第42話 次の日の勉強は(彼氏目線②)

彼女からの大量のメッセージの結果、俺は彼女と直接会うことにした。

というか、そうするしか彼女からのメッセージを切る方法はなかった。

はぁ、マジで嫌なんだけど。会ったら別れられないパターンじゃない?


彼女とは近くの公園で会うことになった。

ここはよく遊んだ場所。いるだけで思い出が蘇ってくる。

お金とかあんまりないからここで駄菓子買ってきて食べたりとか、ただしゃべったりとかした。

あの時はこんな別れ方するなんて思ってなかったのにな。ずっと一緒にいられるって思ってたのに。

あーあ、がらにもないわ。こんな夜に会うからちょっと湿っぽくなる。夜テンションっていうの?


10分ぐらいすると、彼女は来た。ゆるいワンピースにスニーカー。彼女の目は薄暗い公園でもわかるぐらい真っ赤だった。多分、俺のメッセージのせいだろうな、ってそりゃそうか。

彼女は「遅くなってごめん」と言うと、黙ってしまった。

俺もどう言っていいかわからない。別れたいと思っていた熱は少し冷め、彼女との思い出に浸っていたところに彼女が現れたから。


あらためて彼女を見ると、彼女は何も変わっていない。それは決して悪い意味じゃない。

中学校の頃のように、彼女は綺麗な髪、凛とした佇まい、そしてきっと素敵な笑顔で笑うんだ。

変わっているのは目の色だけ。それも俺のせい。笑っていないのも俺のせい。

変わったと思っていたのは、勝手な俺の想像だったのかもしれない。


良く考えれば、俺は最近、彼女のことをうざいとしか思えてなかった。というか画面上の彼女としか最近会話してなかった気がする。

でも、久しぶりに直接彼女に会うと、好きだった気持ちっていうか、どこが好きだったとかが出てくる。だから、ちょっと別れるっていう決心も鈍ってくる。

すると、また突然あいつの言葉がフラッシュバックしてくる。


『きっと不安なんだね。君も好きって言ったらきっと彼女も嬉しいよ』


あれ?俺、最近好きって言ったことあったっけ?

付き合い当初は良く言ってた気がする。なんか、言うことで愛を確かめ合う、みたいな感じで。

最近も、彼女からは頻繁に言われていたから、自分が言っている、いないなんて考えたことがなかった。

しかし、考え始めると言った記憶がない。

最近は、「俺もー」とか言って誤魔化してた気がくる。

そんな俺のあいまいな気持ちが彼女を少し変わった愛の方向にしてしまったのだろうか。


それに、俺にも多分余裕が無くなってた。高校生になって環境が変わって気疲れもあるし、部活とか勉強とかやることも多かった。

だから、彼女からの会いたいと言ったメッセージや大量の通知に徐々にうざいという感情しか抱かなくなり、愛情表現なのかもという感じにも最近は、捉えられてなかった。

でも、あいつの話を思い出して、彼女は愛情表現が下手なのかもしれないってちょっと思った。

それは俺の素直になれないとかとは違う方向性の下手さで、彼女もまた頑張っているのかもしれない。


そう考えると、別れたくないっていうか、別れる劉がなくなってしまった。

まじ俺って身勝手。いや、わかってるそんなこと。でも、今言わないと、本当に別れることになっちゃう。


俺は意を喫して言う。

「ごめん、別れたいとか言って呼び出しといてなんだけど、やっぱり別れたくない。ごめん、わがままで」


ごめん、呆れてる?

彼女の顔を恐る恐る見ると、驚いたような、でも嬉しそうな顔をしている。

そして、


「うん!私も別れたくないの!」


そういい、抱きついてきた。

あぁ、そうだった。俺が一番好きだったのはこの笑顔だった。


そこから俺たちは話し合った。何が嫌か、どうしてほしいか、どのくらいの頻度で会うか、、

話し合うと、彼女がどんなことを求めているのか、逆に自分はどんなことを負担に思っていたのかが明確になってきた。

俺たちは新たな付き合いが始められるスタート地点に立ったのだ。


別に、彼女からのメッセージが減ったわけじゃない。今までみたいに重いやつもくるし、大量にもくる。

でも、それに対してどんなふうに彼女は返信してほしいのか、何を求めているのかを俺がわかることで、そのメッセージに対する俺の捉え方も変わってきた。

まぁ、なんていうか、彼女からのメッセージにもなれてきて、こんなのもいいんじゃない?って思えてきた。まぁ慣れってあるよね?


あと、あいつには感謝してやってもいいかなって感じ。あいつ悪い奴じゃないんじゃない?わかんないけど。仲良くしてやってもいいよ⁇

とりあえず、今日も勉強会には参加する。そんで、帰りは彼女と帰ります。さよなら。

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