第24話 ランクの高いクエスト

「え? 俺たちとミクちゃんたちと一緒に!?」


 驚きつつも返答してきた。

 

「そうです。いま、俺たちはちょっとお金に困ってて……それで俺たち二人ともどちらかというと攻撃型なので役に立つと思うんです。だからどうかなって思いまして」


「でも……ミクちゃんはいいのかい?」


「ん? なにがよ?」


 クリアさんの連れ2人と遊んでいたようで聞いていなかったらしい。

 主に女の方と遊んでいるようだった。楽しそうだ。

 

「クリアさんたちと一緒にクエストに行かないかなって思って。ミクはどう思う?」


「別にいいんじゃない。とりあえず敵がぶっ飛ばせるならなんでもいいわ!」


 自分の剣を上にあげる。

 危ないですから降ろしてくださいと受付の人に怒られた。

 みんなが注目してたので少し恥ずかしい。なんでそういうことしちゃうかね!


「あはは……いつも通りのミクちゃんだね。でも大丈夫かな……僕たちが確実に守れるとも限らないし……」


「いいじゃん。私はミクちゃんと一緒にやってみるの面白そうだし。ガンズもそう思うよな!」


「う、うん。僕も姉ちゃんと同じ意見だよ」


 どうやらお姉ちゃんの方が男勝りで権力があるらしい。

 それとは対照的にガンズの方は弱弱しく、女っぽい。名前は男の中の漢って感じなのに。


「ならいいじゃないか。クリアも納得しろよ」


「……う~ん、そもそもクエストに位が見合わない人を連れて行ってもいいのかわからないしな」


 ギロっとカリンがクリアを睨む。

 こ、こえぇ……この人には喧嘩とか売らないでおこう。


「わ、わかったよ。カリンがそこまでいうなら仕方ないな。……ファクト君の提案を受け入れるよ。ただし! 君たちがどれくらい強いのかだけは知りたいから教えて欲しいんだ。クエストで死ぬかもしれないからね。それを見てからじゃないと安心して連れて行けない」


「……わかりました」


 外に出る。

 俺はいつもの練習場へと足を運んだ。

 いつもといっても知ってから日が浅いからなんとも言えないんだけど。


「たしかにここなら人がいなくて見やすいな。君が見つけたのかい? 僕は知らなかったんだけど」


「いや、レインさんが」


「ああ、レインさんか! あの人なら知っててもおかしくない」


 そう語るクリアさんはちょっと嬉しそうだ。

 レインさんのことをしたっているのだろう。


「じゃ、まずミクちゃんから。君の剣技は前に見たことがあるけど、一応ね」


「わかったわ」


 ミクは剣を構える。 

 そして次の瞬間、近くにあった木のかけらを真っ二つに切った。


 おお……凄い。綺麗なもんだ。ちょうど半分くらいに切れてやがる。

 俺じゃ、無理だね。悲しいことに。


「うんうん。じゃ、今度はファクト君! 頼むよ!」


 俺は手に力をいれる。


「ファクト君は剣士ではないのかな?」


「ああ、俺は魔法の方が得意なので。剣技は完全にミクの方が上手いですし、競うよりカバーし合った方がいいと思いまして」


「……子供なのにそんなことまで考えているなんて……君は凄いな」


 褒められた。

 別に今の言葉は本心ではないんだけどね。適当に出て来た言葉だし。

 剣技も今度鍛えようと思ってたし。


「では行きます」


 俺は詠唱を唱える。

 まずはファイアーボールだ。右手に出し、それを遠くへ飛ばした。


 そしてもう一つの詠唱を唱える。

 

「――エレクトロ!」


 近くで電気が発生し、びりびりと痛々しい音がする。


「うん、これくらいの実力なら攻略できると思う。一緒に行こう! ……あ、でも、他の人とかには言わないでね。多分、位が違う人とクエストするのはダメだと思うから……」


「……あ、はい。すいません。無理いって」


 それでさっきから迷ってたのか。申し訳ない。

 でも仕方ない。生活するためなのだ。ここで手を引く気などさらさらない。


「いいよいいよ。楽しく行こう。今日はよろしく!」


 手を差し出してくる。

 俺はそれを優しく握った。


「じゃ、僕はクエストを受理してもらうから。……確認だけど、もう準備は出来てるかな?」


「はい、万全です」


「なら、そのまま外で待っててくれ。すぐにいくから。カリンたちもだぞ」


「は~い。待ってるから、早くしてね。遅かったら先に出発しちゃうから」


「はいはい」


 クリアはカリンの言葉を適当にあしらいつつ、ギルドに向かっていった。

 その後、クリアは言っていた通りすぐに来て、そのまま出発した。


「今回のクエストの場所は村の廃墟だよ。どうやら人がいないってことがわかって魔物たちが住むようになったらしい。それが広がると困るから止めてくれって依頼だね」


「へぇ……珍しいな。村の廃墟に住むとか。あんまり聞いたことがない」


「そうだよね。気を引き締めて行こう。ミクちゃんたちもいまの説明でわからなかった点はない?」


「問題ないわ!」


「大丈夫です」


「よし行こう!」


 地図を見ながら移動していった。

 その廃墟は町からずいぶん離れたところにあるらしく、休憩をとりつつ進んでいく。

 ちなみに俺たちは金がなさすぎて水や食料をクリアさんからもらったりした。


 すみませんと謝ったら今度なにか手伝ってよと軽く言われた。

 いい人だ。ミクと是非仲良くなってほしい。そしてその性格を直して欲しい。まあ、無理だと思うけど。


「そろそろ着くから警戒しておくこと。なにか会ったときじゃ遅いからね。カリン、魔法領域出しといて」


「アイアイサー!」


 杖を上に掲げて、カリンが詠唱しだす。


「世界に宿りし神聖なる生命様よ。この者たちに生をお与えください。ヒーリングエリア!」


 すると体がふっくらとした安心感を覚える。

 なんだろう。これを適切に表現するなら母親の手の中といった感じだろう。


 とにかく、疲れが和らぐ。最近、色々ありすぎて疲れていたからとても助かる。

 よくわからないが、ありがとう! カリンさん! 


「これは魔法領域といって一定範囲内にいるならその効果を受けられるんだ。種類は様々だけど、今回のは回復。つまり攻撃を受けても大体の場合は回復するんだ。だから安心してね」


「なるほど……だから疲れが和らいでいたんですね……」


 勉強になるなぁ……

 将来、俺もこんなのを使えるようになるんだろうか……


「あ、見つけたよ。あそこにゴブリンの軍団が見えるよ」


「でかした、ガンズ! よし、いまから攻め込むぞ。準備はいいな?」


 俺たちはうんとうなずいた。


「では、攻撃開始!」


 こうして戦いのゴングは鳴った。


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