第53話 他者排除型の才能を開花させたい ステップ4 才能開花失敗、、?
僕は、それから毎日彼に挨拶をしていった。
勉強中は避け、トイレに行くタイミングやホームルームが始まる瞬間、時には昼食時や移動教室のために席を立った瞬間などに狙いを定めて行うようにして行った。
あくまで、トイレ時間を待ち伏せていると思われないように挨拶するタイミングはずらしながら。
流石に毎日していったら彼からもなんらかのポジティブな返答があるんじゃないかな、なんていう想像をしていた。
しかし、僕の思いとは裏腹に、挨拶をすると彼から言われる言葉は、
「うるさい、僕の邪魔をするな」
「またお前か、僕に話しかけるな」
「毎日、毎日うるさいんだよ」
はっきり言って、僕の心は限界を迎え始めていた。
無視されないことに初めは喜んでいたが、こう毎日トゲトゲを浴びるとは思わなかった。
毎日すればこれまでの子達のようになんらかのプラスの反応が返ってくると勝手に想像していた僕も悪いが、ここまでとは想像もしていなかった。
冷静になって考えてみると、彼にヤンデレの才能あるっていうのは僕が勝手に言ってること。彼に才能があるかどうかは定かではないのだ。
だから、彼は才能を開花する可能性もあるし、挨拶を毎日繰り返してもこのままかもしれない。というか、はっきり言ってこの様子だと後半の可能性の方が高い。
僕ははじめての壁にぶち当たってしまった。
これまでも才能の開花の壁にぶつかったことはあった。しかし、その悩みも何度か彼女たちにトライすることで解決され、徐々に見える才能の開花に僕は励まされながら、才能開花に尽力することができたのだ。
だが、今回のようなケースははじめて。ここまで拒否されたことはなく、才能の片鱗は見えるものの開花するきっかけは一切見られない。
だから、どうすればいいのかだけでなく、そもそも僕の心が耐えられるのかどうかがわからない。
みんな忘れてるかもしれないけど、僕だって人間だし、傷つきたいわけじゃない。できれば穏便に生きていきたいし、ヤンデレのために生きていきたいとは言っても不用意に傷つけられたいわけじゃない。
だから、僕は彼の才能開花に尻込みし始めていた。きっと彼以外にも才能のある人はいるし、彼に執着していて他の才能を見落としてももったいない。
そうだよな、彼にばかり目を向けていてもしょうがないのかもしれない。
一度、彼からも離れてみてもいいのかも。この失敗を糧にまた新たなヤンデレ才能を見つけることができるかもしれないし。
僕は、彼から少し離れてみることに決めた。もう少し俯瞰的に周りを観察してみて、彼以外の才能も探してみながらもう少しのんびりヤンデレを生み出していこう。
そして僕は次の日から、彼に挨拶をするという最近の習慣をとりあえずやめた。
僕の心も安寧じゃないとヤンデレ才能を発見できないかもしれないからね。
次の日からの僕は少し心が晴れたようなしかしどこか心残りがあるような気持ちだった。
挨拶をやめてから三日後の朝、僕はいつものように登校してきた。
今日も才能探ししなきゃな、なんて思いながら。そして、友人達に挨拶をした。
「おはようー!」
すると、彼がハッと顔を上げた。
あれ?どうしたの?
今こっちみたよね?あれ?どういうこと?
いつも彼は勉強に集中しているから周りの声に気を取られるということもない。
だから、勉強中に顔を上げるなんて珍しい。
もしかして、僕の挨拶に反応した?
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