第27話 生徒指導2

「ぷはぁ!」


 よだれがお互いの口の架け橋のように糸を引いている。もなさんともこんなに激しいキスはしなかった。愛情を確認するのではなく、性欲を満たすためのキス。そんな印象を受けた。


「あ、録画するの忘れちゃった」


「待ってください! どうしたんですか急に」


「わたしね、教師になって生徒とセックスするのが夢だったの。でも、わたしの身勝手で童貞を奪うのは可哀想だし、そもそも生徒に手を出したらダメだし、ずっとモヤモヤしてたんだ」


 言いながら先生はブラウスのボタンを1つずつ外していく。一部では噂になっていたけど、布で押さえつけられなくなった胸はそのボリュームを存分に発揮した。

 蟹谷先生は着やせするタイプ。それを見抜いた男子の観察力は半端ない。


小亀こがめくんは成人してる上に、AVで童貞を卒業してる。これほどぴったりな生徒は他にいないもの。先生、運命感じちゃった」


「まっ」


 待ってと言うのを遮るように先生は僕の口を塞いだ。舌で口の中をまさぐられて、自分の唾液と先生の唾液が混ざり合う。


 思い切り突飛ばせば簡単に抵抗できるはずなのに、生徒と教師というまるでAVみたいなシチュエーションの快楽に負けて本気で抗うことができない。


 それどころか先生の肩を掴んで自らが体を求めているような構図になっていた。


小亀こがめくんもしたいんだ?」


「ダメですって。今朝も生徒と性行為して逮捕された教師がいるってニュースでやってましたよ」


「うん。でも、小亀こがめくんが警察に相談したら、そこから芋づる式にAVのことがバレちゃったりして」


「あっ」


 正直な相棒にスラックスの上から触れられて嬌声が漏れた。指で先っぽをこすられた分だけ心拍数が上がっていく。

 理性で押さえつけていた本能が爆発寸前になるのを自覚した。


「女教師モノの学生って見るからにおじさんでしょ? しかもセックスに慣れたプロのおじさん。童貞を卒業してるけどまだまだ初心な小亀こがめくんみたいな子、わたし大好き」


スラックスのチャックを勢いよく下ろされると窮屈にしていた相棒が勢いよく飛び出した。言い訳ができないほどに臨戦態勢になった相棒を見た先生は恍惚な笑みを浮かべる。


 そのいやらしい視線はもなさんに似た雰囲気もあり、あの日のことを思い出して血管がさらに浮き上がってしまった。


「こういうシチュエーションの時は服を脱いだらダメだと思うの。小亀こがめくんは制服。わたしはいかにも女教師らしいタイトスカート。動くにはちょっと窮屈だけど、お互いの役割に縛られてるのがより背徳感を出させると思わない?」


「一理あるとは思います。思いますけど、それってAVの話じゃないですか。誰かに見つかったらマズいですって」


「大丈夫。こんな時間に資料室に来る先生なんていないし鍵も掛けてある。今撮影してる動画をわたしが流出したり、小亀こがめくんが誰かに相談しない限りは絶対にバレないわ」


 先生の細い指が相棒を包み込み優しく上下に動く。今にも爆発しそうな欲望を必死に堪えると息が荒くなり、そんな僕の姿に先生もまた興奮を覚えているようだった。


「ゴムは付けるから安心して。さすがに妊娠はマズいもの。男の子って生の方が好きなイメージがあるんだけど、実際どう?」


「わかりません。経験が少ないので」


 ゴムなしの方が粘膜と粘膜が直接触れ合うから恋人同士なら密着度の高さで興奮を覚えるかもしれない。

 実際、避妊具なしの性行為は子供を作るための行為だ。


 僕と先生は恋人ではないし、先生に襲われているくらいだ。

 妊娠が発覚すれば相手は誰だという話になるし、その後の人生も変わってくる。


 一時の快楽に身を任せた結果のリスクがあまりにも大きすぎる。

 それを考えると生での性行為はいろいろ考えてしまって萎えるかもしれない。


 もなさんと生でできたのは、相手がプロで、撮影している周りの人達もプロだったから。その後の対策もきちんと講じていて、僕はプロに身を任せて欲望を全て吐き出していいという安心感と幸福感が全てだった。


