第37話 本当の初体験

「んはぁっ!! あっ……あぁ!! イクッ!!!」


 制服を脱ぎ去り全裸になった丹生うにゅうさん……水沢るりは自分の指でアソコをいじりクチュクチュと水音を立てながら絶頂を迎えていた。

 楽しそうな笑い声を彷彿とさせる甲高い喘ぎ声は緊張で大人しくなっていた相棒を元気にさせるには十分過ぎるくらい刺激的だ。


 小さめなサイズを用意されたスラックスの股間部分はパンパンに膨れ上がっている。


「では小亀こがめ様。あのドアから教室に入ってください。あと全裸のるりと好きなように絡んでください。避妊具の着用はごゆっくり。編集で違和感のないようにしますから」


「……はいっ!」


 うちで撮影した時よりもたくさんの大人が僕に注目している。カメラアングルは気にしなくて良いと言われていても、これだけ多くの視線があれば気になってしまう。


 全てをもなさんに任せていたあの時とは違う。彼氏としてリードしなければならない。今まで見てきたもなさんの映像を頭の中で再生する。


男優さんはもなさんとどんな風に接していた? 僕が参考にできるのはAVしかない。現実のエッチとAVは違う。だけどこれは僕らの初体験であり、AVの撮影だ。


 普通の初体験じゃない。男優さんの動きにこそヒントがある。


「るりっ!?」


 学校と同じ引き戸を開けると全裸の丹生うにゅうさんが息を荒くしながらとろんとした目で横になっていた。

 カメラに囲まれる中でも己の職務を全うし、指示通りにきちんと果てた。


 撮影は次の段階に進んでいる。彼女の頑張りを無駄にするわけにはいかない。これまでの経緯はずっと見ていたけど、まるで初めてこの光景を目にしたようなオーバーリアクションを取ってみる。


「教室で何を」


「きゃはは。一人エッチ。ねえ、今度は一緒に……しよ?」


 そう言って丹生うにゅうさんは僕のベルトを外し、パンツごとスラックスを下ろした。

 すでに臨戦態勢に入っている相棒が勢いよく飛び出る。


「私のエッチな姿を見て興奮してるんだ?」


「そりゃ、だって……」


 丹生うにゅうさんは相棒を優しく包み込む。初めて握る男の象徴に驚いてるのか目を見開いたまま固まってしまう。


「手、動かしてみて」


「こ、こう?」


「あっ……うん。そう」


 もなさんの作品を見ているだけあって手の動かし方がうまい。速すぎず遅すぎず、焦らすような手尽きが相棒を充血させた。


「私のも、触って」


 完全に丹生うにゅうさんのペースだ。言われるがまま左手で大事な部分に触れる。一度果てただけあってすでにぐしょぐしょに濡れていた。

 ぴったりと閉じた肉を指で押し開いて、ゆっくりと人差し指を挿入する。


「ひゃっ! んっ」


「痛い?」


 僕の問い掛けに丹生うにゅうさんは真っ赤になった顔を横に振った。


 クチュクチュクチュクチュ


 いやらしい水音が教室の中に響き渡る。普段使っている教室ではないのに、黒板や机があるだけで学校だと錯覚させる。

 蟹谷先生との行為が脳裏をよぎった。してはいけない場所での性行為から生まれる背徳感は快楽へと変換される。


「ん……はぁ」


 どちらともなく唇を求め、獣のように息を荒げながら下を絡ませ唾液を交換した。


「ねぇ、しよ?」


「いいの?」


 こくんと小さく頷いた。お互いに体の準備は整っている。心の準備は……撮影が始まった段階でできていた。

 もう後戻りはできない。彼女の初体験を映像に残す時が来た。


 あとで編集すると言っていたので流れを無視して避妊具を装着する。ふと深澤さんと視線が合うと目配せで問題ないと言ってくれたみたいで、安心して彼女と二人の空間に戻った。


「力、抜いて」


 このアドバイスが適切かどうかは僕にはわからない。だけど、多くの女優さんのデビュー作品で男優さんがささやいていた言葉だ。それにならって僕も彼女に同じ言葉を掛ける。


 ギンギンに固くなった相棒が丹生うにゅうさんに押し返される。しっかり濡れているのに、拒絶されているわけではないのに物理的な障壁みたいなものがたしかに存在していた。


「あぁ……すごい。ちょっとずつ、熱いのが」


「わかるの?」


「うん。いいよ。思いっきり、入れて。一つになりたい」


 もしこれが撮影ではなく普通の初体験ならもう少しゆっくりと二人のペースで進められた。

 仕事である以上はあまり悠長なことは言っていられない。いくら初々しさを求められていても、いつまでも進展がなければ見ている方は飽きてしまう。


「あ゛あ゛あ゛あ゛! んああああっ!!!」


「平気? ゆっくり動くから」


 肩で息をしながら小さく頷いたのを合図に、抜け落ちないように慎重に腰を動かす。

 前後する腰の動きに合わせるように丹生うにゅうさんは甲高く喘ぐ。特に腰を前に突き出す時に良いところに当たっているのか体をぴくっとさせていた。


「ん……んま」


 キスをしながら右手で胸を触り、左手は背中をさする。

 ギュギュウと相棒を締め付けられて僕も限界が見えてきていた。


 だんだんと早くなる腰の動きを自分で制御できない。

 丹生うにゅうさんの喘ぎ声もだんだん大きくなっていき、それが耳からの刺激となりボルテージはぐんぐん上がっていく。


「るり……もうっ!」


「うん。一緒に、ん゛……ああああ!!!」


 びくびくと震える体を抱きしめながら唇を重ねた。ほぼ全身が彼女と重ねっている。本当に彼女と一つになった。


 蟹谷先生とエッチしたあとはすぐに帰宅の準備ができるのに、同じ一回の射精でも濃度が全然違うのがわかる。

 もなさんと初体験をした時のような幸福感に包まれ、深澤さんのオッケーの声が届いてもしばらく抱き合っていた。


 丹生うにゅうさんにとってはもちろん、僕にとってもこれが本当の初体験と言えるかもしれない。誰かにリードされるのではなく、クラスメイトとの初めてのエッチは、一生忘れられない二つ目の思い出になった。

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