第21話 独占型の才能を開花させたい 番外編 彼女目線④

私は自分を初めて客観視するようになった。

すると、気づく気づく。自分が今までなんてわがままな行動をしていたのか、なんて傲慢な態度だったのかに。


あぁ、だから私は女友達ができても離れていっちゃうし、彼氏にもすぐに振られちゃうんだなぁ。今頃わかった。結局私ってダメなやつ。小学生の頃から何にも変わってない。ただ、1人が嫌なだけだったんだけどな。


私にそのことを気づかせてくれたあの彼も、私のことをもう嫌ってしまったのだろうか、ってそりゃそうか。こんなわがままで最低なやつ誰も好きになりはしない。お礼も言わない、わがまましか言わない、なんてやなやつだ。

きっとまた彼氏にも振られてしまうに違いないし、これから先、私のことを好きになってくれる人となんてもう存在しないんだ。

でも、彼とは友達としてこれからも仲良くしていけそうだったのに。いや、仲良くしたかったのに。


そんなことを考えていると突然、


「ねぇねぇ、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」


と彼が言ってきた。


え?うそ!私に言ってきた?

私は今、自分の置かれている状況が信じられなかった。

嘘でしょう?今まで全く私に頼る気配なかったのに。どうして?なんで?私なんかを頼ってくれるの?

いや、理由なんてどうだっていい!なんでもしてあげる!


そこから彼は私によく頼み事をしてくれるようになった。だから私は喜んで、CDだってノートだって何でも貸した。すると、彼はすごく嬉しい顔で笑い、言うのだ。


「ありがとう」

って。

あぁ、この顔が見たかった。私には向けられないと思っていたその顔を。何度も、何度も。

そして気がついた。

あぁ、もっとこんな顔がみたい。彼だけでなく、いろんな人から、そして大好きな彼氏からも。


それから私は困っている人や、何かしてほしいことがある人にひたすら声をかけるようになった。みんなのいろんな表情がみたいと感じるようになった。以前は周りの人の顔なんてどうでもよかったけど、今の私は違う。

みんなの表情が以前よりもはっきり見えるようになったし、相手の気持ちも考えることができるようになったと思う。

なんか周りの人達も私にすこし優しくなった気がする。なんだ、私が少し変わるだけで周りの人も変わってくれるんだ。

過去ばっかり気にして、いつまでも意地張ってたのは私なのかも。


そして、私は彼氏にも自分から謝ることができた。自分から謝ることなんて以前は絶対することができなかった。絶対に!

だって私は悪くないのに、あっちから謝ってくるべきでしょっていつも思ってた。

でも今ならわかる。好きなら、相手の気持ちを慮らなきゃいけないなって、相手が笑顔になれるようなことをしなくちゃねって。


正直、私は謝ったけど、許してくれないんじゃないかなって思ってた。それぐらい前の私は嫌なやつだったし、私だったら付き合いたくないって思ったし。

だけど、彼氏は許してくれた。

いいよ、ごめん俺も悪かったしって。

あぁ、私こんないい人にずっと酷いことしてたんだなって気づいた。

そこから、私は彼氏の色々な顔が見たくて彼がしてほしいこと、彼が喜びそうなことを積極的にするようになった。


でもやっぱり不安になっちゃって、女の子と話してたら、嫉妬しちゃって彼を責めちゃうし、夜に何回も電話をしちゃう。

時には激しく責めちゃうこともある。

でも、彼はそんなことをする私に向かってこう言ってくれるの。


「大丈夫、僕には君だけだからって」


私は生まれ変わったっていうぐらい変わることができたと思う。

それも全て彼のおかげ。

彼は本当にすごい。彼は私の救世主だ。

彼は私のことを認めてくれた、彼が私に足りないものに気づかせてくれた。

彼のおかげで私は生まれ変わった。

彼はどこかみんなとは違うのかもしれない。

彼氏とは違うベクトルで愛してあげてもいいよ、なんてね。

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