第11話 依存型の才能を開花したい 番外編 彼女目線④
最近の私は変だ。
彼のことばかり考えている。
しかし、それは恋といった甘いものではない。
彼が異性同性問わず、他の誰かと話すことで激しく動揺し、私だけを見てほしいと願ってしまう。
少し連絡がないだけで不安になり、連絡の催促をしてしまいそうになる。
こんなのは以前の私では考えられなかったことだ。
どうしてしまったのか、私は。
そんなことを考えながら、放課後1人でぶらぶら歩いていた。
目的もなく、ただ歩く。頭をすっきりさせるのにピッタリだ。
すると、前に見覚えのある顔が見える。
彼だ。放課後に会えるなんて貴重。今悩んでいる相手に会えるなんて、運命に違いない。
声をかけないと。
「あ、高城くん!偶然だね」
と私は声をかけた。
すると彼も偶然だね、と言いながら2人で歩き始めた。
放課後にこんな2人で散歩できるなんて、ちょっとデートみたい、なんて。
そんなことを思っていたら、前から聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。
その笑い声に私の体は自然と強張り、すーっと体が冷えていった。
まさか、、そんなわけない。嘘だ。
「あれー、杉沢じゃん。おひさなんですけどー笑笑」
私はその声を聞いた瞬間、地獄を思い出した。
冷や汗が溢れ、呼吸がうまくできない。
彼女たちは何か言っているかはわからない。しかし、体は覚えている。彼女たちからの恐怖を。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。体が震え、うまく言葉が言えない。
彼は驚いた顔をしている。
そうだ、今は彼がいるんだった。
嫌だ、見ないで。こんな私を。恥ずかしい私を。
やっと変われると思ったのに。
彼と出会って私は変われたと思っていたのに。
私は結局、過去から逃れることはできないの?
過去に囚われてしか生きていくことができないの?
すると彼は彼女たちに何かを言った。
何?なんて言ったの?
自分の状態に精一杯で彼がなんて言ったのかわからない。
彼にまで見捨てられたら私はもう生きていけない。
すると、彼は私の手をぐいっと引くと走りだした。
え?
私が驚いている間に、彼は私の手をひき、彼女たちをどんどん後方へと連れ去る。
なぜ?なぜ1人で逃げないの?
なぜ私を連れ出してくれるの?
彼は私を公園に連れ出してくれた。
そこからは、もう自分が何を言ったのかも覚えていない。
いじめられてたことを彼に打ち明けたと思う。
私は彼に引かれる、もう彼とは話せなくなると思った。
しかし、彼は言った。
君は悪くない。僕は君の味方だよって。
私はその言葉を聞いた時、あぁ、私は彼と出会うために苦しい過去があったのかもしれないと思った。
私は、やっと出会えた。
そして同時に思った。高城くんが今日いてくれてよかったって。
私は変われるって。
その出来事があってから私は変わった。
彼は私の暗い過去も受け止めてくれた、そう思ったら以前よりもより、彼に対し親しみを持つようになり、顔も綻ぶようになった。
その様子を見たからか、他のクラスメイトも話しかけてくれるようになり、私は学校生活がより楽しくなった。
彼と朝話す習慣は変わらない。
しかし、他の時間、今までは1人でいた時間に、他のクラスメイトといる時間が増え、私はやっと高校生活の第一歩に立つことができたのだ。
でもやっぱり、家では寂しくなる。
変わったと思っていても、明日になれば自分は元の自分に戻ってしまうのではないか、と。
そんな時でも、彼に連絡をすればいい。
少し返信がなくて不安になっていっぱい連絡を送っても彼は怒らないで返信をくれるし、夜中に電話をしても嬉しそうに話してくれる。
そんな人がこの世にいるだなんて思わなかった。
私の不安は、家にいても解消されるし、学校に行っても不安になることは少なくなってきた。
あぁ、彼に出会えてよかった。
もう過去を思い出しても辛くない。
だって私には彼がいるから。
彼がいれば他に何もいらない。
彼にはなんでもしてあげたい。
彼は誰にも渡さない。
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