第3話 俺は完璧なイケメンたぜ!、、、なのに。。。



俺は近藤タケル29歳。



イケメンで高身長、高学歴。

そして父親は飛ぶ鳥を落とす勢いの超新星企業の社長。

つまり俺は御曹司様と言うことさ。


そんなスーパーな俺は常に人より一歩先にいる。

中学、高校と優秀過ぎる俺の頭脳は熱心に勉強せずとも常に順位は10位以内だった。

尚且つ、スポーツ万能でも有った俺は一つのクラブに固執せず、泣き付いてくる友人達の為に助っ人として全てのクラブに貢献して来た。


まぁ、そんな俺がモテない訳が無い。

言わずもがな俺と付き合たいという女は腐るほど居た。

付き合えないならば一時だけでもと懇願する奴まで現れる始末。


ふっ、俺は罪な男だぜ。

だからちゃんと一回位は相手をし夢を見させてやった。

そんな女はキリがないから美人に限りだ。俺は優しいイケメン様だからな。

相手をしてやった俺に全ての女は感謝をしていたさ。



『ありがとう。。もう十分です。』



とな。

 


そんなに良かったかい?ヒヒッ。



そんな幸運な女共は俺との一時を一生の自慢にしながら今後生きて行くのだろう。

これは所謂ボランティアって言うヤツだ。

俺は恵まれない奴等に希望を持たせる素晴らしい人間なのだと実感する。



高校卒業後、超一流の大学に入ってからもそれは変わらなかった。

俺は優秀過ぎてゼミでもサークルでも引くて数多。

多忙な俺は全てを熟すべく二つ下の不出来な弟に資料をまとめる様指示を出す。俺とは全く似付かない容姿のデブブサ根暗弟の″マサル″にだ。

完璧な俺の唯一の汚点のマサルだが俺の書いたものをただまとめるだけの単純な作業位なら出来るだろう。

マサルが制作した資料は俺的には満足行くモノでは無かったが、まぁ譲歩してやろう。

ふっ、何も出来ないクズが俺の為に働けるんだからありがたく思え。


そのうち優秀過ぎる俺の論文に感銘を受けた教授から声が掛かり仕方無しに院へ進む事となった。


神は俺に二物も三物も四物も与え過ぎだぜ。


そう、俺は全てを順風満帆に過ごして来たんだ。


ーーーだが、大学院を卒業し予定通り親父の会社に入社し、、、そこから歯車が狂い出す。


俺が配属された部署は低学歴(二流大学卒)の仕事の出来ないクズ共がたむろして居た。

俺がいくら指示を出しても全く思い通りに動かない。どいつもこいつも無能過ぎたんだ。

そんな奴らの所為で俺の業績が全く伸びる訳もなく、寧ろ俺への嫉妬で悪評まで出る始末。。。

まさか、こんな優秀な俺が足を引っ張られる日が来るとは、、、本当にツイていない。


流石の俺もイライラが限界に達し親父に役立たずのクズはクビにするべきだと会社にとって有益な進言をした。


が、


『お前からそう言われるとは、な。社員達に申し訳無くなる。

あぁ確かに使えないなら要らないだろう。周りにも迷惑だ。


だが使えないから切ると言うのは極論すぎるな。

チャンスを与える事も必要だ。


タケル。ちゃんと周りを良く見て学べ。

もし、、、それでも気付かないなら、お前は、、、それまでの器だ。』


言っている意味が分からない。

優秀な俺に対して学べとはーーー


こりゃ親父は耄碌したのかと憐みを感じた。俺の次期社長への道もそう遠くないな。


だから更に俺の威厳を高めなければと意気込んで仕事をしていたのだが、全然上手くいかず、、、そんな中マサルが出向として我が社に来てから更に歯車が噛み合わなくなった。


マサルは不出来な為、微妙なランクの大学へ進学した。

院に行く程の頭脳も無くそのまま就職。つまり俺と入社年が被っていた。

我が社にデブブサマサルが居たんじゃ格が下がるから自分に見合ったレベルの企業を受けろと俺は指示を出し、それを理解したマサルは我が社の系列会社でど田舎弱小企業に就職した。


