第37話 一緒にテスト勉強すると色々みえてきた

「ねぇ、これわかる?」

「ここって範囲だったっけ?」

と言った会話があちこちで繰り広げられる。

初めは遠慮しがちで、個人個人でやっていた勉強も、誰かが質問したのをきっかけにわいわいガヤガヤ、みんなで会話をしながら楽しく勉強をする会となった。

わからない問題を聞く、教えると言ったことを通して僕たちは徐々に仲良くなっていった。


かくいう僕も、ヤンデレ才能を見つける、といった目的はあったものの勉強も手を抜けない。僕もみんなと同じく質問したり、問題に取り組んだりした。

この問題難しいな、これ教えてよってね。

しかし、僕だって馬鹿じゃない。ヤンデレの片鱗だってきちんと見つけて見せる。


いつも一緒にいる人もいるものの、半分ぐらいがあまり話したことがない人。

まずみんなの性格を知らなくては。

僕はみんなのノートをみる。それだけでも几帳面なのか、ガサツなのか、見るだけでもそれだけの情報がみえてくる。

他にも、初めからきちんと進める派なのか、それともかいつまんでやる派なのか。はたまた科目ごとにやる派か、ちょっとずつ科目をやる派か。

深く話さなくても、その人の性格やタイプは見えてくるものだ。


へー、あの子は几帳面そう、あの子は意外と大胆なのかも、なんてね。

意外とノートや勉強への取り組み方だけでも性格が見えてくるなぁと僕は実感する。

まぁでも、今のところはまだみんなの深層には迫れていない。それはそうだよね。ノートとか見るだけでヤンデレかわかるんならもはやそれ才能すぎてなんかに活かした方がいいもん。

しかし、僕にはまだ期待していることがある。


「俺?付き合ってる人いるよ、実は笑。中学の同級生ね」


とある男子が言った。

そうそう、これを待ってた!

テスト勉強中って休憩時間にする話があるでしょう?これって結構ポイントだと思うんだよね。

あまり仲良くないけどする話と言ったら、大体恋バナ。

しかも、みんな疲れてるからその疲れを紛らわせるために話は意外と盛り上がるし、言う方も打ち明けやすい。

だから、この時に恋愛観とかヤンデレの才能に気づけるかなって思ってたんだよね。

この時間は期待大!


その場は、男子の付き合っている相手の話で持ちきり。それはそうだよね、まだ5月。高校で新しく付き合っている人はレアすぎるから、中学からの持ち上がりでも話題にはなる。

「ねぇ、どんな子なの?」

「かわいい?それとも綺麗な感じ?」

と言った質問で溢れる。

僕も耳を澄ませる。よし、教えてよ。どんな人なの?その彼女や君にはヤンデレの才能はあるのかな?


彼は恥ずかしそうに話し始めた。中学3年から付き合っていること、顔は可愛い系で背も小さく守ってあげたくなる感じであること。

しかし、、


「でも最近、なんかめっちゃ連絡くるんだよね、ちょっと重いかも笑」


と笑っていった。

お?重い?

これは大事なキーワード。ヤンデレといえば重く、重いといえばヤンデレ。

きっと彼女の方は、彼と高校が離れてしまったことで不安で仕方ないのだ。だから、たくさん連絡を取りたいと思うし、できるだけ一緒にいる時間を増やしたい。

それが重いと伝わってしまっているんだな。

あぁ、なんていじらしいんだ。

ヤンデレかどうかはわからないが、彼女には才能かありそう。才能ある人を救わない手はない。

任せてよ、僕が君を安心させてあげる手助けをするから。

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