第9話 上手く行かない友達作り

高校生活3日目になると、慣れは生じてくるもので、誰が昼休みに誰とご飯食べるのか、とか。放課後は文学部か運動部か、それとも帰宅部なのかの部類わけができてしまっている。


ルーティン化された交友関係にあがらうことはしなくなるようで、あれだけ無口だったうちのクラス(そう思っているのは俺だけかもしれない)も、普通に集団を形成し、まぁそうじゃなくて集団を観察してるぼっちなやつもいたりして、とりあえずの秩序の形成には成功している模様。


以上、ぼっちになりかけている俺からのリポートでしたっ!


いや、マジでしんどい。


せっかく名前覚えた新田健二くん全然話しかけてこねーし!いや、話しかけようとすると避けらるし。


無視されるし。


「おーい。新田健二くーん?」


「・・・・・・」


「おーい。聞いてるのかー?」


「笑ったのは・・・悪かったから許してください・・・」


なんか、新田くんガクブル震えてるんだけど。なんかしたかな?俺。


「そう、それ。俺の自己紹介で笑ったよな?」


「わ、笑ってません!」


「な、なんで敬語?」


「まさか、あんな怖い人たちと仲が良いなんて思わなかったんです。何が、目的なんですか?」


「えーっと・・・とりま、雑談をだな」


「生徒会の1番怖い人とか、銀髪の笑顔が嘘くさいマフィアとか、・・・初日にここに来たかわいい子は何なんですか!?」


「銀髪のマフィア?ああ、あいつか・・・ドリルか・・・」


「陽キャの中でもぶっちぎりであろうあなたが、どうして僕に話しかけるんですか?」


「話すくらい良くね?」


昨日、新田くんの席使ってドリルと昼飯食べたのが悪かったのか。ごめんな、新田。


「シュウー、体育着貸して?」


「おのれ梨奈。お前は俺の友人作りを邪魔するのか」


もう恒例になりつつある、梨奈行間休みの教室訪問。


こいつのおかげで俺はクラスで仲良くできないのかもしれない。いや、そうに違いない!


俺はなるべく教室に留まって仲良くなろうとしているのに。なんならトイレ行く時間だって惜しいわ。


「シュウー?」


「男から体育着借りるなよ」


「長袖ジャージ友達に貸したから、シュウの貸して」


「でかくないのか?」


「いいのいいのっ!」


梨奈は勝手に人のバッグを漁って持ってってしまう。


・・・まだ俺着てないんだけど。


「あれ?シュウの匂いしない。新品だこれっ!」


「良かったじゃねぇか」


「良くない良くないっ!」


なぜかプリプリと頬を膨らませて怒っている梨奈。


教室の雰囲気は、また凍りついたように静かになっていた。


「じゃ、借りるねー。彼ピー」


「彼氏じゃねぇだろ」


「いいの。梨奈の中ではそうなのっ!」


軽いノリの延長だろうか?まぁ、彼氏にしてくれても何でも構わないけどな。相手いねーし。


パタパタと忙しそうに梨奈はいなくなった。


なんだか周りの視線が痛い。


誰か話しかけてくれよぉ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クラスの自己紹介で彼女募集中ですと言ったら教室の外から何か来た とろにか @adgjmp2010

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