第007話
ケイマは異世界に召喚された二度目で、今回のように記憶を思い出して過ごした二年で『愛には愛を、恩には恩を、害には害を』、『来るもの拒まず去るもの応援』、『女子供は三度まで』、『敵には容赦するな』、という精神になっていた。
『来るもの拒まず去るもの応援』
良人や普通の人に対してだが王公貴族だろうと他種族だろうと奴隷だろうと近付く者は受け入れ、去っていく者(普通の人以上の者)には応援(金などを渡して「頑張れ」「元気でな」と言って別れた)した。
ニシムラのように命の恩人、つり橋効果でケイマの事を好きになる、一時的に好きだと思う女子、女性が何人もいた。
子種だけでも!という人もいた。
自分を好きになってくれた人にはケイマなりに全力で接していた。
後に出会った男と惹かれ合った女性も何人かいて、そんなカップル、夫婦を祝福、応援した。
『女子供は三度まで』
特に子供は生活する周りの環境で変わってしまうから三度までと言っているが、長い目で見ていた。例え人を傷付けても、だ。アサシンギルドの子供には懇切丁寧に接していた。
大人だったら、『敵には容赦するな』だった。
敵対行動かつ物理または魔法攻撃してきたらとりあえず手足を切断し移動できなくして、魔法封じを施す。
騙そうとした者どもは魔法封じを施し、手足に頑丈な重い枷を付ける。
勇者の特権で強制的に奴隷化にして、動機や罪の重さによって制限を決めて、回復させて強制労働。
魔王最前線で戦闘や支援、最前線への物資輸送、鉱山採鉱や雑務などさせていた。
ケイマ達を近くで支援してくれた人達もいたし、去っていく人達もいた。
命が軽いところだが、ケイマが住んでいたところとは違い、優しさ溢れるところでもあった。
厳しいところもあったが揺れ幅が酷く大きいところでもある。
たまたま巡ったところは良い場所が多かった。
魔物、盗賊などで亡くなる人も多く、寡婦も寡男も多くいた。
日本とは違い新たなパートナーに出会い、惹かれ合い再婚率がとても高い。もちろん再婚しない人もいたが。
そういうのもあり二回目は多額の資産を残し、安全な場所を作り確保し、協力助け合う人達が周りにいる場所を作って、好きになってくれた彼女達と別れ、
ちゃんと相手も納得し円満な別れ方をした。したとケイマは思っている。
その時ライアに次来ることがあったら、ということを言った。
俺達召喚された者は元の世界に戻ると記憶を封印される、封印されていた。だが魂が覚えているのか共に召喚された相手が良いやつだ(二度とも運良く?皆良い人だった。)となんとなくわかって、召喚前はほぼ他人だったのに全員と友人関係になった。
召喚前は相手を認識していなかった先輩と同級生がいた。
その二人は異世界で恋人になり、日本に戻ってきてすれ違った時二人とも一目惚れして即付き合い始めて、ケイマが三度目の召喚される少し前までラブラブな様子を見せられ聞かされていた。
ケイマは日本には帰らず異世界に根を下ろすつもりだ。
もしニシムラを奥さんに受け入れ、ニシムラと愛し合った場合、彼女が日本に戻って運命の人が俺だと魂が覚えていたら、誰かと付き合おうとした時、好きにならないかもしれない。
好きになるかもしれないが、こう、直感で私はこの人と結婚するんだ!って
だから、ニシムラとそういう関係になるわけにはいけないとケイマは断ったのだ。
コンコンコン
俺は泣かせてしまったニシムラのことを考えていた。
思考しているとノックが鳴った。
「ケイマ様、入ってもいいでしょうか?」
「あぁ、いいよ。」
「失礼します。」
「し、失礼します。」
ライアの後に考えていた彼女が続いて入ってきた。
「あ、あの、ごめんね。勝手に舞い上がっちゃって、ケイマ君の気持ちを考えないで、一方的に話を進めちゃって、ごめんね。奥さんに、ということは無しで!で、でも、ケイマ君と一緒にいたい!」
一緒にいたいという強い気持ちが伝わってくる。
一緒にいて好きが積もってしまったら……
こっちに根を下ろす俺はニシムラの好意に応えるべきではない……
「……ニシムラ、今後どうしたい?」
謝罪にも一緒にいたいという言葉にも返答せず、俺はニシムラに今後の希望を聞いた。
