妹の友達が結婚したいと俺に迫ってくるけど、妹がそれを全力で阻止してる。〜「まさかお前ら、俺に彼女がいるって知らないのか?」「「へ?」」〜

月並瑠花

カミングアウト…って別に隠してたわけじゃないが

「ねぇー! お兄さん、私と結婚しましょう! 十六歳なので法律的にはOKです」

「沙羅ったらまた言ってんの? お兄ちゃんは永遠に誰とも結婚しないの」


 とある日曜日。

 リビングには妹の友達、沙羅が遊びに来ていた。

 妹の琴葉とは中学生から友達で、数年前からこうしてほぼ毎週遊びに来ている。


 最初は人見知りだった沙羅も三年近く会っていたらさすがに慣れたのか、今はこうして俺に冗談交じりのラブコールを送ってくるような始末。


「いつも飽きないな、お前らー」


 今日も今日とて、何が楽しいのか二人で人生ゲームをしている。

 人数合わせに混ざってやろうと思ったことは昔にあったが、二人の独自ルールを取り入れすぎて理解できなかったから今は傍観者を決め込んでいる。


「ほら、見てくださいよ。私とお兄さんの子供が二人乗ってますよ!」

「沙羅! バカ兄貴を興奮させるこというな! 色仕掛けをしようってんなら、私が相手だぞ!」


「何言ってんだかこいつらは…」


 いつもの会話を呆れ半分で聞き流す。

 バレンタインの時は毎年、琴葉が沙羅の作ったチョコを家のどこかへ隠していたな。

 懐かしい。今年は琴葉にバレないようにこっそり渡してきたが。


「あ、そう言えば今日うちに俺の彼女が遊びに来るからな。リビングにいるのはいいが、あまり騒がしくするなよ〜」


「「え?」」


 その瞬間、リビングの時が止まったかのような静寂に包まれた。

 さっきまで盛り上がっていた二人の手が止まる。


「お兄さん、今彼女が来るって言いました…?」

「え?お兄ちゃん、彼女いるの…?」


「まさかお前ら、俺に彼女がいるって知らないのか?」


「「へ?」」


 あれ、言ってなかったっけ。

 まぁ過去の俺が言う必要はないと判断したのだろう。別に隠し事していた訳でもないし、焦る必要は無い。


「お前どうした? もしあれだったら外に出掛けてくるけど」


「お兄さん、浮気ですか…聞いてないですよ!」

「ほんとに聞いてない! 沙羅ならまだしも、他の女がいたなんて!」


 二人が真剣な眼差しでこちらへと向き直る。さっきまでの冗談はどこへやら。


「いや待て。そもそも沙羅は冗談だろ? てか、妹に彼女がいるなんてわざわざ言う兄は世界を探してもいないだろ」

「優しさが取り柄のお兄ちゃんに彼女が? そんな人いるわけないでしょ!?」

「ディスってんのか褒めてんのかどっちなんだよ。てか優しさだけで十分だろ」


 怒り気味に話す琴葉の隣で、沙羅は大声を上げて泣き始めてしまう。

 こんな状況になるとは、さすがに予想してなかった。


「私は本当にお兄さんのことを愛してるんですぅ! 彼女がいるなんて聞いてないですよぉ!」

「ま、まじで? それはごめ、ん…なのか? でもほら、別に俺に彼女がいようと今の関係が崩れるわけじゃないし、な?」

「そうですけど、嫌ですぅ! 私の方がお兄さんを愛してるんですぅ!」


 どうすればいいんだろうか。

 こんな泣かれるほど女の子から好かれたことは無い。

 いや、好かれていたのに数年間気付かなかっただけか。


 ラブコメのラノベはよく読む方だが、今はそのラノベ主人公の鈍感さが痛いほどわかってしまう。


 まさか俺が、というこの気持ち。実際妹の言う通り、強いて上げれる長所は優しさのみ。

 なんか、自分で言うのは恥ずかしいな…てか辛いな…


「ま、まぁとにかく。別に沙羅ちゃんとは今まで通り話すし、別に家に遊びに来てくれたらいいから」


「審判…ジャッジメント! 私がお兄ちゃんの彼女が、彼女に相応しいかどうかを審判します!!」

「私も裁判官しますっ!!」


 そして、数十分後に彼女はやってきた。

 部屋には俺と彼女。

 そして謎に妹とその友達が、こちらを見下ろすように俺のベッドに腰掛けている。


「ねぇ、はるくん。これは一体どういう状況なの?」

「話せば長くなるんだけどさ…」


 なるほど、これがラブコメでいう『修羅場』というやつか……。

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妹の友達が結婚したいと俺に迫ってくるけど、妹がそれを全力で阻止してる。〜「まさかお前ら、俺に彼女がいるって知らないのか?」「「へ?」」〜 月並瑠花 @arukaruka

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