パンケーキ王国より

ひとり遊び

第1話

 ドンドン!


 わたしは、うるさい音で目を覚ました。カーテンから漏れる光は僅かで、まだ薄暗い。わたしはカラスと一緒に空を飛ぶ、素晴らしい夢を見ていたのに、途中で起こされてしまった。朝から嫌な気分だ。

 どうやら、玄関のドアが激しく叩かれているらしい。

 本当にうるさい。


 「おい! 開けろ! 税金を取りに来たぞ。さっさとドアを開けろ!」


「うるさいなぁ。ちょっと待ってて」


悪態をつくが、ドアをを叩く音にかき消されてしまう。

 仕方なく、わたしはパジャマのまま玄関を出た。


 「どちらさま。朝から非常識だと思わないの?」


 ドアの前で待っていたのは、パンチパーマの男だった。50代くらいのオッサンだ。まだ朝6時なのに、本当に迷惑なヤツだ。

 

「やっと扉を開けたな。全く。俺は国の役人だ。税金を取りに来た」


 「税金? わたしはちゃんと払っているよ」


男は首を振った。やれやれ、と呆れ顔だ。


 「最近、新しい法律ができて、魔法使いは追加で税を課されることになったんだ。新聞はちゃんと読め」


え、そうなのか。わたしは確かに新聞なんて読まない。普段は、洞窟やら森やらに遊びに行っているので、あんまり世間の情報は知らない。

 

 「そうなんだ。ごめんなさい。知らなかったよ。なら、今払うので、何チャクか教えてください」


男は、ペラッと紙を手渡してきた。わたしは受けとると、その紙を見た。


 『魔法使い税

 魔法使いは毎月3000チャクを納めること!


       パンケーキ共和国の国王より』


なんだ、これ。


 「これは確認書みたいなものだ。金を払ったら、裏にお前のサインを書いてくれ。適当でいいぞ。魔法使いのサインなら、誰のかなんて簡単に判別できる」


「あの、毎月3000チャクって冗談ですよね? 毎月、車を買えるくらいの税金ってどういうことなんですか?」


 震えながら聞く。男は耳くそをほじっている。


 「ん? いや、そんなこと俺に聞かれても知らねぇな。国王さんが言ってるんだから、大人しく払っとけよ」


 「いや、そんなこと言われても………」


こんな大金無理だ。しかも毎月とか、国王は頭のネジをどこかに無くしたらしい。

 しかし、本当に困ったなぁ。どうやっても払えない。無理。


 「そんな顔を青くするな、お嬢さん。ほら、これ」


男はもう一枚、別の紙を手渡してきた。わたしは凝視する。

 

『3000チャクを納めるのが厳しい魔法使いへ


3000チャクの納税が困難な魔法使いは

自作のレモンタルトを国王の元へ持って行け!


味が国王に認められたら、その者は免税される


パンケーキ共和国の国王より』


いや、なんだこれ。


 わたしはもう頭が追いつかない。国王は頭がイカれているとしか思えない。


 「一体これはなんなんですか?」


男も首を傾げている。


 「俺もよく分からない。とにかく、税金が嫌なら、国王にレモンタルトを届けるしかねぇ」


本当に意味不明すぎて笑える。


 「どうする? レモンタルト作りをするんなら、今月の税金は今払わなくてもいいぞ。来月まで待ってやる」



「選択肢なんてない。今からレモンタルトを作って、絶対に免税にしてみせるわ!」


全く持って意味不明だが、やるしかなさそうだった。




















 

 

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