第47話 再開2

「グーテン・アーベント」


玄関まで出ようとした僕を押し留め、対応したアレクシア。


引き戸の影になって相手は見えないけど、気配からすると相手は女子らし


「見学か、入門希望?」


「道場破りではなさそうですかラ、おそらくハ」


「だから僕が出ようって言ったのに……」


「師範が直接対応するのハおかしいでス。会社で面会や面接の際にいきなり社長がでてきたら変でしょウ?」


アレクシアの後ろから来訪客を見た瞬間、僕は思わず息を呑む。


中学時代より、ほんの少しだけ伸びた背。


あの頃ベリーショートだった髪は、肩までかかる長さに。


手も足も、すらりと伸びてスレンダーな感じが強くなって。


 僕が中学時代に助けた女子、美鈴さんが目の前に立っていた。


「やっく、ん」


立ち話もなんなので、美鈴さんを家に通した。


葵さんが掃除してくれるお陰でチリ一つない廊下を通し、客間に案内するとすでに中島さんがお茶を入れてくれている。


ちゃんと茶托に乗せているのが彼女らしい。


「粗茶ですが」


僕、美鈴さん、中島さん、アレクシア、葵さん。


五人でお茶をふうふう言いながらすすると、気持ちが落ち着いてきた。


「あなたは、柳生さんとはどういう関係ですか?」


葵さんがポニーテールを揺らしながら、会話の先を取る。


「どういう、って言っても。それは……」


世間ではアイドルかつ英雄扱いされている葵さんから鋭い口調で質問を受けて、美鈴さんの顔に脅えが浮かぶ。


「葵さん、彼女怖がってるよ」


「そ、そうですね」


 中島さんの指摘で葵さんが素直に頭を下げる。


 その光景に美鈴さんは目をぱちくりとさせていた。


「とりあえず。私、美鈴はなっていいます。やっくんとは中学時代部活が一緒だったんです」


「一緒の部活、ですカ。それにしては腑に落ちない点がいくつもありますネ」


 道着のままのアレクシアが腕を組んだまま呟く。腕の上に支えられた胸が、その存在を主張した。


「うわ、すごい。モデルさんか」


 美鈴さんがつぶやく。素の口調は昔と全然変わってなくて、少し安心する。


「ところで、あなた方は、やっくんとはどういうご関係ですか?」

 

「あなたこそ、柳生くんのことをやっくんって……」


 中島さんが言い終わる前に、アレクシアがよく通る声で返答した。


「セフレでス」


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