「こ、今後?えーっと魔法のある異世界だkら魔法が使えるようになりたい。綺麗にするクリーンの魔法は絶対使えるようになりたい。私、魔力が少ないみたいだけど、使える?」
「魔力は増やせるから問題ない。ライア、ニシムラに魔法を教えてやってくれ。」
「わかりました。」
「ライアお姉ちゃん、よろしくお願いします。」
「ええ、ケイマ様の側にいられるよう頑張りましょうね。よろしくね。」
「はい!あ、ケイマ君、私のことはミヨって呼んでほしいな。」
「あぁ、わかった。」
「ケイマ様はどうなされるのですか?」
「俺は子供達と先生を助けに行くよ。」
「子供達?」
ミヨは俺の言い方に首を傾げた。
「あぁ、同級生達だ。」
「そうだっ!人を簡単に殺そうとする人達だから皆が危ない!」
「わかっている。ちゃんと助ける。」
「……大丈夫なの?」
「なんとかなるだろ。」
「なんとかって……。」
「ミヨ、ケイマ様なら余裕ですよ。大丈夫です。」
「それなら良かった。」
「今夜にも行ってくるよ。」
「今夜っ!?」
「早い方がいいと思うんだ。」
(自分達の死以外の見せしめもありえるな。あまり猶予がないかもしれないしな。)
俺はライアと再会し説明している時にダンジョン内で過った強がりな子供がまた頭の中で過り、俺にはわからない自分の表情の変化にライアが気付き、すぐに殺されることはないだろうが強がりな子供がいるから少し不安だとライアに言うと、今夜にも凌辱されるかもしれませんと指摘された。
召喚した国の者達の考えがクズのゲス野郎だから、今夜にも子供達と先生を助けにいこうと決めた。
「そうですね……。女性が危なそうですよね。」
「女性、女子が?」
ミヨがなんで?と分からず首を傾げた。
「はい。ケイマ様から聞いた感じですと余程じゃない女性は見せしめと士気向上の為に使われそうですね。」
「見せしめと士気向上の為に使われる?」
「犯されます。」
「お、犯されるっ!?早く助けないと!」
「だから今夜行ってくる。」
「あ、そ、そっか。うん。気を付けてね。」
「あぁ。」
ミヨがお茶を飲んで一息する。
「ん?あ、あれ?」
「どうした?」
ミヨが俺を見て首を傾げ、目を擦り、もう一度俺を見た。
「私、疲れているのかな?目がおかしいのかな?ケイマ君が大人っぽく見えるの。」
「あぁ、元の世界に戻る時に女神に時空魔法で召喚時の身体にさせられるんだ。」
「召喚時の身体にされちゃうっ?!じ、時空魔法って物凄い高度な魔法だよねっ!?さすが神様だねっ!?」
「そうだな。使い手も十人もいないんじゃないか?」
「そうですね。時空の精霊王様と大精霊様、ケイマ様のお師匠様とケイマ様しか知りませんね。」
「四人っ!?というかケイマ君も使えるのっ?!」
「あぁ、自分に使われて、やっと使えるようになったな。」
「凄いね!あ!それで自分で異世界で過ごして成長した身体に戻したんだね!」
「正解。」
「ニホン人は理解力がある人が多いですね。」
「偏ったイメージに困ったこともあったけどな。」
「あぁ、そうでしたね。」
「え、え、何それ?気になる。」
「また今度な。」
「うん、今度聞かせてね。それじゃあ、こっち聞かせてよ。」
「なんだ?」
「ケイマ君、大人な顔つきになっているけど、何年異世界で過ごしたの?あと前は勇者召喚でって言ってたけど、魔王がいたの?今回召喚されたのも魔王の討伐のため?魔王を斃したら日本に帰れるの?」
「一回目の召喚の時に」
「えっ?一回目?!何回か召喚されているの?ケイマ君どこの主人公なん?!」
「ふっ。ミヨの方こそ、異世界デビューって感じだな。」
「え、え?」
「ほんとクラスでは無表情だったからな。こんなきらきらした目で早口で話しているのをクラスのやつらが見たら驚くな。」
「……数人を除いて見られたくないかな。」
ミヨの表情がきらきらした期待した表情から一転暗い表情へと変わる。
「そ、そうか。あー、一回目の召喚の時に四年、二回目の時に二年、計六年異世界で生活したな。」
俺が話を戻すとミヨの表情も戻った。
「じゃあ、今のケイマ君の身体は二十四歳ってこと?」
「そうなると思う。というかよく俺が十八になっていたのを知っているな。」
「え?あ、そ、そりゃあ、ねぇ、く、クラスメイトだからね。」
