第44話 次の日のテスト勉強は(彼女目線②)

ある日、私は今日も彼に連絡を送っていた。

今日も、きっと早くは返信は来ないだろう。そんなことはわかっている。流石に私だって彼にばかり夢を見ているわけではないのだ。

でも、送らずにはいられない。会えなくたって私がいると言う証明をしなくては。

そうは言っても、彼はいつも1時間や2時間で返信してくれる。

私はその時を待つしかない。


どれくらいの時間がたっただろうか。全く私の携帯は通知音を示さない。

1時間、2時間、3時間経っても彼から返信が来ることはない。

ましてや、既読すらもついていない。

え?なぜ?

私は不安に胸が募る。どうしたの?なぜ返信をしてくれないの?

私のことが嫌いになったの?

事故とかあってないよね?


まさか、女と会ってるなんて言わないよね?


私は気がついたら怒涛にメッセージを送ってしまっていた。

何?どういうことなの?

私は自分の感情を抑えられない。自分が自分ではないみたいだ。

でも、止めることができない。だって、彼が知らない女とあってるかもしれないんだよ?そんなの心配にならないわけない。


どれくらい時間が経ったのかはわからない。私は携帯から目が離せない。

ねぇ、なぜ返してくれないの?

私はもうあなたにとってどうでもいい存在になってしまったの?


『ピロンッ』


突然、携帯の通知が鳴る。

貪るようにみたその画面には私にとって一番見たくなかった文字。


『別れよ』


あ、もうだめ。

その文字を見た途端、私の気持ちを繋いでいた糸は切られてしまった。

私の目からは涙が溢れて止まらない。何が何だかわからない。なんなの?どうして?

やっぱり新しい女がいるの?


そこからはどうしたのかわからない。気がつけば私は公園に来ていた。

今の私はひどい姿。くたくたのワンピースに汚いスニーカー。

泣いたせいで目は充血し、瞼は腫れあがり、髪はボカボサ。

でも、私がひどい姿だからって私は許さない。

どうして私と別れるの?新しい女がいるんでしょう?許さない。


私は彼が話し始めるのを静かに待っていた。

ねぇ、早く話してよ。どうして黙ってるの?

わからない、彼の考えていることがわからない。

私と別れたいの?別れたくないの?どっち?

早く話してほしいけど、話してほしくない。だって、次に話すときは私たちの別れの時ってことでしょう?


どのくらいの時間がたったかわからない。

彼はじっと黙ったまま。静かに時間は経っていく。

その時間が私を冷静にする。

別れようと言われて躍起になっていたけれど、本当に彼は浮気をしていたんだろうか。

彼はそんなことをする人だっただろうか。

別れると言われて思い出されるのは、彼との思い出。一緒に行った映画館、遊園地、服屋。

彼は優しく、明るく、友達思いの人。

そんな彼が浮気をするなんてあり得ない。

私は何を考えていたんだろうか。


冷静になった私は改めて彼の顔を見る。

彼は、どこか遠くを見るような、不思議な表情をしている。

あ、きっと彼は悩んでいるんだ。

別れようと言ったけれど、どうやって話を切り出したらいいのか分からないに違いない。

彼は、優しい人だから。

ねぇ、私はどうしたらいい?私はあなたが幸せになれるならなんでもいいの。


彼は突然私に向かい合うとこう言った。


「ごめん、やっぱり別れたくない」


え?どう言うこと?

私は幻聴かと思った。だって、次彼が口を開く時は私が振られる時だと思っていたから。

なのに、彼は私の想像とは全く異なる言葉を言った。

別れなくていいってこと?本当?そんなの、私も別れたくないに決まってる!


私は彼に夢中で抱きついた。

よかった、私たちは別れない運命だったんだよね。やっぱり。

私、これからも頑張る!

だから、見捨てないでね。


なぜあの日、彼は別れ話をしようとして急に意見を変えたんだろう。

わからない。でも、彼は浮気はしていなかったってことだよね?

その事実だけでいい。

その事実さえあれば、私は生きていける。

彼は私に夢中だもの。

私たちの仲は誰にも引き裂けないよね?


ね?

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