第023話

 屋敷の大広間にはここ最近の俺、私達戦えるじゃん、強いじゃんという高まっていた気持ちが嘘のように生徒達と先生が落ち込んで俯いていた。


 肩に青アザができたスガワラ トオルはケイマが用意した防具ではなかったら肩に矢がぶっ刺さっていたよな、もっと痛かったんだよな……と、死んでいたかもしれないイマガワ カナはカワカミ君が気付かず矢を取っていなかったら私……死んでいた?と再認識して身体を震わせていた。




 ケイマは二人は脱落かもしれないな、と二人を見て思った。

 それと痛みの経験をさせるべきだったとケイマはケイマで反省していた。


 思い出したのは一度目と二度目の訓練。

 訓練で指導者達が模擬剣や槍、矢で寸止めなしで叩き突き打ってきた。ケイマ達の実力に合わせてだが。


 毎日歯を食い縛って痛みを我慢していた。


 二度目の時は後にケイマの師となった最強格の者が手加減なしでやってきたから、二度目だとしてもケイマはビシバシボキッスパッグサッと痛みを与えられ、骨折や手足指切断、腹部など突刺、全身打撲させられていた。


 あの経験で痛みに耐性が付き、痛みの経験があったからこそ混乱せずに戦い抜けられたのだと今更気が付いた。


 ケイマは先生と生徒達に体力作りと魔力操作魔力制御をさせ、武器の扱い方を教え、稽古をしていた。

 稽古といっても訓練に比べればとっても緩いかった。

 痛みはちょっと痛いぐらいしか与えていなかった。


 最初っから痛みの経験をさせていれば、徐々に強く厳しくしていっていったら、途中に鍛えることを辞める子供もいたかもしれないが、スガワラみたく叫ぶような悲鳴を上げず、すぐに対処できたかもしれない。と、ケイマは反省をしていた。




「痛みに関しては俺の指導、鍛え方が悪かった。すまなかった。」

「「「……」」」

「しかしあの時、お前達は何を考え、どんな気持ちでダンジョンを探索していた?」

「「「……」」」


 ケイマが話しかけて顔を上げた先生と生徒達は顔を伏せる。


「確実にイマガワは死んでいた。さらにパニックになり、他にも死傷者が出ていた。そういう未来があった。ダンジョン、異世界ではそういうことが起きりうるところだ。」

「「「……」」」

「……明日から厳しくしていく。参加は自由。別に参加しなくてもここから追い出すようなことはしない。」

「「「……」」」

「考える時間も欲しいだろう。どんな結論を出そうが、尊重しよう。」

「「「……」」」


 「後は自由行動、好きにしな。」とケイマ、ライアが後を追い大広間に出ていった襖を先生と生徒達は無言で見つめていた。

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