第27話 崇拝型の才能を開花させたい ステップ4 仲良くなる

僕は彼女と仲良くなるために彼女の動向を窺っていた。

いつ話しかけようか。なにを話しかけようか。

彼女の身につけているものは全て高級品で、彼女の趣味というか、家柄によるものにしか見えない。

休み時間にしている読書や勉強も授業に関連したものばかりで彼女がすすんで行っているのかもわからない。


どうしようか、今までで一番とっかかりがないぞ

、と考えていると彼女が目の前で転び、物をぶっちゃかした。

え?ちょっとまた、なにもないのに。


「大丈夫?」


気づいたら声をかけてしまっていた。しまったー!なんの策もないまま話しかけちゃったよ、、

まぁ、しょうがない踏み出したならそのまま前のめりに倒れようではないか。


「隣のクラスの八代坂さんだよね。怪我してない?」


とりあえず、ネタがないなら今現在のことをネタとするしかない。

彼女は少し驚いた顔をしていたが、物を拾う僕を追い払うことはなく、僕の問いに対しても頷き応えてくれた。

よかった、無視するタイプではないようだ。


「あ、あのありがとう。私よくコケちゃうから、その…心配しなくて大丈夫、です」


と消えいるような声で言われた。

彼女はどうしてこんなに自信がなさそうに話すんだろうか。

こんなに可愛いし、家もお金持ちでもっと自信を持ったらいいのに。杉沢のようにいじめに遭っていたとか?それとも単に性格なんだろうか。

そんなにおどおどしなくとも取って食ったりはしないのに、なんてね。


「大丈夫ならよかった、じゃあ気をつけてね」


と僕はその場を後にした。

とりあえず今日は顔合わせ程度で。あまり彼女に話しかける人がいない中では、コケているのを助けた僕は彼女に強く印象に残ったことだろう。


次の日、早速というかなんというか彼女は下駄箱の前で誰かを待っていた。

うん、自意識過剰なわけじゃないけど十中八九僕のことを待っている。

仲良くなるきっかけを作ろうと思っていた僕にとっては、偶然の産物、なんとしても物にしたいチャンスだ。

彼女は僕が来たことが分かると、顔を輝かせ、僕の近くに来ようとしている。

さぁ、おいでおいで。

しかし、僕が通り過ぎようとすると、声をかけようかかけまいか迷っている様子が見られる。

もう、しょうがないな。大丈夫だよ、僕が声をかけるから。


「おはよう、八代坂さん。誰か待ってるの?」


と僕が声をかける。

さぁ、何?どうして待っていてくれたんだい?


「あ、あの…昨日はありがとう。これ、お礼…」


と言って差し出してきたものはなんとゴティバのチョコ。

え?いやいや、まじでお嬢様じゃん。

ただ落とし物とっただけだし。

こういうところのなんていうか常識の違いっていうか、価値観の違いっていうか…。うん、こういう点でも浮いちゃうのかもしれないね。


「いや、大丈夫だよ。そんな高級なもの。そんなお礼されるようなことでもないし」


と僕が言っても彼女は首を振り続け僕にチョコの箱を押し付けてくる。

えー?無理だよ、こんなの。さすがに申し訳ないし…。

っていうか、ヤンデレ開花させてないのに貢ぐっていうか尽くしがちなところ、才能あるね!なんて。


「じゃあ、一緒に食べよう。中庭行って食べる?」


と言って、なんとか僕がこれを貰うというよりは、少し分けてもらうという形に落ち着くようにした。

ふぅ、少し予想外だな。やはりお金持ちは違う。丁寧にいかないととんでもないお返しが来る可能性があるぞ。


彼女と食べるチョコレートは今までで一番美味しかった。高級チョコレートが美味しかったというのもあるが、それよりもヤンデレ才能がある子との2人きりチョコレートタイムは良い。

彼女は静かにチョコレートを食べている。

僕は何度か彼女に質問をしながら、偶発的に生まれた貴重な時間を堪能し、出来るだけ仲良くなれるように関わった。

あんまり返事してくれないけど…。話聞いてるのかもあんまりわからない。

まぁ、でも、少しは仲良くなれてるんじゃない?


とりあえず明日からは彼女にヤンデレ才能開花のスパイスを。

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