「そっか。小亀こがめくんはAVの時は生だったもんね。ゴムありが初めてとか、なんだかいろいろ順番がめちゃくちゃだ」


 ぬるっとしたものにすっぽりと包まれた相棒は今までに覚えたことのない違和感がありつつも、その熱が冷めることはなかった。


「ゴムありのセックスって、要は子作りじゃない、お互いの性欲を満たすためのものなんだよ。こっちの方がむしろ興奮しない?」


 先生はタイトスカートの中の下着を脱ぎながら問い掛けた。黒いレースの透け感のある下着に目を奪われて何も思考することができない。

 たぶん、何を言っても先生はもう止まらない。証拠映像が流出したとしてもおそらく罰せられるのは先生だけ。


 僕はあくまでも被害者という立場になる。今朝のニュースでもそうだった。教師と生徒というのはそういう関係なんだ。


「これなら入れやすい?」


 ワイ字開脚をするように左足を持ち上げると、生々しい性器が露わになった。もなさんよりも毛が濃くて、ひくひくと貪欲に動いている。


「あとは小亀こがめくんのしたいようにして。このまま帰りたいならそれでいい。でも、もしわたしとセックスしてくれるなら」


「……っ!」


 先生の左足を胸に抱いて、絶対に閉じさせないと言わんばかりにしっかりと固定した。ゴム越しでも先生の熱が伝わってくる。

 今まで一度も意識したことのない相手との行為は、ずっと憧れてきたもなさんのものとは全然違った。


 自分の手でこするか、先生の体でこするか。性欲を処理するための行為。

 さっき先生が言った通りだ。ただただ気持ち良い。


 愛がなくてもエッチできてしまう。

 頭ではわかっていても、どこかで否定したかった事実を身を以て知ってしまった。


「あ……んっ……んあっ!」


 先生は喉の奥から漏らすようにかすかに喘いだ。

 絶叫するようなもなさんの喘ぎ声とは大違いで、もしかしてあまり気持ちよくなってないんじゃないかと心配になる。


 ただ、僕の心配とは裏腹に先生は僕を強く抱きしめて、息はどんどん荒くなっていく。


 AV女優のもなさんは演技も少し入っているのかもしれない。素人の女性と初めて交わったことで気付けた。


 もしチャンスがあるなら、本気でもなさんを気持ちよくさせて、演技抜きで本気喘いでもらいたい。

 その想いが芽生えると同時、自然と腰の動きが早くなった。


「ああ、先生っ!」


 ゴム越しに繋がってほんの少し愛情が湧いたのか、果てる瞬間に僕は先生の口に舌を入れていた。

 舌と舌は生で絡み合う。もしかしたらゴム越しの性器の代わりに直接的な触れ合いを求めたのかもしれない。


 どくどくと自分の熱いものがゴムの中に溜まり、頭と体が冷静さを取り戻すと股間の不快感に耐えられず先生から離れた。


「……やってしまった」


 この数分の盛り上がりはなんだったのかと疑問を抱いてしまう。おとなしく逃げていれば新たな問題を抱えずに済んだのに。


小亀こがめくんとわたしは共犯者だよ。これからも卒業までセックスしようね」


 耳元でささやかれた悪魔的な誘惑に、冷静になったばかりの股間が反応してしまった。むくむくと大きくなっていくの悟られないように急いでパンツとスラックスを履く。


「生徒に犯されるわたし。ああ、最高」


 幸いにも先生は自分の世界に入っていて再度の勃起には気付かれずに済んだ。

 だけど、AV出演を父さんに隠すために先生の言いなりになるしかない。


 相手の秘密を握った上で、その秘密を有効利用する力を持つ。本物の大人というものを見せつけれてしまった。

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