だが何故か二年で大企業である我が社へと出向と言う形でやってきた。

大方地方で何も出来ずに親父に泣き付いて来たのだろうと悟る。

ふんっ、不出来でなよっちいデブが。



そう思って軽蔑して居たがーーー

そのマサルを無能共が持ち上げ出したんだ。

それを見て親父がとち狂って時期社長はマサルにすると言い出しはじめた。


足を引っ張られ続けた俺は可哀想な事にとうとうデブブサ弟の部下という扱いになってしまった。


あり得ない。まさに屈辱だ。

無能共の僻みでここまでコケにされるとは思わなかったぜ。

マサルを持ち上げて優秀な俺を蹴落とすとは。。無能どももそうだかちやほやされてらいい気になってるマサルもさらに許せん。


そんな時だ。マサルが取引き会社の受付嬢である金田女史に食事に誘われたと噂を聞いたのは。


金田と言えば超絶美女で難攻不落の受付嬢と噂されて居た。

そんな女がデブブサ根暗眼鏡野郎を食事に誘うと言う事は、、、ははぁ~、こりゃ金だな。


マサルは、腐っても社長子息だ。容姿を完全に無視すれば金蔓にもってこいって訳だ。

へっへっ、調子に乗っているからそんな女に引っかかるんだよ。

いい気味ーーーだが、あいつが綺麗どころを連れて歩くのは何か気に食わない。


そうか、なら俺が代わりに金田を貰ってやれば良いじゃ無いか!

マサルに自分の立場を判らせるに丁度良い。


早速マサルを捕まえて俺が真実を話してやる。



「おいっ、お前勘違いしてないか?

金田って言う女はお前の地位と金だけにしか興味無いんだぞ。お前は腐っても社長子息だからな。

まさかお前自身を気に入って声を掛けられたとか、馬鹿な事を思ってないよな。

自分の容姿はよく分かってんだろ?

馬鹿で童○なお前はそれでも行く気力が有るのか?


だ・か・ら、優しい兄である俺が代わりに会ってやるよ。

お前は近くで見てろ。

あの女の本性を俺が暴いてやるから。」



そう言ってやればマサルは



「あっ、えっ、そっそんなこと、、でも僕、、、。」



と気持ち悪くどもりながも数分経ってようやく震えながら小さくコクンと頷いた。



何、俺の貴重な時間使っちゃってるんだよ、このデブ。


だがこれで交渉成立だ。


早速着飾って、、、と思ったが辞めた。

ここはサプライズと行こうではないか。

マサルはデブだが身長だけは俺と同じだ。

だから敢えてデブブサマサル風の格好で登場して、驚かせてやろうじゃ無いか。

くくっ、きっと金田は突然デブブサからイケメンにフォームチェンジしたら度肝を抜くだろうな。

そしてキミは俺の虜さ⭐︎



姿見の鏡を見る。

ロングコートの下に何枚かタオルを詰め込んで着膨れた姿をしている。不本意な状態だがサプライズの為に我慢だ。

でも髪型をマサルの様な七三分けにするのはプライドが許さない。

毛先を遊ばせて、、と。

で最後に黒縁(伊達)メガネを掛けて完成。


体型だけはマサルっぽくは一応なったが、いやぁそれにしても我ながらイケメンオーラが隠し切れないから直ぐにバレてしまうかな?



「よし準備は完了だ。

おいっマサル。ちゃんとついて来て現実を見るんだ。さぁ行くぞ。」



そう俺が言えば、マサルは俺の後ろを十数メートル程空け下を向きトボトボと歩き出す。



歩き方までキモいな。

まぁいいだろう。どうせ金田の掌返しを見たらマサルはさっさと消えるだろうし。

それに、これをきっかけに会社にも居なくなるかも知れないじゃ無いか。

そう思うとニヤニヤが止まらない。



待ち合わせ場所は確か、あの店だよな?


まさかデカ盛りの店に女を誘うバカが居るとは、、、やはりデブブサマサルは女を得る資格は無い。

そしてそこにノコノコ現れる金田も相当なタマだな。

相手が誰であろうが『社長子息』の肩書きさえあればホイホイ食いつくんだろう。

まぁ、性格なんてどうでも良い。美人ってだけで十分だ。

マサルに思い知らせた後はやれるだけやったらポイっすりゃいいんだから。


おっと、あの後ろ姿は、、、へへっ居た居た。

チープな店の前に似つかわしく無い美女オーラをまとった女が立って居た。


ニヤけ顔をいつものイケメン顔に切り替える。

さぁ、彼女はどんな反応をしてくれるかな?


