第55話 他者排除型の才能を開花させたい ステップ5 再チャレンジからの新たな反応

僕は次の日、彼の近くにいる友人にもう一度挨拶をすることにした。昨日のように、あくまでも自然な感じで。

しかしそれだけではなく、その流れで彼にも挨拶の再チャレンジを行うことにした。

勉強中にも気になっている今なら、きっと勉強中だろうがなんだろうが、僕に対して返答してくれるに違いない。

これでも返してくれなかったら、今度はまた勉強中立ち上がっての挨拶チャレンジを再開すればいい。そうだよ、彼は待っているんだ。僕からの挨拶を。別に僕の勘違いだって、自意識過剰だっていいんだ。

わずかでも反応があったんだから、その反応を無視して他の子に行くのは違うだろう。

頑張れ、自分!


「おはようー!」


僕はまず友人に挨拶をする。

さて、彼はどんな感じだ?

彼の様子をチラッと見ると、彼は今日はなんの反応もしていないように見える。昨日のように肩を動かす様子は見られない。だけど、僕は見逃さなかった。ほら、彼の鉛筆が止まっている。

そりゃ、問題が難しすぎて止まっている可能性はある。だけど、このタイミングで止まるってやっぱり可能性あるんじゃないの?って思っちゃうよね。やっぱり自分勝手に捉えちゃうものだし、人間って。大丈夫、大丈夫。僕の声に反応したんだ、って言い聞かせつつ、僕は行動に移す。


「和田もおはよう」


と言った、言ったぞ!さぁ、どう反応する?

そう、あくまでついで感をだすのが今回のポイントなったんだよ。これまで日が空いたのに突然挨拶もおかしいし、何よりこれなら僕の心も次いでにいっただけだしってなんとなく耐えられる。

姑息でごめんよ。でも、僕だって一か八かの賭けでもあるんだ、許してよ。


すると、彼は勉強の手をピタッと止めると、僕の方に顔を向けた。

あれ?なんだか前よりも目線が優しいっていうか、睨んでいる様子はない。

むしろ、驚いているようなどこか戸惑ったような表情を見せている。

そして、彼はこう言った。


「あぁ」


って。彼はそう言うと、すぐに顔を下ろし勉強に戻ってしまった。


え?何?あぁって言った?なにそれ、今までと全然違う反応じゃん!これ絶対僕の挨拶待ってたでしょ。それでいきなり言われてどう返したらわからなかったやつでしょ。

そうじゃなかったら、勉強を邪魔するなってまた言ってきたに違いないもん。

なに、「あぁ」って。めっちゃ愛おしいじゃん。

もう、絶対そう。やっぱり諦めなくてよかった。

彼にはやっぱり才能があったんだ。その蕾がただ今までの子達よりも固かっただけ。

よし、僕のこれからの道は定まった。まず、これからも挨拶を続けていくこと。これはもう止める必要はない。彼は待ってるんだから、待たせすぎはよくないからね。

そして、ヤンデレのスパイスを少しずつ足していきたい。ただ挨拶してるだけじゃただの友達作りになっちゃうからね。まあそれもいいけど、あくまで僕は彼の才能を開花させたいわけだからね。目的を履き違えちゃあいけない。

あと、この才能を固い蕾としてしまった要因も気になる。この要因を探ることが彼の才能開花へのただ一つの道てもありそうだ。

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