2nd Story 午后(ごご)の授業
「異能者は人間が必ず持っている超能力を自覚して発現できる人のことを指します。物語に登場する魔法は超能力を応用した結果とも言われ、世代を追うごとに一人ごとの超能力数は増加していると言われています」
[何よ、この学校。先生にはうそつきだけじゃない!]
時は遡ること、午前八時三五分。ショートホームルーム。
「婚約者にも異能が発現した」と銘打って
良くあることなので、割とすんなり自己紹介なども終わったが、午前中の授業がすべて終わるや否や、夏鈴を目指してクラスメートが集まったと思った刹那、夏鈴が僕の隣にいた。
[ワープを使ったのか?]
[いいじゃないの? 私、囲まれたくないのよ。あと、あそこには変身させた下僕を置いてきたから、問題ないわよ]
「よっ。
「黙れ、悪友」
「ポカッ」と聞こえそうな感じで僕は悪友こと
「幸矢、何しやがる!」
「耳貸せや!」
【今は下僕を向こうに置いて避難してるんだ。見なかったことにしてくれ】
信条なら信頼できるし、しっかりと話せば分かってくれるだろうから軽く事情を伝えた。
【そういうことか。了解だ! ところで俺ら三人、屋上で飯食わないか?】
この場で最適とも言えるような判断を即座に下した。
まぁ、「腹が減っては戦はできぬ」とも言うし食事は重要だ。
[こいつも一緒だけど飯を食おうぜ]
[良いわね。私に不可視を掛けてくれるかしら?]
[了解]
「屋上で食うか」
「おう。夏鈴を適当なタイミングで連れ出してこいよ」
「ああ」
飯になった。
弁当は二人分をそれぞれストレージに入れているのでそのまま行くだけで良かった。
「
彼女に不可視の魔術を掛けた後、二人で屋上へと向かった。
……
不可視が解けることなく屋上に到着して、特に何事もなく三人で昼食を取ろうと弁当の包みに手を掛けたその時、〔BANG!!〕と扉の方から聞こえ、何事と思い三人が異能や魔術での応戦準備をした。
「ふえぇ? 何で戦う準備してるんですかぁ?」
敵にしては随分とかわいらしい声だなと思うや否や、まるで小動物のような女子生徒がこちらに向かってきた。
信条が敵対をやめるので、こちらも同様に敵対をやめる。
「僕を含めて異能者は近くから大きな物音がすると敵に備える様に出来てるからな」
「え? そうなんですかぁ?」
「んなわけねー。(ポカッ)だから、一々ぶつな」
「信条くんも空気を読んでくださいよぅ」
「わかったよ。
「分かってくれるなら良いのですぅ」
何だろう。このなんとも言えない小動物感。マジでかわいい
「夏鈴があなたの洗脳を解いてあげましょうか?」
「……僕のモノローグを読まないでくれるかな?」
「いいじゃない。減るもんでもないし」
このやりとりに気がついたのか麗衣はこちらを向いてから「幸矢さんは誰かに洗脳されたんですかぁ?」と言った。
当然異常なまでの攻撃力だったが、夏鈴が居るので耐え抜いた。
ところが当の夏鈴は僕の気持ちを知ってか知らずか、麗衣の頰をツンツンしていた。
「信条」
「なんだ幸矢」
「女子二人の絡みって良いよね」
「分かるぜその気持ち」
僕たちは向こうに悟られないように幸せなこの状況を満喫していた。
その後しっかりと弁当を食べたあと午後の授業になった。
この学園は午後にある五限目から七限目までは毎回異能の授業である。
高橋先生や二宮先生は魔術の存在を知っているが、他の教師は超常的な力は異能しか存在しないと思っているために、僕たちからすると非常に面倒臭い。
「異能者は人間が必ず持っている超能力を自覚して発現できる人のことを指します。物語に登場する魔法は超能力を応用した結果とも言われ、世代を追うごとに一人ごとの超能力数は増加していると言われています」
[何よ、この学校。先生にはうそつきだけじゃない!]
[高橋先生や二宮先生は魔術を知ってるけど、他の先生は異能絶対な人たちだから。と言うか、これがこの学園の普通]
[そう。獣人共通語って人間からするとノイズのように聞こえるのよね?]
[そうだね。獣人共通語で大声を出しても気付かないから、私語を慎めとかは言われないはずだよ]
[良かったわ]
(これで彼を言葉だけで落とせるわね)
[僕は既にオチてるけどね]
[私の心を読まないでよ]
[僕は仕返ししただけだからね]
そうこう話している内に先生が「羽根渕くん。あなたの異能を見せなさい」と言うものですから、僕は前に行って[
もはや流れ作業過ぎて人形の方を見ていなかった。
「それでは椎奈さん。あなたもやってみてください」
[何すれば良いの?]
[こっちにワープしてからあの人形を爆破して。僕は結界を張る]
[了解よ。見た目では私がテレポートにエクスプロージョン、バリアと多彩に見せるつもりなのかしら]
[ああ。クラスでの成績も跳ね上がるだろうし]
獣人共通語で軽く相談した後、彼女は立ち上がり歩き出すかと思われた刹那、教壇前にいた。
テレポーテーションだと助走しないと駄目なので異常である。
そして周りが驚いている中、彼女が人形に手を向けたら今度は人形は爆発した。
しかしいつまでたっても爆風はおろか、空振すら起こらない。
違和感を覚えた生徒や教師が爆発した人形を見ると人形は青色に透けた箱の中に閉じ込められていた。
しかも爆破したのに人形は無傷で。いや前からあった傷すらなくなって……それだけでなく、独りでに動き出した。
[僕が回復したけども、何で使役までしてんだよ]
[いつもの癖ね]
「あなたがご主人ですか?」
「確かに使役したのは私だけど、ご主人様は隣の彼よ」
「よ、よろしく?」
「よろしくなのです!」
「使役したのは良いけれど、自己紹介してもらいたいわ」
さすがに人形の傷が無くなって歩き出して、話しかけてきて主従契約まで結んだのだから、自己紹介していただきたいと思うのは必然だろう……魔術師ならば。
「私は夏鈴さまに生み出された魔法生命体で
[あ。魔法生命体って言ったな]
[やばいわね]
[もしかして言ってはいけませんでしたか?]
[異能者だらけの学園だからな]
[なるほどなのです。でもこの学園にはお二方を除いても五〇人ぐらいの獣人の気配があるのです。それに、人族以外だと二〇〇人程度は居ると思うのです]
僕らの話が悟られたのか、それとも魔法生命体というフレーズを聴かれたのか、先生は教科書などをまとめると「まさか高橋先生や二宮先生の言うことが本当だとは……魔法科の設立を議論してくるので、本日の授業はここで終わりです。ショートホームルームはないので、そのまま帰っても結構です。では解散」と言うだけ言って、先生はロケットのように行ってしまった。
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