第32話 崇拝型の才能を開花させたい ステップ6 ヤンデレ誕生!(彼女目線)
私は溢れてくる涙をただただ流すことしかできない。
ただただ情けなかった。
なぜ、私はこんな風なのだろう。
すると、誰かが声をかけて来た。
「ねぇ、大丈夫?」
この声は、、
もはや声だけでわかる、私の救世主。彼に違いない。
顔を上げると、やっぱり彼だ。彼は、私の方を心配そうな顔をして見ている。
どうして私の元に来てくれたんだろう。
彼とは放課後に話したことはないし、話す予定もなかった。なのに、彼は私の元へとやって来た。
彼には私のピンチがわかるのだろうか。
私は彼になら打ち明けられると思った。いや、打ち明けたいと思った。
私は彼に泣いている理由を話した。
自分が情けない、恥ずかしいと思えて涙が出てくる、と。
彼に打ち明けたと同時に私は少し不安を覚えていた。
彼は私がどれだけつまらなくたって楽しく話してくれたし、話すのが遅くても待ってくれた。だから、彼になら打ち明けられる、私を擁護する発言をしてくれるって思った。
だけど、彼も私が泣いている理由を知ったらみんなと同じように言うのかもしれない。
「君が悪いよ、君が変わらないと」って。
そう言われてしまったらどうしよう。
彼にまでそう言われてしまったら、私はもう生きていけない。お願い、そんなこと言わないで。
いつものように笑っていて。
私は不安で不安で彼が言葉を発するまで彼から目が離せない。
彼は一呼吸置くと、私に向かって、
「君は君のままでいいんだよ」
と笑顔で言った。
その時、私は過去に人に言われた言葉を思い出した。
みんな私に、
「自分の意見を持ちなさい」
と言ってきた。
私はその度に落ち込み、いつしか自分自身でも、自分で何も決められないことに半ば諦めていた。
だって、無理なんだもん、そう思ってた。
なぜ自分の意見をもたなければいけないの?
みんな本当に自分の意見を持っているの?なぜ言えるの?
怖くないの?だってその意見ってお父さんが言ったわけじゃないでしょう?
それで失敗してしまったらどうするの?
お父さんの話を聞いて言う通りにしておけば何もかもうまく行くのに。
そしてみんな決まって言うの、
「あなたが変わらなくちゃ」って。
でも、なぜ変わらなくちゃいけないの?私はこのままでは誰にも愛されないの?
自分の意見の持てない私のままではいけないの?
だけど、あなたは違った。
私に「意見を持て」とも「変われ」とも言わない。
むしろ、そのままの私でいいと言ってくれた。
ただ、私自身を見てくれる、そんな人今までいなかった。
みんなが私に言ってきた言葉よりも心にストンと入ってきて、
「あ、私はこのままでいいんだ」
と思え、心がスッと軽くなるのを感じた。
そして、思った。
彼はまるで私のお父さんみたい。いや、お父さんよりも私のことをわかってくれている。
その日から私は彼に、どんなふうにクラスメイトと話したらいいか、どう答えたらいいかを毎朝相談した。
その度に彼は嫌な顔ひとつせず、むしろ嬉しそうになんでも答えてくれた。
そして、彼の言う通りに行動すると、何もかもうまく行った。
私の話を最後まで聞いてくれていなかったクラスメイトとの会話に成功したし、賛同することで相手を笑顔にすることもできた。
私、変わってないけど、変わってる?
なにも私自身は変わっていない。自分の意見は相変わらず言えないし、もじもじしちゃう。
だけど、彼の言う通りにすることで何もかもがうまくいく。今までと私はなにも変わっていないにもかかわらず。
これは私、変わっていると言えるよね。
今まで、学校ではどうやって行動したらいいかわからなかった。
なにを言えばいいのか、言っていいのか。
だって、学校にはお父さんがいないから。お父さんに決めてもらうことができない。だから、うまく行動ができていなかった。
でも、これからは彼がいる。彼の言う通りにしていたら間違いない。
もしかしたら、お父さんよりもいいかもね。
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