「そうか。」
俺は若干顔を赤くするミヨに空気を読んで深追いせず話を続ける。
「前回も前々回も勇者召喚で魔王の討伐のために喚ばれた。ちゃんとと言うのも変だが魔王がいた。」
「いたんだ。」
「一回目は三年、二回目は二年かかって魔王を斃した。」
「一回目、三年?」
「あぁ、魔王を斃すのに三年かかったんだ。一回目は日本に帰還できる時期を逃してしまって、一年待って日本に帰還したんだ。」
「日本、地球と異世界が重なる時とか近くならないと違う世界に行っちゃうとか?」
「たぶんな。」
「ミヨの理解力、凄い。」
ミヨがライアの発言に照れたのか頬を掻く。
「そ、そんなことないよ。魔王を斃すと帰れるんだね。」
「勇者召喚の魔法陣は神の魔法らしく、そういう契約がされているらしい。」
「そうなんだ。でも、そうだよね。異世界から人を召喚、送還するんだから、神様じゃないと無理だよね。」
「呼ばれる方は堪ったもんじゃないけどな。」
「そ、そうだね。私……ケイマ君がいなかったら、死んでいたもんね……」
「あぁ、神様に会ったら、一発殴らないとな。あとヤバい国か組織に魔法陣を教えるな!って言わないとな。」
「えええ、さすがに神様にそんなことできないよ。そんなことしたらバチが当たっちゃうよ。」
「神様だからって、何してもいいわけがない。老若男女だろうが神様だろうが他人に迷惑をかけるなら平等に殴る。俺は○条さんリスペクトしているんだ。」
「うん、平等に殴るで○条さんが思い浮かんだよ。」
「ケイマ様が尊敬している方はミヨも知っている有名な方なんですね。」
俺はライアにどんなに凄い人なのかを熱弁した。
「有名っていったら有名なのかな?あ、でも、尊敬していてもケイマ君は彼のように自分の身の安全を顧みないことをしないでね。」
「自分の力を把握しているつもりだ。魔王だって力を付けて万全な準備をしてから戦ったからな。」
「あ!魔王だよ!」
「魔王がどうした?」
「私達が召喚された理由!」
「あぁ、そういえばそんな話をしていたな。前回と前々回は結構切羽詰まった感じがあったんだが、今回はそういう雰囲気は全くなかったな。」
「そうだよね。魔王討伐なら殺そうとしないよね、普通。恐怖で支配して全員で討伐をさせるとか?」
「恐怖で支配するという思考は感じたな。だが全員でっていうのはないな。」
「なんで?魔王って勇者召喚をしないと斃せないほど強いんじゃないの?全員で挑んだ方が確実に討伐できるんじゃないの?」
「馬鹿でアホの国だからじゃないか?俺達をダンジョンに引き摺って運んだ騎士達の会話を聞いていたが、ライアが指摘したように女の子達数人は近い内にやられるだろうな。」
「っ!?なんなのこの国!?最低だよ!」
「本当にな。この世界のトップクラスの力を付く可能性がある異世界人達を恐怖で支配するのは悪手だな。」
「トップクラス?!私もなれる?!」
「本人の努力次第でなれる。」
「今まで色々やってくれたなァ!って倒すざまあ展開だね!」
「そうなる未来もあったかもな。」
「私力を付けたらケイマ君と私を刺した鎧の人をぼこぼこにしたい!命令した人もぼこぼこにしたい!あなた達が自分がしたことが悪いことだと理解するまで私はぼこぼこにするのを止めない!」
「ふっ。幅広く読んでるな。」
「わかる?」
ミヨが嬉しそうに聞いてきて、俺はわかると頷く。
「あぁ。その前に子供、同級生達と先生を助けてからだな。」
「うん。そうだね。何もされていないといいんだけど。」
ミヨの顔が不安そうな表情になる。
「今のところ大丈夫だ。」
「そうなの?」
「あぁ。」
「そっか。」
「助けたあと、ついでにこのダンジョンを攻略して破壊してしまうか。」
「いいね!」
意外と色んなジャンルの漫画やアニメ、小説を読んでいたミヨとは趣味が合い、馬が合い、会話が盛り上がってしまった。
時々ライアに説明したりして、楽しそうに嬉しそうに聞いてくるライアに俺達はつられ楽しくなり会話が盛り上がった。
ミヨが召喚された者じゃなかったら、と思ってしまった。
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