第26話 崇拝型の才能を開花させたい ステップ3 出会い(彼女目線)
お前はここの中学を受験するのだ。わかったか?」
「はい。お父さん」
お父さんはいつでも私のことを考えてくれている。通う小学校だって、習い事だってなんでも私のために決めてくれる。
私は生まれた時から恵まれた人生を送らせてもらっている。お金に困ったことは無かったし、習い事はたくさんやらせてもらえて、塾にも通わせてもらっている。
私はあまり自分で何かを決めることが得意じゃないし、お父さんもそう言ってる。お父さんの言う通りにしておけば間違いはない。
そうお父さんも言ってるしね。
「あの子ってなんでも合わせてこない?」
「あぁ、瑠璃でしょ。いや、それわかる。なんか自分がないって言うか、合わせてきすぎてうざいよね」
中学校の時、放課後帰ろうと教室に入ろうとしたときに聞こえてきた会話。あ、そんなふうに思われてたんだって初めて気づいた。
合わせることのなにがいけないんだろう?だってあの子がそれがいいって言ったんだから、それでいいんだなって思ったんだけど。
ダメなの?なにか言わないといけなかった?
え、でもなにを言ったらよかったんだろう、わからない。誰か教えてほしい。
仲良い友達だと思ってたんだけど、あんな風に思われてるなんてちっとも思わなかったな。
あれ?なんだか景色が歪んできた。涙が溢れて止まらない。どうしたらいいんだろう、私。
その日から私はうまく学校に通えなくなってしまった。でも、どうしたらいいのかわからないし、なぜ通えなくなってしまったのかもわからない。
でも、そんな私に対して、お父さんは高校からはここに通えってパンフレットをくれた。
そっか、お父さんが言うんだから、次はこの高校に行けばいいんだな。よかった、お父さんがいて。これからもお父さんの言う通りにしておけば間違い無いよね。
そう思って、希望を持って入った高校。初めはうまくいってたと思う。
話しかけられたら答えてたし、みんなの意見も聞いてたし。
でも、だんだんうまく行かなくなっていった。話しかけるのは苦手だし、話しかけられてもうまく答えられない。
でも、みんなに合わせておけば大丈夫だよね。
うんうん、そうだねって。いいと思うって。
みんなしっかり考えてるし、みんなについていけば間違い無いよね。
でも、次の日、また次の日とくるごとに私の周りから1人また1人と人が減っていってしまった。
あれ?気づけばみんな自分の周りからいなくなっちゃった。なんで?
わかんないけど、私はまた1人になっちゃった。
学校ではお父さんもいないし、どうしたらいいのかわからない。
ダメだなあ、私。なんでうまくできないんだろう。みんな上手に人と関わってるのに。
それに私は話し下手なだけじゃなくて自分でも呆れるぐらいのドジ。
何にもないところでこけるのはよくあることだし、物もよく無くすし、靴下とか左右違うの履いてくるし…。
私も少しはしっかりしたいと思ってるんだけどなぁ。
あ、こける!
そう思った時にはもうすでに転んでいて物もとっ散らかっている。
あぁ、またコケちゃった。なんで私ってこうなんだろう。ほんとやだ。
涙が出そうになっていた私の前にスッと手が伸びてきた。
「大丈夫?」
と声をかけてくれた人は全然知らない人。でも、優しそうな笑顔で微笑み、私が散らかしてしまったものを拾ってくれている。
うれしい、みんな私がコケても無関心なのに…。
この人は誰なんだろう。
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