤く染めながら言う。
「お、おう」
「うぅ……なによ、その目。ウザいわね」
いつもと態度が違うせいか混乱してしまう。
どうしたんだこいつ急に!
「……いい感じなところ悪いんだけどさ、もうクリア来たよ」
「あはは悪いね。お金を渡そうと思って」
居心地が悪そうにクリアさんが突っ立っていた。
別にそういうんじゃないんだけどな。こいつとは。
勘違いされている気がする。
「……はいこれ。クエストの報酬の15コーン硬貨」
「ありがとうございます」
ちゃんと15コーン硬貨が入っている。
死にそうになって15コーン硬貨。なんだかよくよく考えてみると割に合わなそうな感じがするけどまあいいか。
これで色んなものが買える。もっと準備も整えれる。
「今日はご飯食べていないだろ。良かったら一緒に食べて行かないかい?」
「いいんですか!?」
「もちろん。一緒に戦った仲だしね」
ご飯のお誘い。
こんなこと一度もなかったぞ!
なんだろう。こういう感じ。嬉しすぎる!
「ぜ、ぜひお願いします!」
「うん。じゃあ食べようか」
クリアさんは座って食事を注文した。俺たちも同じように注文をした。
いつもならギルドの食べ物は高いので商店街で買って帰るのが普通なのだが、今日はお金よりも仲良くなれたことが嬉しい。
ちょっとくらいの贅沢もいいだろう。
やがてご飯が届く。
俺が頼んだのは肉だ。
肉の定食でピカピカに光っている美味しそうな飯がそこにはある。
よだれが垂れそうだ。
早速いただくとするか!
すると食べながらクリアさんが言ってくる。
「さっきはなんの話をしていたんだい?」
「……えっと、中級魔法が爺さんのおかげで使えたって話ですよ」
「爺さん?」
「あー。俺のお父さんみたいな感じです。本当のお父さんではないんですけど育ててもらったので」
「私もその人に育ててもらったわ」
「へぇ……てことはミクちゃんとファクト君って兄妹なのかな?」
「両親は違うので兄妹ではないんですけどずっと一緒に居たのでおんなじような感じですね。孤児院で育ったし」
「え、孤児院!?」
「あ、孤児院だったのか!」
カリンさんとガンズさんの目が少し輝く。
俺、なんか変なこと言ったのかな!?
「私とガンズは孤児院で育ったんだ! 君たちと違って二人は両親は一緒の双子なんだけどね。でも同じ境遇の人がこんなところにいるとは驚きだ!」
なんだ。カリンさんガンズさんも孤児院育ちだったのか。
そうならそうと早く言ってくれればいいのに!
「ちょっと色々あって孤児院が壊れちゃって……他のみんなはまだあっちで過ごしているらしいんですが……直すお金がないらしいので俺たち二人がこっちに来たんですよ」
「なんか私たちよりよっぽど大変そうだな。まだこんなに小さいのに」
「あはは。ってこのご飯美味い!」
「ホントだわ。いつもの商店街のよりおいしいわね……」
「当たり前でしょ。ここは連れ帰ったモンスターの新鮮な素材を使った調理をしているんだ。その分高いけど、そこら辺の店よりも美味しいはずさ」
「へぇ……なるほど」
こういう機会がなかったら知らなかったかもしれない。
感謝だ。
そうして雑談をしているうちにいつの間にか食べ終わっていた。
「僕たちはこれで。また縁があったらよろしくね」
「はい! おごってもらってありがとうございます!」
歩きながら後ろに手を振って去っていく。
そう、おごってもらったのだ。ミクがあまりにも食べ過ぎて食費がえげつないことに……と落ち込んでいるとお金を出してくれたのだ。
なんと男らしい! 俺も今度女の子とかと遊ぶときはそうしよう。
「……俺たちも帰るか」
「うん」
俺たちもるんるん気分で帰っていった。
これから、最悪なことが起こることも知らずに……
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次の日。
今日も俺たちはギルドに向かった。
クエストとレベルを確認するためだ。
きっといいレベルに上がっているに違いない!
気になる!
「なんで私もなのよ……」
「いいじゃん暇なんだし」
「……まあいいけど。私もレベルを確認してレインに会いたかったから」
そんなこんなでギルドについた。
帰るのが遅かったので起きるのが遅くもう昼である。
受付の方に行く。
「すみません、俺のレベルってどれくらいですか?」
そういって話しかけていると。
「お~い! 大変だ大変だ!」
「!?」
慌てふためくレインさんの声が聞こえてくる。
「レインさん、どうかしたんですか!?」
「あ、ファクト君か。いいところにいた。ヤバいよ、ヤバいことが起こっているんだよ!」
「ちょ、どうしたんですか!」
「……ちょっと外に来て! そこにいる冒険者たちもだよ~!」
レインさんに腕をつかまれて強制的に外に出された。
まだレベル見てなかったのに……ていうか痛い痛い! この人握る力が強すぎる!
流石は元ベテランの冒険者だよ!
「ほら見てよ!」
急に止まって指を差した。
どうしたんだっていうんだよ、ホント。
「痛ててて………………っては?」
腕をさすりながら前、いや――上を見た。
あっけに取られた。
「どうしたのよ…………え?」
ミクも他の冒険者も俺と同じ反応をする。
だって仕方ないだろう。驚かない方がおかしい。
そこには……
「なんだ、あのデカい生物――ゴブリンは……」
俺たちよりも数十倍大きいゴブリンがそこにはいた。
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