第7話 仮入部期間だけど

「部活を決めたい?」


「うん!やっぱり幽霊部員でもいいから何か入ってみようかな?って」


それは入学して3日目の朝、しれっと一緒に登校中の梨奈言われたことだ。


また梨奈の突拍子もない思いつきが始まった。まぁ、それ自体は別に悪いことではないんだけど・・・だけど・・・


暴力女で有名な京子姉とかは見張ってないと巻き込まれるし、一緒にいてあげないと不安な気持ちに駆られるドリルという連れがいることがわかっていて、お主はあえて部活に飛び込みます?


まぁ、みんなクラス違うから別にそれぞれ頑張ってくれりゃあいいんだけどさ。


「俺の負担が増すんだが」


「ハーレム王の甲斐性ってやつじゃないの?」


「誰がハーレム王だ」


「学校で4人で過ごすのと、部活を選ぶのは別問題じゃん?」


「ほう。それで?」


「じゃあ京子姉だけ部活できてずるくない?」


いや、確かに京子姉は部活やってるけども、あれは全国大会行けるからって無理矢理剣道部のやつらに頼み込まれたんだけどな。しかも本人じゃなくて俺に。


「ずるいっていうか・・・梨奈、おまえなんかやりたい部活とかあるのか?」


「質問を質問で返すなぁっ!シュウはやりたくないの?部活」


「質問を質問で・・・!んー、2人の介護が負担すぎて考えたくない」


「うわぁ。ぶっちゃけたね」


「心配な人を預かってくれる部活があったらいいな」


「そんな都合の良い部活無いよぅ・・・」


高校デビューで真新しい環境を楽しみたいのは梨奈も同じみたいだ。そこを共有できたことに感謝したい。心の友よ。


梨奈は意外と、人に合わせるところがあるからな。ちゃんと相談してくれるのは有難いんだけども。


「うちら、意外と外の世界知らないじゃん?ちょっと見ておきたいんだよね。居心地良いのはとりあえず、後回しで」


「それ聞いたら俺もなんかしなくちゃって焦るだろ」


「焦らしたのは誰かな?」


うん、そうだね。俺もそれっぽいことしたね。入学初日に。


でもこいつは知らないはずなんだけどな。



***


京子姉に竹刀を持たせると危ないから、警策を持たせた俺が感謝されてから苦情が来るまで、1ヶ月だっけ?いや、1週間持たなかったわ。


生徒会役員である京子姉に逆らう者などいないので、最早この学校を牛耳ってるのではと噂されていましたが、残念でした。


京子姉に指示出して仕切ってたのは入学もしていない中坊だった俺ですん。すみません、生徒会長に頼まれてやってました。


京子姉に首輪つけとけって言われたし。


「ガルルルルル!」


「威嚇しないでくださいよ」


「むー。梨奈が悪いんだ。生徒会に誘ったのに、絶対入らないって言われた」


「京子姉、お腹ペコちゃんなんだね。わたし京子姉のためにクッキー焼いて来たのっ。食べるー?」


「頂こうか(キリッ)」


朝の挨拶運動ならぬ、京子姉の京子姉による京子姉のための、『煩悩撲滅運動』。朝からシャキッとしてないやつは警策により京子姉の餌食となる。被害者は男子が多い。


「もぐもぐ。今日も梨奈のお菓子は美味だ。どうやらわたしは空腹で苛立っていたようだ。許してくれ、梨奈」


「はいよー。ちゃんと朝ごはん食べなきゃダメだよ、京子姉」


「むー。朝5時に起きようと、決まって素振り300回をこなしてからだから、どうしても朝食がおざなりになってしまうんだ」


武士ですかあんたは。


おっ、それはそうと校門からベンツが入って来たぞ?


「おはようございます。みなさん、今日は良い天気ですね」


「おはよう。今日もドリルはギュルンギュルンだな」


ドリルの髪のドリル部分がな、鋭利だわ。


「おはっすー!杏ちゃん今日もかわいいっ!」


「梨奈ちんもかわいいのですわ!」


「ありがとっ!」


「実は、今日はみなさんにお弁当を食べて頂きたくて作っていたんですけども、そうしたら思いの外時間が押してしまったんですわ」


「ナイス杏ちゃん!ほら、シュウ、ちゃんと荷物持ってあげて!」


「杏殿、わたしはもう今すぐ食べたい気分だぞ」


「ほらね、京子姉から早く弁当を避難させるんだよ」


「昼まで我慢しろよ?襲ってくるなよ?」


「べ、弁当ーーーーーー!!!」


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