設定は『普段は偽りのブサ面を装って真実の愛を探していた』って感じかな。

キミは俺のお眼鏡にかなったぞ⭐︎的な??笑



「やぁお待たせ。ふふっ、僕の容姿の変わりように驚いたかい?

これか本当の僕さ。」



よし、いい感じに驚いてる。

さぁ金田よ、存分に惚れろ。


と思っていたがなんか様子がおかしい。

金田はこちらを睨みつけてきた。



「貴方マサルさんじゃないですよね?

背丈は一緒ですが、その身体付きは偽物。大方タオルとか巻いてるんでしょ!

それにマサルさんは誠実で優しい目をして居るのよ、そんな見下した様な嫌な目をしないわ!


マサルさんは何処?!貴方は誰なの!?」



なんだなんだ、この女。喜んだ素振りも見せずにこの俺を貶して来やがったぞ!!

なんで、、、あっ分かった、分かっちゃった。

突然イケメンが目の前に現れて動揺しちゃったんだな。

ったく仕方が無い子猫ちゃんだぜ⭐︎

今のは軽く流してあ・げ・る・さ。

俺は心が広いイケメンだからな。


俺は誰もが見惚れるであろう髪をかき上げる仕草をみせつけ金田にネタバレをしてやった。



「実は俺、マサルの兄でさ。

あのデブブサが女と番号交換したって聞いて興味湧いたんだわ。

そしたら取引先の金田嬢だって言うじゃん!!

こりゃ俺が行くしか無くね?って。

へへっ金田嬢も嬉しいっしょ?

あいつデブでキモくても社長子息って肩書きで近づいたんだろ?

安心しな、この次期社長(候補)であるイケメンな俺が代わりに相手してやるから。

君に忘れられない夜をあげよう⭐︎」



ふふふふっ、、ほら、俺は金目当てで近づいて来た君にも優しく出来る男だと分かっただろ?

さぁ、早速ホテルへ向かおうかな~。

と、金田の肩を抱いて歩き出そうとするが、彼女はその場から動こうとしなかった。


焦らして焦らして更に燃え上がるプランがお好みかぁ??

そう思って居ると彼女が物凄い勢いで俺の腕を振り解き両肩を掴んできた。


おいおい、情熱的だねぇ。我慢出来ないのかい?


だが彼女の口から出てきたのはまさかの『マサルが好き』と『イケメンは好きじゃ無い』って言葉だった。



うん、やっぱ俺イケメンだよなぁ。。。

っじゃなく!!!

えっ?俺振られたの??嘘だろ?!!

マサルが良いとか頭可笑しんじゃね?ってか優良物件の俺を要らないとか有りえねーーー



信じられず放心状態で居たらいつの間にかデカ盛りの店で大盛りチャレンジをする事になっていた。

席を立とうとしたが食えっ!と急かされつい箸を持って口を付けてしまった。


食い進めて行くうちに意識がはっきりし先程の事や入社してからの今までの事がぐるぐる回り出す。

一口食べる事にその色々な出来事を思い出して行くと、、、今まで感じた事の無い感情、、、『悔しさ』が込み上げてきた。


俺は優秀なのに、誰よりも凄い存在なのに、、、マサルなんてマサルなんてただのデブで、、、


でも、、、


仕事でマサルがみんなに持ち上げられていた。


親父もマサルを次期社長にすると言っていた。


恋愛でもマサルが良いと跳ね返された。



なんでなんでなんで!なんでマサルなんだよ!



なんで俺じゃないんだよ!



