第003話

 生徒達と先生は自分達と柱、模様以外何もなかった大部屋に扉が出現するという異変に気付き静まり、扉を注視した。


 現れた扉が開くと、まず騎士らしき全身鎧と剣を装備した人達と魔法使いらしきローブを着て杖を持つ人達が入ってきて安全を確認するかのような行動を取った。

 そして、彼らは威圧を放ちながら召喚された先生と生徒達の周りを歩き取り囲んだ。


 生徒達と先生は様々な反応をする。

 過去勇者召喚されたことがあるカワカミ ケイマは入ってきた者達を観察し、気の弱い生徒シラキ カエは恐怖で身体が震え、シラキの隣にいる生徒アイサカ ハルカはシラキの手を握り、ぽっちゃり体型のアサイ含む一部の生徒達は「騎士かっけー」「魔法使いがいるということは魔法があるね。」と呑気に呟いたり、先生は生徒達を庇うように先頭、扉の近くに立った。


 さらに扉から先に入ってきた騎士より良い全身鎧を装備している者、黒いローブを着て長い杖を持った年老いた男、一際豪華な服を着たふくよかな男が潜ってきた。彼らが扉を潜り終わると扉が閉じ消えた。


 豪華な服を着たふくよかな男の左右に良い全身鎧を装備している者と年老いた男が並び、先生と生徒達の前に立つ。ふくよかな男は不満気に、全身鎧は無言で、年老いた男は笑みを浮かべて先生と生徒達を見た。






 俺、カワカミ ケイマは彼ら、特に偉そうなデブと黒いローブを着た年老いた男を見て、(これは……)と嫌な予感を感じた。


「使える奴はいるか?」

「そうじゃのぉ……」


 偉そうなデブに聞かれた年老いた男が目を細め自分達を見る。


 俺は年老いた男が何をするか察し、目を細める瞬間老いた男よりも早く子供達と先生の魔力を確認し、一番低い子と同じ魔力に見えるように魔力を制御した。


 彼女とすれ違って使えると思って、周囲の観察しながら、魔力の確認をし操作と循環を行っていた。それが功を成し年老いた男より早く魔力視と魔力感知を使って、子供達と先生の魔力量を瞬時に把握し、自身の魔力量を制御した。


「魔力が高いものが五、そこそこのものが十一、下級騎士位のものが十一、少なく使えないものが二ですな。調きょ、訓練すればすぐ使えるものは十六ですな。」


 下級騎士くらいがどのくらいかわからないが自身の魔力視と魔力感知で見た魔力量を量別に分けたら年老いた男が言った人数と似たような結果になった。


(このジジィ、俺達のことを人としてじゃなく物として見ていて、調教と言おうとしたよな? 今回はやベー国に召喚されたな。)


 俺は最初彼らに感じた勘が当たっていて内心で(面倒だな……)とため息を吐いた。


「うむ……少ないものはどれだ?」

「あれとあれですな。」

「連れてこい。」

「はっ!」


(あ、本当にこの国やばいわ……)


 俺は偉そうなデブと老いた男の会話を聞いて察してしまった。


 偉そうなデブの命令に隣にいた他より良い全身鎧の者が返事をして行動に移した。全身鎧は声からして男のようだ。






 ふくよかな男に命令された全身鎧の者が年老いた男が杖で差した二人、尻餅をついていた女子生徒ニシムラ ミヨの腕を掴み立たせ、ぼーっと立っていた男子生徒カワカミ ケイマの腕も掴む。


「な、なにっ?い、嫌!痛い!離して!」

「な、なんだよ!」


 全身鎧の男はニシムラとカワカミの言葉に答えず、問答無用で豪華な服を着たふくよかな男の前に連れていく。


 ニシムラは恐怖で身体を震わせ、カワカミは強がり睨むようにふくよかな男を見る。

 他の生徒達と先生は危ない雰囲気に呑まれていて、なんの行動を起こせなかった。


 全身鎧の男はそんなニシムラとカワカミの前に立つ。


「殺せ。」

「はっ!」

「え?」

「危ない!」


 全身鎧の男は豪華な服を着たふくよかな男の命令に従い、剣を抜きニシムラの心臓へ突き刺そうとした。


 カワカミはそれを見て、庇うようにニシムラに抱きつき倒れこむ。


「「「えっ?!」」」「「「っ?!」」」

「「「はっ?!」」」「「「ちょっ?!」」」

「「「きゃああああ」」」


 全身鎧の男の行動に生徒達と先生は様々な声が上げた。


 全身鎧の男は避けられたことに驚くがすぐに次の行動に移す。


「きゃあ!」

「少し我慢しててくれ。」


 ニシムラは迫り来る剣に悲鳴をあげた。


 全身鎧の男は倒れているカワカミとニシムラをまとめて、二人の胸に剣を突き刺した。


「ぐっ!」

「え?」


 ニシムラは自分とカワカミの胸に刺さる剣、流れる赤い何かを見て気を失う。

 カワカミは血を吐きながら周囲を囲む者達を見て、全身鎧の男、年老いた男、豪華な服を着たふくよかな男を順に睨んだ。


「お前ら、許さないからな!絶対……殺し……て……やる……」


 そう言って、カワカミは動かなくなった。


「え?え?」

「きゃあああああああああ。」

「な、なんてことを……川上君、西村さん……」

「う、嘘だろ?!」

「こ、殺したのか……?」

「川上君が、川上君が……」


 生徒達と先生は目の前で起こった殺人に狼狽える。


「騒ぐな!!」

「「「っ!」」」


 全身鎧の男の一声で生徒達と先生は一瞬にして身体が固まり静まる。


 全身鎧の男は剣を引き抜き、血で濡れた剣を生徒と先生に向ける。剣から血が床にぽたぽたと落ちる。


「こうなりたくなかったら、我らに従え!」

「素直に従っていた方が良いぞ。」


 全身鎧と老いた男の言葉に生徒達と先生は従うしかなかった。


「これはダンジョンに捨ててこい。」

「「はっ!」」


 騎士らしき者達が血を流しているが動かなくなった同級生カワカミとニシムラの制服の襟足を掴んで引きずって、雑に運ばれるのを見て、生徒達と先生はこれから始まる非日常に恐怖を抱き、涙を流し、身体を震わせていた。

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