第10話 依存型の才能を開花したい 番外編 彼女目線③

いつ、何を連絡していいのか、いや、そもそも私から連絡していいのか…そんなことを考えていたら、夜が明けていた。


しかし私は、家に帰り、どう連絡しようか、そう悩めるだけでも不安が減ったことを実感し、ご機嫌で登校した。


あ、彼が来た。

私は挨拶をする、すると彼も笑顔で返してくれる。ふふっ、なんて幸せなんだろう。今日はどの小説を紹介しようかな。


そう思った矢先、私は絶望に突き落とされた。

彼は私に挨拶するや否や、毎朝恒例となっていた小説会議をする前にほかのクラスメイトのところに話に行ってしまったのだ。


たしかに、彼には友人が多い。だから、朝以外は私よりも他の人と話すことがほとんどなため、朝以外ならわかる。でも、今日は朝から…。

私1人のものではないことはわかっていた。でも、朝は私との時間だと思っていたのに。

いや、今日は用事があったのかも、いやそうに違いない。明日からは朝私と話してくれるはずだ。


しかし、その日から彼は私に挨拶だけをすると、すぐに違う人のところに行くようになってしまった。

なぜ?私との朝の話をあんなに楽しそうにしてくれていたのに。もしかしてあれは演技だったの?

本当は私と話すの嫌だったの?

朝じゃなければいいの?そう思い、何度か朝以外にも話しかけようとしたが、どうもうまくいかない。

せっかく学校生活が楽しいと思ってきたところだったのに…。


私はどうすれば良いのかわからなかった。

なぜ彼は私と話すことを避けるようになってしまったのか。

なぜ?なぜ?なぜ?

私以外となぜ話すの?


そんなある日の夜、彼から連絡があった。


『最近、あまり話せないね。せめて、SNSでは話そうよ』


うそ!彼から連絡があった!

私は舞い上がり、すぐに返信をした。


『そうだね!あのね、最近面白い小説があってね」


と私が送ると、すぐに返信が返ってくる。

よかった、嫌われたわけじゃなかったんだ。ただ時間がなかっただけなんだ。


私は学校で話せなくても、安心するようになった。だって、彼とは夜連絡が取れるんだもの。

その時間は私だけのもの。

それに夜に2人だけの時間があるなんて私と彼との関係が特別なものみたいじゃない?なんてね。


今日は私から連絡してみよう。


『今日もあまり話せなかったね』


ふふっ、楽しい時間の始まり。

どんな返信が返ってくるかな。

しかし、いつもはすぐに帰ってくる返信が、全く返ってこない。

え?なんで?いや、トイレに行っているだけかも。ご飯とか。

そう思い待つが、全く返信が返ってこない。


どうして?どうして?


どうしたの?

ご飯たべてる?

お風呂入ってるのかな?

勉強してる?


私はハッと気づいた。

無意識のうちに何度もメッセージを送ってしまっていたようだ。

嫌だ、こんなにストーカーみたいな連絡をしてしまっては彼に嫌われてしまう。

何か、何かフォローのメッセージを送らなければ。


ごめん邪魔しちゃったね

また連絡するね


これでいいかな?大丈夫だよね?

誤魔化せてる?

私は彼からの連絡をただ待った。

何をするでもなく、ただ待った。その時間はこれまでの人生で最も長く最も苦痛な時間だった。


ピコンッ。


音が鳴る。

私は急いで携帯に駆け寄る。

すると、


『ごめん!!お風呂入ってたんだ!なんだった?』


とメッセージが来ていた。


なんだ、お風呂か。そりゃあ入るよね。

でもお風呂にしては長くない?と時計を見ると送ってから30分しか経っていない。

そんなぐらいだったんだ。2〜3時間は経っているかと思っていた。


でも良かった、私以外と連絡を取っていたわけじゃなかったんだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る