第25話 敵が強すぎる!?

「やあああああ!」


 ミクが誰よりも真っ先に切りかかった。

 奇襲だったこともあってかミクの攻撃でゴブリンはそのまま倒れる。

 その音で他のゴブリンたちは俺たちの存在に気が付いたようだ。


 勇気あるよなぁ……逆にやられるかもしれないのにさ。

 一旦様子見てからやろうと思ったのに、ミクのせいで今すぐやんなくちゃいけなくなったけど。

 

「……いまのうちだ! 体制を整えられると勝ち筋が無くなる! 徹底的に攻撃してくれ!」


「はい!」


「おうよ!」


 クリアさんの言葉に俺とカリンさんが返事をする。

 そうだ、ここで打たないと後で面倒なことになる。魔法領域があるからといって油断も行けないからな!


 そう思い詠唱を唱え始める。使うのはもちろん。


「――エレクトロ!」


 電撃がゴブリンたちに襲い掛かる。

 そこをミクが打つ。


「よし!」


 連携はばっちり。洞窟でやった時と環境は違うがちゃんとできていた。

 これでも何年も一緒に暮らしていたのだ。できないわけがない。そこには自信がある。


「ナイスだ二人とも!」


「当然だわ!」


 どんどんと進み、ゴブリンを倒していく。

 俺もやるぞ!


 俺も詠唱を唱え、エレクトロをどんどんとかけていく。


「すげぇ……初心の冒険者のはずなのに、こんなにできるなんてな! 私も頑張りますか!」


 詠唱を唱え、魔法を出す。

 俺とは違い、風属性の魔法で周囲のゴブリンどもを吹き飛ばした。

 俺よりも間違いなく強い魔法だ。俺のは電撃で止めるだけだが、この人は敵を潰せる。


「ふう……私はあんまり魔力がないから攻撃はしたくないんだよな。回復担当だし。あとはお前たちに任せるぞ。クリア!」


「はいよ」


「ぼ、僕も!」


「合わせるよ。行くよガンズ」


「うん」

 

 そう言って、ガンズとクリアが出ていく。クリアさんはミクと同じ剣士だ。

 だが、ミクとは違い足が速い剣士ではない。むしろ遅いくらいだ。俺よりも遅い気がする。

 

 二人はゴブリンたちの中心部に向かって走って行った。

 そして剣を出す。両手剣。

 大きかった。


 こういう時こそ、目で見る。

 俺はスキルを発動した。


 種類;両手剣

 素材:マカラクリナイト鉱石

 効果:あらゆるものを強さで薙ぎ払う

 作者:不明


 くそ! 曖昧過ぎるだろこの能力! もっと欲しい情報とかあるのに!

 その数秒後、俺の欲しい情報は手に入った。


 クレアさんの最大の特徴は強さだった。

 両手剣を装備し、薙ぎ払った。速さなんていらない。強さだけで十分だといっているようだった。

 凄い。一瞬で近くにいた数十体のゴブリンが無残にも消え去った。


 これが位の上の者の強さ。

 俺たちじゃまだ無理だな。そう思った。


 しかし弱点はやはり重さ。その剣を振り払った瞬間、何秒か隙が出来る。

 ゴブリンたちもそれを知っていたのだろう。クレアさんを狙った。


「ふあああああああああ!」


 それをガンズが防いだ。

 こっちも連携は取れていた。


 しかも大勢のゴブリンが来ても一歩も引かない。

 さっきのような弱弱しい声と行動とは裏腹に硬度と根性はバケモノだった。


 その規格外の出来事にゴブリン側は完全に体制を崩す。

 よし! これならいける。力を合わせて行けば、そんなに難しくないクエストだな。

 ていうかなんでこいつらは仲間なんか探してたんだ?

