第57話 他者排除型の才能を開花させたい ステップ7 才能開花への道はすぐそこに
僕は彼を追いかけた。
彼は母親と共に廊下を歩いていた。
ふぅ、いた。って、走ってきたはいいものの、どうする?家族でいるところに割り込むのは気がひけるし、そもそも友達っていえるほどの仲でもない。
そんな相手に家族の前で話しかけられるのって気まずいっていうどう答えたらいいかわからなくなっちゃう感じあるよね。
うん、どうしたものか。
そんなことを考えながら、僕は少し間を空けて、二人の後をつけていた。
静かに二人の後をつけていると、なんだか冷静になってくる。
よく考えれば、彼が変な顔、っていうか気になる顔をしていたのは僕の気のせいだったかもしれない。
なんていうか、親があんだけ叫んでたら気まずくなるのはわかるし、別にこれで和田が傷ついたっていうのは僕の妄想かもしれない。
冷静になると、少し恥ずかしくなってくる。というか、後つけてるの気づかれたら恥ずかしくない?そんなに仲良くもないのに。
とりあえず、三者面談行こ。うん、そうだよ。たしかに、和田のお母さんは変わってるけどこれがヤンデレに関わるなんて思えないし。
うんうん。僕は自分を納得させながら、クラスに戻ろうとした。すると、
「だからあなたはダメなんでしょう!?」
甲高いヒステリックな声が廊下に響き渡った。
え?何?また?
僕は、驚きつつもデジャブな場面に思わず突っ込まずにはいられなかった。
振り返ると、やはり和田の母親が叫んでいるようだ。
さっきとおんなじ状況。今度はクラスの中で無く、廊下という変化はあるもののヒステリックな状態に変わりない。
どうしたらいいかわからない、というかどう考えたってこんなにヒステリックに怒るなんておかしい。
和田は成績優秀だし、性格は置いといても三者面談で怒られるようなことはないはずだ。
それなのに、こんなに怒られているなんてどう考えてもこのおばさんがおかしい。
しかし、今回はそんなことを言ってる場合ではないことは、和田の顔を見ればわかる。
さっきよりもより青ざめた顔は、恐れや悲しみとともにどこか諦めたような顔にも見える。
母親は続ける。
「あなたはお兄ちゃんたちとは違うんだから」
「だからこんな高校嫌だったのよ。お兄ちゃんたちの高校に落ちちゃって。だからダメなのよね、あなたって」
「お母さんはあなたのことを心配しているのよ?」
ただただ響き渡るのは母親の声。和田はただ俯きながら、耐えているように見える。
なんだよ、なんで言い返さないんだよ。いつもみたいに言えばいいじゃん。
うざいとか、黙ってって。
なんで?我慢するなよ。どう考えたっておかしいのはそのおばさんなんだから!
我慢するなんて君らしくない。いつものような生意気で小憎たらしい姿を見せなよ。
あぁ、もう。なんでそんな顔をするんだ。
「あの!どうもはじめまして。秀馬くんのクラスメイトの高城です。いつもお世話になってます」
僕は気がついたら和田の母親の前に出て、お辞儀をしていた。柄にもない。
僕はこういうことが本来苦手なんだ。しかも、人様の家の状況に口出しをするなんて馬鹿すぎる。
でも、でも。
和田の顔をチラッと見る。
彼は驚いた顔をしている。あたりまえだ。
僕だってこんなふうにクラスメイトが飛び出してきたらびっくりする。
っていうか、ひく。
でも、さっきまでの顔と比べればだいぶマシ。僕が恥ずかしいくらいで君の顔がマシになるなら、恥のかきがいがあるってもんよ。
あと、僕の見つけた輝く才能をあんたなんかに潰されるのは我慢ならない。
そう、それだけなんだ。
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