第52話 他者排除型の才能を開花させたい ステップ3 挨拶をもう一回してみるけど、、

僕は次の日、学校に着くと彼を探した。今日も勉強しているだろうという想像のもと彼の机の方をみると、案の定今日も朝早く来て勉強をしているのか、教科書とノートを広げ机に向かっている。

さすがすぎて僕は自分が情けなくなる。そりゃ、こんな人朝から勉強してたら周りがバカらしくも見えるか、っていやそんな気持ちじゃダメだ。僕は首をフリ気分を入れ替えるとふぅ、挨拶をするか、と気持ちを固めた。


僕だってバカじゃない。昨日とおんなじように挨拶をしようと思っているわけじゃない。

昨日と同じように挨拶をしたって、彼からトゲトゲ言葉を浴びせられることは目に見えている。

僕は傷つきたいわけじゃないから、さすがに今日もおんなじセリフを浴びるのはきつい。

だから、僕は一晩中考えた。何か策はないかと、彼からトゲトゲを浴びない方法はないかと。

そして僕が思いついた方法はただ一つ。


勉強中に話かけないこと!


そうすれば昨日と同じトゲトゲ言葉はかけられないはず。うん、それしか無理だった。だって、彼が僕と仲良くしてくれるビジョンが浮かばないんだよ。

だって挨拶されて勉強を邪魔されたなんて自分は思ったことないし、ってか挨拶されると僕は嬉しいし。


とりあえず、僕は彼が勉強を中断する時、彼がトイレに立つのを待った。

彼が勉強を中止するのは、トイレのために席から離れる時のみ。

え?他にもあるだろうって?

残念。彼は休み時間も勉強し続けているし、移動教室の時だって歩きながら教科書を読んでるのだ。だから、トイレに行くために立つ時を狙って挨拶するしかない。

考えると凄すぎるな、息抜きとかできてるのかな。

まぁ、とりあえず勉強中じゃなければ、きっと昨日とは違った反応が見られるし、もしかしたら返してもらえるかもしれない、なんて幻想を抱いてる。


学校について十分後。

彼はガタッと席から立ち上がった。お!これはトイレに行くのでは?

僕は彼を追いかけるように席を立った。

なんかトイレ追いかけるって失礼な感じして気がひけるけどね、まぁしょうがない。


彼は予想通りトイレに入って行った。

そこまで追いかけて僕は気がついたら。

あれ?このまんまトイレ入ると本当に追いかけてきた感じして良くないよな。変人というか変態というか、、とりあえず良くない。

僕は頭をフル回転させる。えーっとトイレの近くになんか誤魔化せるようなところは、、

そして僕は見つけた。

横の水道使ってたフリするか。名案。

僕は、トイレのドアが開くのをチラチラ横目で見ながら水道の前でソワソワしていた。

やばい、完全に変なやつ。これ同性だからまだマシに見えるけど、異性だったら完全にアウトだな。そう思いながら待っていると、トイレの中から手を洗っているような音がしている。

あ、出てくるかも。とりあえず僕も手を洗う。

さぁ、出てこい。こっちは洗いたくもない手を洗って君に挨拶するのを待ってるんだ。


ギィっと音がすると彼が出てきた。

あ、ナイスタイミング。僕も洗い終わった。よし、タイミングはここでしょ。


「おはよう、和田」


そう声をかけると、彼は少し肩をビクッとさせると僕の方を睨みつけるようにし、


「急に背後から話しかけるな」


と言い放つとスタスタと歩いて行ってしまった。


うん、まあ返してもらえるとは思ってなかったしまだ大丈夫。

それに、昨日とは違ってまだトゲトゲ感は薄い。トゲト、ぐらい。心もガードで守られたぐらいしか傷ついていない。

今回の挨拶で分かったことは、彼は勉強中以外ならトゲトゲ感が減りそうなこと、無視ルートは意外とないこと。

あと、怒っていても必ず返してくれる。ここは、彼のいいところだし才能を開花しても続けて行ってほしいところだと僕は思う。


よし、とりあえず明日からも挨拶を続けてみる。慣れてくれば彼も挨拶を返してくれるに違いない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る