第6話 依存型の才能を開花させたい step6 ヤンデレ誕生?
あともう一つのスパイスで開花させられるといいのだが。
僕の考えたもう一つのスパイスは、
連絡を遅らせること。
よく聞くアイデアだが、これはヤンデレ開花に必須であると僕は考える。
恋愛テクニックでも、15分ほど開けてから連絡すると相手は自分を気にしてくれる、というものがよくある。
しかし、それは、
その時間ずっと相手のことを考えちゃう
といった自分自身完結型のものだ。
それが、ヤンデレの才能を持っていたらどうだろうか。
なぜ、連絡が来ないのか。
いつもは秒で返信が返ってくるのに。
まさか私のことを嫌いになった?
といって、何十通、何百通の連絡を送ってくる。
つまり、この反応で才能があるかどうかがわかるのではないかと、僕は思う。
さらに、この才能を開花させるには、秒返信が通常となってからの緩急が必要となってくるのだ。
必要なピースは揃っている。
行ってみよう。
僕はその日の夜、彼女からの連絡を待った。
夜7時ごろ、彼女から
『今日もあまり話せなかったね』
と連絡がきた。
よし、きた!
というわけでとりあえず放置…は僕には厳しいのでお風呂にゆっくり入ってくるか。
僕は彼女への返信を後にして、浴室へと向かった。
30分後
ふーっ、スッキリした。最初は、返せないことに対する罪悪感がすごかったが、一周回って彼女からの怒涛の連絡が入っているのではないかとワクワクしてきていた。
よし、どうだろうか。ここでダメだったら今までの苦労が水の泡だ。
僕はどきどきしながら携帯を開いた。
すると、
彼女からは7件の連絡がきていた。
どうしたの?
ご飯たべてる?
お風呂入ってるのかな?
勉強してる?
ごめん邪魔しちゃったね
また連絡するね
うーん、正直言って微妙だ。これでは普通の連絡であるとも取れる。
僕は、数十件の連絡を期待していたため、少しがっかりした。
彼女の場合、あまり、友達と連絡をとっているタイプではない。そのため、これでも多い方なのかもしれないが、7件では判別がつかない。
僕も急いでいたら7件ぐらい送ってしまうことはままある。
まあ、聞いている内容的には、才能がありそうな感じはするんだけどなぁ。
どうしよう。
僕は、放課後歩きながら悩んでいた。
完全に手詰まりとなってしまった。才能があれば、自分以外と話している場面を見せることと、連絡を遅らせることで開花すると思っていたのだが、今のままだと蕾状態。
普通の少女だ。
何かもう一押し、彼女をヤンデレへと導く光はないだろうか。
そんなことをぐるぐる考えていると、
「あ、高城くん!偶然だね」
と声をかけられた。彼女だ。
「ほんとだ。偶然だね」
と僕は返しつつも内心、
「実は偶然じゃないの。私、あなたのことを待ってたんだよ。ずっと、ずっと、、」
と、言われる妄想を行っていた。やれやれ。
そんなことを考えていると、前から5人ほどの女子高生が歩いてきた。
派手な感じで、キャハキャハ笑っている。
少し怖そうな感じだから、早くすれ違ってくれないかな、と考えているとその5人のうちの1人が、
「あれー、杉沢じゃん。おひさなんですけどー笑笑」
と言って絡んできた。
あれ?杉沢の友達だったのか。そりゃ失礼。
そう思い彼女の顔を覗くと、彼女の顔は青ざめ呼吸も早くなっていた。
まさか、、
「何無視してんだよ!杉沢のくせに生意気だな」
「ってか、それ彼氏?笑笑」
「え?まじー?笑うんですけど笑笑。彼氏はあんたがどんなやつか知ってんの?」
「うける笑笑。まじ生意気。ブスのくせに」
と5人は怒涛に彼女を罵倒し始めた。
やはり、あの噂は本当だったのか。
せっかく、彼女の才能が開花しようという大事な時になんと間の悪いことか。
僕は怒りに震えた。
お前らのようなやつのせいで、彼女は才能が開花させられないのか!
僕は怒りに震え、
「しつれいなひとたちだね、杉沢。もう行こう」
と僕は彼女の手を引っ張りそこから抜け出した。
何あれ。うざー笑笑。
ヒーローぶってんじゃねぇよ。
と言った罵倒が聞こえてきたが、僕にはどうでもよかった。
それより、彼女がこれ以上傷つくことが耐えられなかった。
気がつくと僕たちは公園に来ていた。
はぁ、もういいか。そう思い彼女の方を見ると、彼女は俯いたままだった。
なんと声をかけたらいいのだろうか。そう思っていると、彼女はポツリポツリと話し始めた。
「私ね、中学の時いじめられてたの、あの5人に。
毎日無視されたり、悪口言われたりして、もう学校に行きたくないって思ってたの。
でも、高校入って変わろうって、いじめられてたことも忘れて頑張ろうって。
だから、私、高城くんだけには知られたくなかった。こんな恥ずかしい自分…」
と言うと、泣き出してしまった。
僕はなんで言ったらいいかわからなかった。
僕は彼女とは、まだ浅い仲。
はっきり言ってその思い過去を受け止められる気量が僕にあるかどうかはわからない。
そして彼女もそれがわからないからこそ、僕に打ち明けてはなかったんだろう。
でも、、
「僕も、人に言いづらいことの一つや二つあるよ。気にしなくていい。むしろ、恥ずかしいのは彼女達だよ。高校生になっても君を罵倒している自分がかっこいいと思ってる。そんなのおかしいんだ。だから、、えっと、、その、、」
あぁ、なんでいい言葉の一つも出てこないんだ。
これだから僕はダメなんだ。
僕は、自分のダメさ加減に呆れていた。
しかし、彼女は僕のそんな様子を見て呆れることはなく、
「ありがとう。私、高城くんが今日いてくれてよかった」
とすこし涙を浮かべながらも、笑顔で彼女は言ってくれた。
その時の彼女の笑顔は、これまで見たもので最も輝いていたものだった。
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