第20話 独占型の才能を開花させたい 番外編 彼女目線③
今日も彼に話しかける。
おはよう、昨日こういうことがあってね、そうそう、そういえばパピぷの新しいミュージックビデオ見た?ってね。
今日も彼はにこにこ私の話を聞いてくれる。嬉しい!全然寂しくない。
彼氏には全然連絡を取ってない。こんなことは多分初めて。喧嘩してたって自分から何回もメッセージを送ってたし、電話だってかけまくってた。
だって私から言ってあげないと謝る機会が作れないでしょう?でも、そしたら大体、そのあと振られるんだよね。
ははっ!ばかじゃん過去の私。
でもだからって、私は彼氏のことが嫌いになったわけじゃない。謝ってきたら許して、付き合ってあげるけど、今は彼氏いなくても寂しくないから連絡しないだけ。
彼が私を寂しさから救ってくれた。
あー、数学終わった。疲れたなぁ、ってこんな時は彼に話しかける。彼からはマイナスイオンが出ているのか、話していると癒される。疲れている時の一本!みたいな。
えーっと彼はっと…。あ、いた!
誰かと話している。ありゃ、誰かに取られてたか。
彼と話すようになって気づいたこと、それは彼は結構人気だということ。決して目立つタイプではないにも関わらず、休み時間には彼の周りに人が集まる。みんな彼の話術か、あるいは雰囲気に虜にされているのだろうか。
何を話しているんだろう。気になる。私以外ともパピぷの話するのかな、それとも好きな子の話とか?やだ、なにそれ。彼にはずっと彼女とか作らないで欲しいんだけど。
あ、でも別に彼のことが好きなわけじゃないから。私彼氏いるし。勘違いしないでね、あなたとは友達でいたいのよ。
少し経ってから彼を見ると、彼はノートを写していた。おそらくノートを借りたんだろう。
へー、彼も頼み事をするのね、ってまぁするか。
彼だって完璧人間ではない。授業中寝ることもあるだろうし、テスト範囲を聞き忘れるのことだってあるかもしれない。
うん、でも私は頼んだことしかなかったけど。っていうか、頼まれたこともなかったけど。
まぁ、しょうがないわね、私授業は寝ててること多いし。
ほかの頼み事なら、いの一番に私に来るでしょ。いつでも頼んできていいよ、君なら喜んで頼まれてあげる。
彼はその日から色々な人に頼み事をするようになったのか、色々な人に頼み事をする場面をよく見た。
私以外の人に。
なんなの?私への当てつけなの?私、あなたとは仲がいいと思っていたけど、私には頼まれるほどの器量もないと思われてるってわけ?
まぁ、別にいいけど。もう何も頼まないし、頼まれても聞いてあげないから。
それから、何日たっても彼が私に頼み事をしてくる様子はない。なんなの?気まぐれにも程があるでしょ、自分から仲良くなりたそうに話しかけてきたくせにこういう時は頼ってくれないの?
絶対、今頼まれたって聞いてあげないから。
でも、そういえば、みんな私に頼み事してきたことあったっけ?あれ?ないかも?
その時たまたま、私は彼が笑顔でお礼を言う場面を見た。
なにあの笑顔、あんなの私、見たことないかも。
なに、私以外のにはあんないい笑顔するってわけ?
そういえば、私って彼にお礼を言ったことあったっけ?いや彼に限らず、彼氏やほかの男友達にも言ったことあったっけ?いやなかったかもしれない。
私はその夜、初めて自分の行動を顧みた。どれだけ振り返ってみても、私はありがとうの「あ」の字も言っていないし、誰にも頼み事をされたことがないことに気づいた。
ははっ、なにそれ。彼に限った話じゃないし、そもそも自分がお礼も言わないから頼られないんじゃん。
私は自分を初めて哀れだと思った。
最低の女じゃん、私。
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