第26話 中級魔法
まずは落ち着いていこう。
こういうときに冷静さをかけば後々負ける可能性が高い。
前にラグナロクさんの時も冷静じゃなかったら負けていた。
いまも同じだ。
俺は深呼吸をする。
一番重要なことは情報だ。情報さえあれば対策もできるかもしれない。
このスキルはあんまり強くないけど、こういうときにこそ活躍できる!
そしてゴブリンロードを目で見た。
前にラグナロクのスキルを覗けていたしこれもいけるはずだ。
スキル:すべてのゴブリンの
効果:近くにいるゴブリン族に命令することができる
元のステータスの10倍の力を手に入れることができる
欠点:なし
……やっぱりスキルもちか。ロードとかいうし他の奴らとは違うと思ってたんだよな。
ていうかモンスターにもスキルがあったんだな。初めて知ったよ。
……う~んでもこの情報か。あんまり見ても意味ないな。
普通に考えて強すぎるだろ。
元のステータスの10倍だよ!? どんだけ強いんだ!?
しかも欠点ないし。倒せんのかよあれ!
でも……クリアさんがやるって言ってたし……う~ん。
よし、とりあえずはクリアさんに任せて、こっちの方をなんとかするか。
ゴブリンにスケルトン。決して1体だけなら別に強くもないし、俺と比べたら格下だろう。
だが、こいつらはざっと見て100体以上いや200体くらいはいる。
不安だ。勝てるのか。
こいつらを一瞬で吹き飛ばす手段はあるにはあるが……使うなら勝てると確実に思ったときに使いたい。
対策でも取られれば絶対に負ける。まだ使いたくない。
「……ミク、行けるか?」
「当たり前でしょ。舐めてるの? あんたより私の方が強いんだし。ぶん殴ってもいいのよ」
「そんなつもりはないんだけどね!? ちょっと心配してたのに損した気分だよ!?」
「おい、そんなことしてるうちにあいつら動き出したぞ、準備しやがれ!」
カリンの言葉で俺たちは身構える。
ゴブリンたちが動き出したということはゴブリンロードが指示したということになる。
全体が動き出したのだ。
「来た!」
その言葉にミクが真っ先に出ていき、切りかかっていく。
俺もファイアーボールやエレクトロでサポートをする。
「がああああああう!」
「っち!」
ミクがゴブリンから引いて戻る。
しかしやはり数が多いな。
ミクをいくらサポートしたところで足りない。
ギリギリもいいところだ。
すると同時期にクリアさんたちもこっちに戻ってきた。
ガンズさんに限っては痛そうにしている。怪我をしたらしい。領域に入ったことで回復しているようだった。
「……思っていたよりもキツイな。そっちは大丈夫なのかい?」
「いや……魔法領域の維持のせいで私の魔力が切れそうだ。体が疲れを感じている」
「え、大丈夫なんですか!?」
「……問題ない、とはいかないな。これから私は回復に優先させてもらうよ」
「分かりました。じゃあこっちでこいつらはなんとかします」
「ああ頼んだ」
カリンさんがここに来て脱落か。
厳しいな。……やっぱりあれを使うしか道はないらしい。
「危ない戦いになると思うが、ロードの方は僕が絶対になんとかする。あとは頼んだよ」
「わかりました、クリアさん。頑張ってみます」
「うん」
クリアさんとガンズさんが一気に駆け出していく。
俺もやるとするか。
「……おいミク! ゴブリンとスケルトンを一気に全部引き付けられるか?」
「引き付け!? ……わかったわ。よくわからないけど、なんとかできるんでしょうね」
「なんとかはなると思う」
「ならいいわ。やってみるから」
そういってまた走り出す。
止まって剣を振ることはなくただただ引き付けるために走っていた。
ナイスだミク! 俺も準備を整えないと。
奴らから少し離れたところまで走って行く。
距離は10mくらい。
ここでなら……できる!
「おい、ミク! 離れろ」
「わかったわ!」
そして詠唱を唱え始める。
3つ目の魔法。
「我が清廉なる紅蓮の炎。壮大なる青き炎よ。この大地を破壊し、敵を駆逐すべく、我がこの手に莫大なる力を! フレイムバースト!」
フレイムバーストを発射する。
ファイアーボールとは比にならないほどの大きさの塊を生み出し、それを超剛速球で打った。
ゴブリンたちにはそれが回避不可能。一か所に集めさせたおかげか一瞬にしてほとんどが吹き飛んだ。
「…………よし。できた」
3つ目の魔法は――中級魔法、フレイムバースト。
それは爺さんが使っていた技だ。
レインさんと修行した時にたまたま思いついてやってみたら偶然出来たのだ。
前はこんな威力ではなかったはずだが俺も成長しているんだろう。
嬉しい限りだ!
「……って、頭がくらくらする。魔力が切れたか。ヤバいな残ってるやつもいるんだけど」
「…………それは私が片付けて来るわ」
そういってミクは突っ込んでいった。
数もまあ少ないからミクの敵ではないだろう。
疲れ切ってその場に座り込んだ。
「中級魔法……子供が扱うなんてね。私が覚えたのは18歳くらいだったのにさ」
「いや……前に使っていた人を見て、それで想像しやすくて出来ました。感謝してます」
「ふん、そうか。君は凄いんだな」
カリンさんが高笑いする。
最初に見た魔法だから余計に印象深くてやりやすかった。
「……後の問題はロードの方だな。見てみろ」
指を差していた方を眺める。
そこではゴブリンロードとクリアさんとガンズさんが戦っていた。
「クリアの攻撃は効いているっぽいけどどうにも守り切れてないみたいだ。このままだとガンズが倒れて連鎖的にクリアが倒れて負けるな」
「そ、そんな!」
「大丈夫だ、私がなんとかするよ。こうも後輩たちがカッコよく敵を倒しているのに私だけ仲間外れとか恥ずかしいしな。それにもう敵は残り少ない。魔法領域など今更必要ないだろう」
そういうと魔法領域が完全に解除された。
そしてカリンさんがクリアさんたちの方に向かって歩き出した。
「この辺ならいけるかな」
なにかを確かめるかのような足つきで、一旦止まる。
「じゃ、行くか」
そういい杖を高々と上げ詠唱を唱え始めた。
なんだろう。攻撃とかかな。あの人の攻撃なら結構効くと思うけど倒せるとまではいかない気がするんだけど……
「世界に宿りし神聖なる生命。大地を治める神々の力よ。我が仲間を救うために力をくだされ! オーバーヒール!」
杖から緑色の透き通ったものが出て、クリアさんとガンズさんに当たった。
回復だった。
みるみる傷は回復し、最初の元の状態に戻った。
それによって動きが活発になり、ロードを圧倒している。
このままなら勝てるだろう。
「……上級魔法。オーバーヒールだ。8割くらい一気に回復する優れものさ。私が得意な魔法は回復でね。あと何発かはこのヒールが使えるよ。まあ使わずともこれならなんとかなるだろうな」
「凄いですね。治癒魔法は使ったことないですから」
「当然!」
カリンさんが決めポーズを決めた。
なんだろうカッコいい。
「おっとミクちゃんの方も終わったらしいな」
「ホントだ」
俺たちがしているうちに片付けたのか。
あいつもあいつで成長しているっぽいな。
「うああああああああああああ!」
最後の一撃をクリアさんがいれる。
ゴブリンロードはその一撃で完全に倒した。
「よっしゃあああああああああ!」
右手で両手剣を上に掲げる。
俺たちは勝ったのだ。
ゴブリンとスケルトン。それにゴブリンロードに勝ったのだ。
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