第3話 鹿島梨奈

俺の幼馴染、鹿島梨奈(かしまりな)が教室に現れた。


まじまじと梨奈見てみる。


金髪、サイドポニー、ちょっと着崩していて胸元はボタンひとつ開いている。それでいて巨乳。入学初日にこんだけ着崩していているのにギャルっぽくないという奇跡。


「シュウ〜?待ってるんだけど。寝たフリはやだよ?」


普通、一般的にはだ。梨奈にも自分のクラスがあるんだし、まずはそこで関係性を作ることに必死になるんじゃないのかね?


「梨奈、おまえ自分のクラスは?」


「勝手に自己紹介してって先生に丸投げされたから、名前だけ喋って出てきた」


「おふぅん」


変な声が出た。


「それよりさー、この後学校回るんでしょう?一緒に行こうよ」


仕方なく、席を立ち上がる。


これ以上待たせたらこいつが不機嫌になるのを知っているからだ。


「シュウのクラスの人、こっち見過ぎ〜。早く行こうよ」


「へいへい」


俺には幼馴染が2人いる。梨奈は幼稚園からの付き合いだ。梨奈の妹の林檎(りんご)も幼馴染ってことになる。


で、他にも交友関係があるやつはいるにはいるのだが、ちょっと俺の場合は特殊だ。


「ねー。京子姉のとこにいくんだけどいい?」


「剣道部には入らないって言ってんだろ。・・・おまえまさか入る気か?」


「まさか。元気してるか見にいくだけだよー」


「へっ。元気に決まってるだろうが」


「へっ。ですなー」


そんな会話をして、歩いていく。


さっきの自己紹介失敗の絶望感が嘘のように消えている。


だから俺は嫌だったんだ、と。梨奈の髪をくしゃっとする。


「なに?なんなの?」


怪訝そうな目で見られるが気にしない。俺より頭一個分身長差があって、撫でやすい場所に頭があるのが悪い。


「いちおー、学校だけど?ここ」


「そうだが?」


何か問題でも?と言いたげな顔で返すと、梨奈は溜息をつく。


「なんで・・・あんなこと言うかな?めちゃくちゃ焦ったんだからね?」


ん?はて、何のことだろう?


こいつのクラスは3組で俺は1組だ。教室は離れている。


まさか俺のさっきの大失敗自己紹介がこいつまで聞こえるわけがないのだ。


「俺が、なんか言ったか?」


「んー、さっきのシュウってさ。爆弾発言した後、絶賛後悔してるみたいな。しおらしい顔してる感じだったよ?」


「まじかよ」


「マ」


「マ、ですか」


「ああー・・・別に話したくないならいいんだけどね。悩みとかあるなら言ってね?」


「それなら、入学しても変わらないこの感じが・・・どうも変わり映えしなくてなんだかなってのはある」


「なるほどなるほど。んー、シュウってアホだよね」


「急にディスられた!」


「まぁ、いいけど。シュウらしいよ」


何がだよ。すぐ馬鹿とかアホとか言われるけどよ。俺そこまで勉強できない訳じゃないからな?


「俺、勉強できるし!とか思ってそう」


「なぜ近いところを当ててくる」


「勉強できないからアホって言われる時もあるけどさ、この場合な相手のことを察せない人に使う言葉だよ?」


「察せないかぁ。なんか、殺すほうの殺せないほうを思い浮かべたわ。京子姉のせいだわこれ」


「あははー。斬られないようにしなねー?」


うん、そうだな。京子姉ならやりかねん。

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