初めて悔し涙を流した。

鼻水も涙も垂れ流したまま、それでも食い続けた。。。



勿論全部食える訳もなくチャレンジ失敗。



だが店の奴らは



『うぉーー!!良くやったな!』



『お前、根性あるじゃ無いか!』



『トーシロだが見込みあるぞ、お前!!』



と俺の肩をバンバンと叩きながら健闘を讃えてくれた。




いつもなら底辺な奴らに何言われても嬉しくねーって思うのに、、、今日は、素直に嬉しかった。胸ん中が温かくなった。





翌日、親父に呼ばれて社長室へ向かう。

あぁ嫌な予感がする。

これまでの俺を振り返れば想像が付く。

多分俺は、、、切り捨てられるのだろう。


予想通りそこで言われたのは系列会社で弱小企業への出向と言う名の左遷だった。



「下積みをして考えを改めろ。」



ははっ、、、俺にはもう居場所が無いんだな。



その日のうちに会社の荷物をまとめ終える。家に帰える気も起きずフラフラ歩いて居ると、いつの間にか昨日のデカ盛り店に辿り着いた。

そのままなんとなく入ると大将に座れと促された。

ぼーっと座っていると目の前に大盛りのラーメンが置かれた。



「頼んでねーよ。」



「いいから食え。食えば元気になる。」



そう言われたから、、、食う。ーーうまい。

無心でガツガツ食ってると昨日のメンツが集まって来た。



「おっ、兄ちゃんやっぱいい食いっぷりだな!

見てて気持ちいいぜ。」



「鍛えれば道場破りいけんじゃねーか?」



「期待してっぞ。」



そんな風に代わる代わる声を掛けられた。



食ってると確かに元気になった。

でもそれだけじゃ無い。こんな俺を認めてくれる奴らが居るって事も今の俺には救いだったんだ。

だから、、、必然とこの店は俺の居場所となった。



系列会社に出向し新たな職場で働き出す。

もう、俺は親父にすら捨てられた存在。

プライドなんてもうとっくに粉々だ。

だから驕りなく実直に仕事をこなした。

偶にイラつく事だってあるが何とか抑えて頑張った。


ここで我慢してあの店で、俺の居場所で思う存分発散すれば(食えば)良いだけの事だから。



多分俺は今までで一番充実した毎日を送れているだろう。

あの時、あの店と出会えて本当に良かった。


どういう経緯で入ったかは覚えて居ないが、、、これだけは言いたい。



この店に出会わせてくれてありがとう!!と。



〈一年後〉




まぁそんな店に毎日通って食いまくっていれば、そりゃ太るわな。


姿見の鏡を見る。


そこにはパンパンに膨れた巨漢(120キロオーバー)が映っている。



ははっ、一年前までのマサルそっくりだ。

そのマサルは俺とは逆に痩せたそうだ。

噂では愛の力でダイエットを成功させたと言うマサル。その容姿は一年前の俺にそっくりだとか。


正直笑える。

馬鹿にして居た容姿も蓋を開けてみれば元は同じだったというんだから。


そして系列会社でコツコツ努力を重ねた今なら分かる。

マサルは優秀だったんだ。

物事を俯瞰して見つめる事も出来るし情報処理は早く先見の明も確かだった。



今思えば大学時代のレポートもマサルの力で教授の目に留まったのだとようやく気づいた。なんせ俺はただ教授の言葉をノートに写していただけだったのだから。

そんなもんまとめただけで教授の気なんて引ける訳ないわな。



そんな優秀なマサルは自分の能力を理解していなかった。

いや違う、俺のせいか。

俺が見下した態度でいたからアイツは劣等感が強くなり自己肯定が出来なかった。


だがそれを金田さんが気づかせたんだろうな。

金田さんと付き合う様になってからあいつはみるみる容姿も仕事も磨かれて行ったと風の噂で聞いた。今更だが良い彼女に出会えた事が本当に羨ましい。

心を見てくれる存在。

自己を高めてくれる愛おしい存在。


本当に羨ましい。。。


そういやマサルは役職持ちにまで出世したらしいし、そろそろ彼女と結婚かもなぁ。

と不意に立ち止まって空を見る。綺麗な青空が広がっている。

眩しいなと目を細めていると背中にドンっと衝撃がきた。



いきなり歩みを止めたから後ろを歩いて居た人がぶつかってしまったのかも知れない。


慌てて振り返り頭を下げ謝る。だが顔を上げた後俺は固まる事になる。



『大丈夫ですよ。こちらこそぶつかってしまいすいません。』



と告げてきたのは金田さんだった。


頭で考えていた人が突然目の前に現れれば当然混乱するだろう。


だが挙動不審な俺を彼女は気にする事も無く、久々の再会に無邪気に喜んでくれて居た。



「本当にお久しぶりですね。お元気でしたか?

一年前のあの時は失礼な言い回しをしてすみませんでした。良い大人だったのに、、恥ずかしい。

それにしてもタケルさん、すっかり良い顔に成られて、、、何か心のわだかまりが吹っ切れたって感じで。

ーー今、凄く素敵だと思います。」



そう笑顔で話す彼女が眩しい。

ーーーあの時、嫌な思いをさせた男にこんな対応をするなんて、、、しかも今じゃマサルを笑えないブサイクな巨漢だぜ?

