第2話 オリエンテーション

前の席の男子は新田健二(にったけんじ)という名前らしい。彼が俺より後の自己紹介で助かった。


なぜなら俺は他の人の自己紹介何も聞いてなかったから。


俺の自己紹介を成功させることでいっぱいいっぱいでした。何だったんだあの万能感。うへぇ、死にてぇ。


はい、アウトですね。先程まではね、輝かしい高校生ライフが送れると思ってたんですよ。


でもね、今は泣きたいです。大失敗です。時間巻き戻したい。タイムマシンって無いんですか?


つーか、なんでみんな自己紹介で名前しか言わんの?モブなの?アホなの?そんなんじゃ見た目で判断してって言ってるようなもんじゃん。それともアレですか?君たちとは仲良くしたくない的な雰囲気なの?全員?全員が???


「それではみなさん、オリエンテーションの準備をしてください。各自学校から配布されたしおりを持ってーーー」


自己紹介が終わったクラスからオリエンテーションってなんだよ。あ、もしかして、だからみんな自己紹介短かったのか。みんな早く教室から出たかったと。なるほどな。だとしたら、誰か教えてよ。そして、今俺が1番教室を飛び出したいよ。


あー、なんか、もう、やばいな。空回ってんなぁ。


「教室や部室、体育館、トイレなど、至る所に先輩たちが待ち構えていて、部活に勧誘されるかもしれませんが、12時までには教室に戻ってきてください」




***




そそくさといなくなった先生。団体行動で先導してくれるわけでもなく、まだ関係がぎこちない集団が教室に取り残される。


「俺、やっていけんのかな・・・」


そんなことを呟いた時、ガラッと教室の前の扉が開いた。


「シュウ!来たわよ。一緒に回りましょう?」


来たのかよ。


声だけで誰が来たのかわかってしまう。


俺の幼馴染がいつものように現れたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る