第54話 他者排除型の才能を開花させたい ステップ5 効果があったなら諦めないよ
僕は彼が僕が挨拶したと同時に顔を上げたことで、一つ希望が見えたと感じた。
だって、あんなにいいタイミングで顔を上げることなんてないでしょう?
本当に挨拶と同時ぐらいだったから。
しかも、彼は勉強に命かけてるぐらい熱心。
彼が勉強を中断してまでみたかったものがあの瞬間に教室にあったとは考えられない。
ならば、答えは一つ。僕の挨拶を自分に言われたと思って反応してしまったんではないのか。
いや、それに違いなくない?だってあんなに反応よく顔上げる?僕も彼に挨拶したっけ?って思うほどの反応だったよ。
でも、ここでぬか喜びしてしまうと僕の心が跡形もなく砕け散ってしまう可能性がある。
だけど、今回の反応から可能性はある、と思いたい。僕の贔屓目だったとしてももういい。
僕は彼の反応から一筋の光ともう一度立ち向かう勇気が湧いた。
明日、もう一度友人に挨拶をしつつ彼の様子を伺うことにする。
そうすれば、彼の反応と可能性が見える。もし、これでダメだったら本格的に諦めよう。
これ以上の深入りは無用だ。
次の日、僕は出来るだけ彼に近い友人に大きめの声で挨拶をすることにした。
いいか、挨拶の瞬間彼の反応を見るんだぞ、これが最後のチャンスかもしれないからね。
「おはようー!!」
僕は友人に挨拶をした。
そして、挨拶をしながら横目で彼の反応を伺った。
するとどうでしょう。彼が少しピクっと肩を動かしたのです。
あ!僕は見たよ、見た。明らかに彼は肩を僕の挨拶に合わせて動かした。
これは可能性高まってきたでしょ。
偶然じゃなかったんだ、2回の偶然は必然でしょ。
これは、絶対に意識してる。
知らず知らずのうちに、僕は彼に対して押してダメなら引いてみろ状態を作り出していたらしい。
きっと、彼の頭の中には僕が挨拶を急にしなくなってしまったことで、なぜなのか、もうしてくれないのかって思いが少なからずあると思うんだよね。
僕が挨拶をしなくなったタイミングと、彼の引いてみろ感覚がうまい具合に絡み合って、きっと今いい感じになっているんだ。
彼にとってそれが微かな違和感になっているに違いない。
この違和感を使わない手はない。
これはいつまでも続くものではないし、今がいい機会になっているに違いない。
彼の才能は固い固い蕾のように、水をやっても咲く気配がない。
でも、そんな蕾だって何か環境の変化があれば隙間から開花するきっかけを掴むことができるはずなんだ。
そのきっかけが今回の違和感。これは逃してはいけない。これを逃してはきっと永遠に開花させることはできないだろう。
いつまでも蕾でいたい植物なんてない。蕾は花になるための前身なんだから。
まぁ、引いてみろ作戦で彼に違和感が生まれるなら、もう少し僕が挨拶してた時にいい感じの反応してくれてもいいのにね。
ちょっと甘い反応になるとか、挨拶軽く返してくれるとかね。
まぁ、そこが彼の利点でもあるのかもしれない。ガードが固いっていうか、簡単には反応しない、みたいな?
その不器用さが彼の才能を物語っているとも言える。逆にここまで固くなければ、才能があると僕は気づかなかったかもしれないしね。
でもそのガード、僕が剥がして本当の君を曝け出してあげる。待っててね。
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