こんな女性も居るんだな、と衝撃を受けた。


だって容姿が変わった(デブった)途端今まですり寄って来ていた女性達はあっさりばっさり掌返しだったんだぜ?

容姿だけだった俺はきっと今後誰にも愛されないんだろうな、と俺はこの一年で悟りを開いていた。


ーーーだがそうじゃない人も居たんだ。

俺の容姿が変わっても中身を見てくれ、素敵だと言ってくれる人も居る。


なるほど、マサルが惚れたのも納得だ。

容姿だけじゃ無い。彼女はなんて素敵な心の持ち主なんだ。


だが今更そう気付いた所で俺には好きになる資格も、チャンスも皆無だろう。


ならーーー


将来彼女の義理の兄として相応しい自分になる為に努力しようじゃないか。

そう心に決め、金田さんに告げる。



「俺、いや自分は貴女の義理の兄として相応しい心と容姿を手にする為に努力しようと思います。

だから、それが叶った暁には「お兄さん」と呼んで居ただければ嬉しいです。」



そのまま頭を下げその場を後にする。



後ろから声が聞こえる。



「ーーーー。ーーーー。

今でも十分素敵ですよ!

ーーでも、タケルさんが頑張ろうと努力するのなら私は応援しています。」



前半部分は聞き取れなかったが彼女の優しい言葉に嬉しさが込み上げる。

あぁやっぱり良いなぁ、素敵だなぁ、金田さん。



振り返り彼女に向かって大きく手を振り、その後会社に向かってズンズン歩いて行く。

その足取りは軽い。


さぁ、これから頑張るぞ!!



こうして俺は仕事でもプライベートでも努力を続け、気が付けば系列会社で大きな仕事を任される様になり、容姿は一年前より磨きが掛かった。

これでようやく自信を持って彼女の、いや弟夫婦の前に出られる。

そう思っていた。



ーーーだが、、、



金田さんは義妹にならなかった。


何故ならマサルと別れて居たからだ。

しかも、俺が偶然彼女と会った時には既に破局して居たらしい。

訳が分からない。

だからマサルを問い詰めた。

するとマサルは事の真相を語り出す。



「僕は、彼女にとって『庇護』?の対象だったみたい。

守る必要性が無くなったから、、、多分去って行ったんだと思う。だから僕はちゃんと強く、逞しくなったんだと一応認められたって事ではあるんだけど、、、。

ーーー僕に男としての魅力があれば彼女は離れて行かなかったと思うんだ。

まぁ、つまりは男を磨き切れなかった僕が未熟だったって事かな?

でも、まだ諦めて居ないよ。

いつかまた、自分を認められる自分になった暁には改めて彼女にプロポーズするつもりだから。」



そう語ったマサルの目は力強かった。



俺も負けて居られないなと気合いを入れる。


金田さんはまだ誰のものでは無い。

なら俺にだってチャンスはあるはずだ。

マサルにだって負けない。

死に物狂いで彼女に相応しい男になってみせる!





ある女性社員目線





「タケルさん、貴方が好きです。付き合って下さい!」




「ごめんね。俺、好きな人が居るんだ。君は可愛くて周りに気を配れるとても魅力的な人だと分かっては居るんだけど、、、ごめんなさい。」




「ううっ、うっ。。。」




「だからやめときなって言ったのに。

タケルさんはずっと思っている人が居るから無理だって。」




「っでもっ!この気持ちっ、どうしても伝えたかったんだもん!」




「分からなくは無いよ。

彼、本当に素敵だもんね。仕事も出来て

、尚且つ周りへの気配りも出来るなんて理想の存在だもんね。」



「うっ、すんっすんっ。彼に思われている人が羨ましい。

どんな人なんだろ。」



「きっと彼以上に優しい素敵な人なんじゃ無い?

ってか、そうじゃないと納得いかないでしょ?」





〈その頃、某会社の受付にて〉




「くしゅんっ。

うう~、風邪かな?

はぁ~、、。それにしても最近、理想男性現れないなぁ~。

容姿が良ければ(ぽっちゃりなら)誰でも良いんだけどなぁ。

やっぱり男は容姿だよね~。」




私はどこにでも居るような普通のOL金田美鈴26歳独女。


私は理想の男性を日夜探している。

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