第3話 依存型の才能を開花させたい step 3 挨拶から始めて仲良くなる

よし、まず挨拶をするぞ。

僕は学校に来て、深呼吸を繰り返していた。

昨日までは、やってやるぞと意気込んでいたのだが、いかんせん女子に朝から話しかけるなんて、というか用もないのに話しかけるなんて慣れないことなのだ。


はっきり言ってやりたくない。

しかし、これはヤンデレをこの世に生み出すために必要な過程だ。

ヤンデレのため…ヤンデレのため…

僕はそう心で唱えながら教室へと足を踏み入れた。


教室にはもう数人の生徒が来ており、その中に杉沢茜も混じっていた。

彼女はいつものように本を読んでいる。


よし、言うぞ、言うぞ。


「お、おはよう」

僕は彼女に向かって挨拶をした。


しかし、何も返ってこない。

うおぉぉ、心が折れる。

挨拶をして返ってこないと言うのはなかなか心にくる。ましてや、慣れない相手。

おい、無視すんなよーと声をかけることは絶対にできない…。


僕の作戦は、一歩目にして頓挫してしまうのか。

僕は諦めかけた。

しかしその時、

「あゆちゃんおはよー」

という違うクラスメイトの声が聞こえてきた。


そうか!名前をつければ確実に自分に言っているとわかる。

さすがにそれで無視する人はいないだろう。

頼む!これで答えてくれ。


「す、杉沢さん、おはよう」

あ、声震えた。でも名前も付けたし、まぁまぁ大きい声で言った。どうだ?返してくれ。


すると、彼女は驚いたように本から顔をあげ、そして小さく、

「お、おはよう」

と返してくれた。

わぁ、返してくれた。よかったぁ。

しかも、あまり聞いたことが無かったけれど、なんて可憐な声なんだろうか。


この声で、

あなたは私だけのものだよね

ずっとそばにいてね

と言われたらどうだろうか。あぁ、なんと素晴らしいことだろうか。

鳥肌と妄想が止まらない…。


と、いやいや。

ぼくの今日のミッションはこれだけではない。

ちょうど読書をしているのだから、本を共通の話題の架け橋としていかなければならない。


よし、頑張れ自分。

大丈夫、この勇気が明日のヤンデレへと繋がっていく。


「あ、あのさ、なんの本読んでるの?」

僕は彼女が本の世界に行ってしまう前に声をかけようと急いで声をかけた。


彼女は、他にも話しかけられるとは思っていなかったのか、またしても驚いた顔をしている。

そして少し怪訝そうな顔でもある。

まずい、流石に突然すぎたか?

今まで全然話しかけたこともなかったし、、


「え、えっと、短編小説。恋愛とか友情とか色々なの入ってて」

と彼女は答えてくれた。

よかったぁ、また答えてくれた。

この少し警戒しつつも一応答えてくれるところもいいなぁ。

才能ある。うん。


「そうなんだ、面白そうだね。僕も読んでみる」

と言ってみた。

すると、彼女は少し苦笑いをしながら、本へと戻っていった。

これ以上は話しかけづらいな…。


うん、あってるかわからないけどとりあえずある程度の会話はできた。うん。

初日にしては良い方なのではないか。


うん、頑張った、頑張った。えらいぞ、自分。

自分の頭を撫でてあげたい。よしよし。


とりあえず今日のミッションはおっけー。

それで、今日の帰りは彼女が読んでた本を買って、家帰って読んで…と。

そしたら明日小説の話がもっとできるし、きっと共通の話題とすることができるな。うん。


あぁ、ちょっとした行動がヤンデレへの糧となっていると思うともはや貢いでいるような気分にもなるな。

最高。明日も頑張ろう。

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