第9話 依存型の才能を開花したい 番外編 彼女目線②
私は、最近毎日が楽しい。
少しの時間ではあっても彼と話すことができる時間があり、今までの学校生活とは明らかに違う。
いじめを受けていた時間を忘れることができる時間だ。
しかし、その楽しい気持ちも学校にいる間だけ。家に帰ってくると不安に襲われる。
彼は明日も話してくれるのだろうか、と。
その不安が私を中学の恐怖へと押し戻す。彼女たちも以前は仲がよかったのに、ある日突然私を地獄へと連れ去った。
もう、あんな思いはしたくない。
彼はそんな人ではない。そんなことはわかっている。それなのに、毎日毎日不安で不安でしょうがない。
家にも高城くんがいればいいのに。
その時、私に一筋の光が見えた。
あ、そうか。連絡先を交換すればいいんだ。
友人と久しく連絡を取ると言うこともなかった私にとってその選択肢は忘れ去られたものであった。
そうだ、それなら家にいても彼と連絡をとることができるし、もしかしたら、声を聞くこともできるかもしれない。
私はワクワクした。よかった、この時代に生まれて。
しかし、同時に私は困ってしまった。
どうしよう、連絡先を聞くなんてほとんどしたことがない。ましてや、異性に聞くなど初めての体験。
もし、彼が私に教えることを嫌がっていたらどうしよう。いや、嫌に決まっている。どうしたらいいんだろう。
聞きたい、聞けない、いや聞きたい…。
私はその日の朝まで悩んでいた。
どうする?聞くなら朝聞くしかない。聞いたら、家でも彼と連絡を取ることができる。
いや、でも嫌がられたらもう立ち直れない。どうしよう…。
悩んでいると彼が来た。あ、挨拶しないと。
あ、えっと、、
「あ、あの、私高城くんの連絡先、教えて欲しいんだけど…」
間違えた!連絡先を聞こうか聞かまいかと悩んでいるうちに彼に聞いてしまった。
嫌だ、嫌がられるに決まってる。もう生きていけない…。
私は自分のどうしようもなさに落ち込んだ。
しかし彼はすぐに、
「もちろん!僕も聞きたいと思ってたんだよね。いつでも連絡してきていいから。夜中とかでも全然!」
と笑顔で返してくれた。
え?うそ?いいの?私のだよ?
そんなことを思っていたが、彼はすぐに携帯を取り出し、私にQRコードを見せてきた。
やだ!本当にいいんだ!やった!嬉しい。
家に帰っても高城くんと連絡が取れるなんて…!
そういえば、夜中にも連絡していいって言ってくれた?本当?
いやいや、冗談に決まってるよね。夜中なんてみんな寝る時間だし。
私は、その冗談に対し、
「いや、夜中になんかしないよー」
と笑いながら返した。
本当はいつだって連絡したいけど。
私は家で、どんなふうに連絡を取ろうかなと考え始めた。
何度も送ったらしつこいと思って嫌われちゃうよね。一日、数回ならいいかな?
電話ももしかしたらできる?
家でも彼と連絡が取れると思うと、少し不安が消え、幸せな気持ちが押し寄せてきた。
あぁ、なんて幸せなんだろう。
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