第14話 我慢大会2
「まさかお風呂も覗かないなんて。
「一応大事なお客様だしね。ハンバーグも作ってくれたし。そういう
「あ、
「そ、それとこれとは話が別だよ。やっぱり
すでに一緒にAV鑑賞をしているから部屋を探索されて恥ずかしいものは何もない。そういう点においては女子が泊まることへのハードルが低くなっている。
ただ、クラスメートの女子が自分のTシャツを着ているのは初めての経験だ。僕と
「
「あ、いや、そこはお客様優先んってことで。ほら、このソファ、背もたれを倒すとベッドに」
「ダメダメ。ちゃんといつものベッドで寝ないと」
ソファの背もたれを倒し掛けたところで
「父さんのでもいいなら布団を敷けるけど……」
「ううん。そんな手間は掛けさせないよ」
「え……まさか床に?」
「きゃはは。さすがにそれはないよ。って、
「うっ……」
ソファでも布団でも床でもなければ残された選択肢は一つ。恋人でもないし、それどころかまともに会話したのは今日が初めてくらいのクラスメート。
そんな
「彼女にする気がないなら同じベッドで寝ても何もしないよね? 家主をソファで寝かせるなんて申し訳ないもん」
「いやいや! 彼女にする気もない人と一緒に寝るのも失礼でしょ! なんかこう、超えちゃいけない一線っていうかさ」
「同じベッドの中で寝るだけだよ? お互いに干渉しないように、寝返りしたら体が触れちゃうかもしれないけど、あんまり気にせず朝を待つだけ。
「も……もちろん。もなさんの大切な娘さんを傷付けるわけにはいかない」
「私はママのことが大好きな
「わかったよ。絶対何も起きないし、既成事実なんて作れないから」
口では強がってはみたものの股間はパンパンに膨れ上がっていた。
ほんのちょっと前傾姿勢になることでそのズボンの膨らみを誤魔化してはいるけど
さっきからチラチラと視線を下に向けてニヤニヤしているからだ。
いくらAVをたくさん見ていると言っても処女は処女。もなさんに全て任せきりだったけど一応僕は経験済みだ。
百聞は一見に如かず。いざとなれば僕の方が精神的に余裕があるしマウントを取れるはずだ。
「ねえねえ、ママとエッチした例のベッド早く見せてよ」
「例のプールみたいに言わないで。恥ずかしい」
「そう言えばママ、例のプールは使ったことないんだよ」
「へー、確かに言われてみればプールモノはなかったかも」
海で素人をナンパしてそのテクニックに10分耐えられたら生でエッチできるという企画モノはあったから水着NGというわけではないはず。
そもそも全裸を晒してるんだから服装でNGがあるとも考えにくい。
「実はママ、カナヅチなんだ。泳げないからプールでエッチするのはNGなんだって。何年もAV出てるのにそんな理由。きゃはは」
「マジか。それは知らなかった」
「ちなみに私はスイミングスクールに通ってたからちゃんと泳げるよ。ママが溺れたら助けるんだ。ま、溺れないように常に一緒に遊んでくれる旦那さんがいたら理想的なんだけど」
チラっと僕に目配せして何かを訴える
……ガバガバすぎるだろ。カナヅチだから僕が守ってあげなきゃ! とならなくはない。だけど結婚となると責任が重すぎる。泳ぎを教えるくらいが関の山だ。
「こうやって
「し、しないから!」
「きゃはは。
「それとこれとは話が別なんだよ。企画は外れたらそれで終わりだけど、
「もしかして私のこと好きになりかけてる? ママとの親子丼狙ってる感じ?」
「親子丼なんてフィクションだろ。リアルでやったらヤバいって」
「きゃはは。そんなフィクションの世界に
「夫婦って別にそういうことをするだけの相手じゃないでしょ。もっとこう、他のことでも幸せを感じたい」
「うんうん。娘から見て
「ははは。
「だってママ、エッチ経験は豊富でも恋愛経験はゼロみたいなんだもん」
「それを
「だね。きゃはは」
こんな風にもなさんの話題を中心に話をする分にはふつうの女友達みたいですごく楽しい。一瞬だけこれから同じ屋根の下で寝ることを忘れられたくらいだ。
でも、いざ自分の部屋の前に来ると緊張で心臓が飛び出しそうになる。
もなさんを自室に招いたあの日の記憶とぬくもりが蘇って、いろいろなドキドキが全身に血液を巡らせる。
「わあ! 例のベッドだ」
テーマパークにでも入場したかのようなテンションで
映像で見たのをマネしたからなのか、それとも血筋なのか、もなさんと同じ場所に座っている。
「私、なんどもママのAVを見てるけど、実際にエッチした場所に来たのは初めて。聖地巡礼的な? きゃはは」
「喜んでもらえて何よりだよ」
「すごいすごい。ここでママと
「う、
「え~? 今更? ブルーレイになったりサイトで配信もされてるのに?」
「それとこれとは話は別だって。
「きゃはは。照れてる
ベッドのスプリングを利用して
女の子は本当に気持ち良い時は足の指が開いちゃうんだよ。
ハーフパンツから伸びる脚の先では可愛らしい指が手持ち無沙汰……という表現はおかしいかもしれないけど、所在なさげにグーパーを繰り返している。
もし
「ふわぁ。
「ああ、うん。部活もあったから」
「だよね。1,2年の時にちゃんと部活できなかったら絶対歴代の先輩より体力ないよね私達」
「本当に。しかも18歳で成人させられるし」
「そのおかげで
「私は電気消す派だけど
「僕も全部消す派。明るいと目が覚めちゃう」
「ママも一緒。よかったね。私達、同じ屋根の下で暮らしてもうまくやっていけそう」
「…………」
カーテンをしっかり閉じているので外からの光も入らない。
何も知らなければこの暗闇の中で戸惑うだろう。スイッチからベッドまでは感覚で辿り着く。
もう何年も繰り返したルーティーンだ。何かにつまずいたりすることない。だけど今日は大きな違いがある。
ベッドの上にいる
6月ともなれば僕はタオルケット1枚で十分なんだけど
「おやすみ
「あ、うん」
一人暮らし状態の僕にとって寝る前に言葉を交わすのがあまりにも久しぶり過ぎてきちんと返事ができなかった。
これは夢じゃない。左隣から普段は感じることのない体温がじんわりと伝わってくる。一つのベッドに二人で寝るとこんなにも暑くなるものなのかと気づきを得た。
あるいは僕が勝手に熱くなっているだけなのかもしれない。
その熱は発散方法を間違えれば大変なことになる。ゆっくりと深呼吸をして落ち着けようと思っても、隣からふんわりと漂う甘い香りが僕をさらに熱くした。
ガチガチに硬くなった相棒に鎮まれと念を送っても一切の手応えを感じられない。
朝まで我慢を続ける長い夜。本当の戦いはここから始まる。
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