第019話

 俺は先生と子供達を起こさないよう防音と防振プラス防見に進入禁止の結界を運動場に張って、ライアと模擬戦をしていた。

 ライアが昔と比べて接近戦ができるようになっていて、ライアの成長に自然と口角が上がってしまう。


 そのライアは最初鼻息を荒くしていた。

 徐々に落ち着いてきたと思ったら、なぜかイラついてるかのように攻撃が雑に大振り、大技を使うようになった。


 そして意味にわからないことを言い出した。


「騙しましたね!」


 俺は騙すようなことしたか?何かしたっけ?と思い返しながらライアの攻撃を受け流す。


「私を弄んで酷いです!」


 内心で弄んでないもないぞ?と呟き、変に興奮しているライアの猛攻を避け続ける。


「女の子を弄ぶなんて酷いよケイマ君!」

「?!」「?!」


 俺は一ヶ月先生と子供達の訓練に付きっきりで自身のことは習慣の朝夕のジョギングなど軽くでしか身体を動かしていなかった。

 彼女らが休んでいる間の今、本格的に身体を動かしていた。


 結界まで張って邪魔されぬように……


 俺とライアしかいないはずの運動場に、しかも防音と防振プラス防見の結界まで張っていて気づかれるはずがないのに、第三者シオリの声が響いて俺もライアも驚いて動きを止めてしまう。


 声がした方を見るとシオリが頬を少し膨らませケイマを指差して立っていた。


「シオリ……」

「シオリさん、どうやってここを?」


 俺もライアはイラついていたが油断、気を緩んではなかった。

 こんなに接近していることにも気がつかなかった。

 しかも俺はシオリが自身が結界を通ってきたことも全く気がつかなかった。


「どうやって?」


 シオリはライアの言葉に人差し指を頬に当て首を傾げる。


「どうやってって、歩いてきたよ?」


 シオリが本当に、不思議そうに言った。


「ケイマ様の結界が張ってあったはずなんですが……」


 ライアが困惑した顔で俺を見てきて、俺は困惑しながらも結界を張っていたと頷いた。


 結界には進入禁止の効果が付けていた。

 邪魔されないように、ともう一つ、入ってきて万が一俺とライアの模擬戦の余波を食らってしまう可能性ということもあったからだ。


 進入禁止の効果が付いた結界の中に入るには結界を破壊するか使用者の許可を貰うかだった。


「あーあれ、ケイマ君の結界だったんだね。ケイマ君がここにいるのに!と思ったのだけど見えない壁があって進めなくて、ケイマ君のところに行きたいの!って思ったら見えない壁が消えて通れたよ。」


 俺はシオリにそう言われ、結界が消えていないか確認をした。


 消えていないな。

 えっ?マジどうやって入ってきたんだ?

 意味がわからん。

 理解不能だ。わけわかめだ。


「それでね、ケイマ君。」

「お、おう。な、なんだ?」


 二度も魔王を斃し、厳つい猛者や大きな魔物達と戦ってきた。

 そんな俺が平穏な日本の生活を送ってきた女の子、シオリの謎威圧にビビる。


「女の子を弄んでは駄目なんだよ。」


 シオリが俺にビシッと指を差して言った。


「お、俺は弄んでいないぞ。」

「私、さっきライアさんが『弄んで酷いです』って言っていたのを聞いたよ。」

「いや、あれは「そうなんです!」お、おい!」


 俺はばっとライアを見た。


 一緒にシオリのことを若干引いたり、シオリにビビっていた仲間だと思っていたんだぞ!

 裏切るのかっ?ライアっ!


「ケイマ様から突き合ってくれと言ったんです。」


 模擬戦に、と前につくが付き合ってくれと言った。


「ケイマ君から……羨ましい。」

「しかも訓練場でイこうって。初めてが外で解放感があって、とてもドキドキしていたんです!」

「ん?」


 シオリはライアの言葉に首を傾げた。


「外でヤるからケイマ様も念入りに結界まで張ったんです。」

「?」


 シオリの頭上に?が浮かんでいるように見えた。


「それなのに!ケイマ様は私にっ!」

「?何をされたんですか?」

「武器を持たされたんです!」


 模擬戦だからな。


「武器を?」

「そうです!」

「今は模擬戦をしていたんじゃないんですか?」


 俺はその通りなので頷く。


「そうd「そうなんです!なぜか普通の模擬戦をしていたんです!」」

「えーっと、どこに弄ばれた要素が、あったんですか?」

「そんなもn「焦らして、焦らして遊んでいるんです!」」

「はい?」

「しかも!焦らされている私を見て、笑っていたんです!」

「いや、そr「ケイマ君、それは、ちょっと……」待て、シオリ。笑っていたのはライアが成長していたかr「そうだったんですね!」あん?」

「私の揺れるまでに成長した胸を見て嬉しくて笑みを浮かべていたんですね!」

「はあっ?」

「ケイマ君……」


 俺はライアに潤んだ目で、シオリに軽蔑した目で見られる。


「違うわっ!」

「違うんですかっ?!」


 ライアがとても驚愕した顔で俺を見る。

 シオリの軽蔑な視線は若干和らぐ。


「接近戦が前よりずいぶんとできるようになっていたから、成長したなと嬉しくてたまらず笑みがこぼれたんだ!確かにそこも成長しているようだが胸ちゃうわ!」

「……」

「……」


 ……おい、なんか反応してくれよ。

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