第51話 他者排除型の才能を開花させたい ステップ2 話かけてみる
僕はとりあえず彼に挨拶をしてみることに決めた。
彼は寄ってくる人たちを彼自身のトゲトゲで攻撃してしまっているせいで、彼に話しかける人はほとんどいない。
だから、挨拶すらも彼にする人はおらず話しかけるとしたら業務連絡ぐらいのものだ。
彼に話しかけることはこれまでの子達よりも緊張はしない。異性じゃないから、普段の友達みたいに話しかければいいだけだからね。
だけど、彼にとっては別の意味で緊張するというか、無視されるルートと暴言をはかれるルートの2通りしかないのが辛い。
しかも、挨拶を返されるルートはほぼない。
彼が誰かに挨拶をされているところをはじめの方は見たことはあったが、いつも無視するかトゲトゲ言葉投げつけてたもんな。次第にみんな彼に挨拶することすらも無くなっていったのだ。もはや挨拶返されるルートは雑草が茂りまくって見えないほどにない。ジャングルだね。
まぁそれも乗り越えるべき困難だと思えばどうってことないけどね。
困難は多ければ多いほどヤンデレを生み出せた時の感動は大きい。そうでしょう?
そんなわけで僕は彼に挨拶をしようと近寄る。
今日も彼はノートを広げて勉強をしている。数学かな?僕が朝登校してくると、いつも彼は勉強をしているのだ。
やっぱりすごいなぁと僕は思った。賢いのは元々の力もあるんだろうけど、当たり前だけど努力もあるよな、と僕は感心する。
そんなにすごいんだから、周りを攻撃しなくたって君の力はみんなが認めてくれるのに。
まぁ、いいよ。僕が君を変える!なんてね。
とりあえず、杉沢の時の技を使って挨拶をすることに決める。挨拶する時は名前呼ぶってやつね。これだと無視されにくいから。
「おはよう、和田」
と声をかける。
彼は僕が声をかけてもしばらく勉強をしていた。え?名前言ったけど気づかなかった感じ?あれ?
うーん、和田はクラスに一人しかいないから大丈夫だと思ったんだけどなあ。
とりあえずもう一回言ってみるか。
「和田、おはよう」
次は名前を先にして言ってみる。あと何気に名前わ強調してね。
すると、彼はキッと睨みつけるように顔を上げると僕を一瞥し、また顔を下げてしまった。
そして、
「見てわからないのか?勉強してるんだよ、話しかけるな」
と言った。
なるほど、暴言ルートだったか。予想していたとしてもかなりくるものがあるよね。挨拶ぐらいさせてよ。
僕はごめんごめんと言いつつ席に戻った。
ふぅ、と一息つくものの、僕はかなり傷ついていた。それはそう。僕だって人間。できればトゲトゲした言葉はくらいたくないし、ヤンデレを生み出すためとはいえ傷つきたくはないのだ。
傷つきたくて話しかけるやつなんていないしね。それに、まだ彼の才能は開花していない状態。いくら準備状態といえども僕は傷つきたくて彼と関わりたいわけじゃない。
それなのに、傷つくなんて割と合わない気もする。うーん。
一度で躓くなんてだらしないか、いや傷つくのは誰でも嫌だしなぁ。僕の考えは堂々巡り。
とりあえず、明日も挨拶はしてみることにする。もしかしたら今日は恥ずかしかっただけかもしれないしね?
そんな希望的観測を描きながら。
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