 こんだけ強いなら余裕で倒せると思うんだけどな。……まあいいか。早く倒そう。

 

 詰めようとすると。


「ダメだ! ファクト君後ろだ!」


「え?」


 後ろを向く。

 今度はゴブリンではなく、スケルトンがいた。

 ゴブリンのような皮があるやつじゃない。骨だ。

 骨しかない。

 し、しまった。周りを見ていなかった。


 そういえばこのクエストはゴブリンだけじゃなくてスケルトンとかもいるって最初にクリアさんが言っていた。

 だから警戒しておくべきだったのだ。

 他の軍団が襲ってくるかもしれないと。


 どうして俺は考えず、行動しなかったんだろう。

 それもきっと油断だ。この仲間なら大丈夫だろうという油断だ。

 それがこの結果を生んだのだ。


 やつらはナイフをもち、俺に振りかぶってきた。

 そんなことをいま後悔しても遅い。ナイフを取り出す時間もないし、詠唱も唱えられない。


 死ぬ。そう思ったとき、キーン! と金属がぶつかる音がした。

 目を怖くてつぶっていたが、ゆっくりと目を開けると、目の前にはミクがいた。

 剣でスケルトンのナイフを抑えている。


「……ミク!? もしかして俺を……守ってくれたのか!?」


「危ないところだったわね。別にあんたのためにやったわけじゃないわ。あんたが死んだらお父さんが悲しむでしょ。だから殺させはしないわ」


「お前……いい奴だな!」


「うるさいわね! 早く魔法を使いなさいよ。この大群相手じゃきついわ!」


「ああ、わかってるよ。――エレクトロ!」


 電撃を使う。

 しかし、スケルトンは止まらず、動き出す。


「う、嘘だろ!? エレクトロが聞かないのか!?」


「っく、無理だわ!」


 ミクも無理といいながら一旦引いた。

 クリアさんがいるところまで戻る。


 こっちもこっちでゴブリンの相手をしているようでキツそうだった。

 さらにスケルトン……考えるだけで面倒だ。


 クリアさんが俺たちが戻ってくると話してくれた。


「……最初に言ってたけど、これがこのクエストの難しいところなんだ。ゴブリンにスケルトン。そして……」


 クレアさんが横を向いた。俺もそっちの方を向くと。


「……なにあれ」


「あれはゴブリンロード。ゴブリンの長でゴブリンの中だったら間違いなく最強。なんたって魔法も使えるし剣も使える。おまけに背丈も高いから力も根性もあって、なかなか倒れないんだ」


 みたらわかる。こいつは強い。

 他の奴らとは覇気が違うのだ。簡単にいえばラグナロクのような覇気と似ている。

 ラグナロクほどではないが、わかる。


「それでどうすればいいのよ。私たちはそのためにいるんでしょ」


「ああそうだよ。ゴブリンにスケルトン。さらにゴブリンロードは俺たち3人じゃ、難しいから仲間を欲しかったんだ」


 なるほど。さっきまでわからなかったけど、こういうことか。

 たしかにこの量を相手にするのならいくら強くても厳しい。


 さらにいえば両手剣だ。隙ができやすい。

 防御のガンズがいるとしても360度方位なんかされてしまえば、勝つのは間違いなく無理だろう。


 そのための俺たちというわけか。


「君たち2人はゴブリンやスケルトンの相手をして欲しい。僕はゴブリンロードの方をやる。ゴブリンやスケルトンとはいっても数は多い。あんまり舐めてかかると痛い目に合うからね」


 俺は無言でうんうんとうなずいた。


 痛い目はついさっき思い知らされた。ミクのおかげでなんとかなかったけどあれがなかったらいまごろ重体だっただろう。治癒魔法で治してもらえるかもしれないが、体制も崩れてばらばらになっていたはずだ。


「私もミクちゃんの方につくわね。クリア、任せたよ!」


「わかってるよ」


 そういってカリンさんは杖を、クリアさんは両手剣を構える。

 第二ラウンドの開始というわけらしい。


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