第002話
俺、カワカミ ケイマは浮遊感を感じて目を覚ます。
(あぁ、
俺は目覚めたばかりのぼんやりした意識の中でそう思いながら頭を動かし周りを見た。周りには自分と同じように一人一人光の玉に包まれた同級生達と先生がいた。
数名の同級生と先生は目を開いているのだが、こんな摩訶不思議な状況に確認したり狼狽えたり何かしらの反応を見せてもいいのだが、全く動きを見せなかった。まるで時間が止まっているかのようだった。
しかし自分達以外、風景は新幹線に乗った時のように流れていっていた。自分達を包む光の玉は纏まって何処かへ移動しているようだった。
俺は不思議と初めてのはずなのに落ち着いた気持ちでまたかと流れる風景を見ていた。
そんな速い移動の途中で遠くからでも見てわかる超絶美人な女性を発見し、そんな女性に自然と目を向けた。すると彼女と目が合った、ような気がした。
俺は彼女を発見してから時間が引き伸ばされるような感覚を覚えた。そして女性が口を開く。
「本当にまた来るだなんて。貴方の勘は凄いわね。約束は守るわ。早く呼んでね。」
(俺に言ったんだ。)
俺は不思議と女性の言葉がはっきりと聞こえ、なぜかそう思い、彼女の目を見ながら頷いた。合っていたのか超絶美人な女性は微笑みながら手を振った。すれ違い、振り返っても、俺が彼女を視認できなくなるまで彼女は振り続けていた。
自分達を包んだ光の玉は女性とすれ違ってすぐに地球のような青と緑の惑星へ向かい、空を降下し、建物や地面に衝突することなく通過していった。
白い大部屋に着く。終着の場所に近づいたからかゆっくりと速度が落ちていき、円形の模様が刻まれた床に着くと包んでいた光の玉が消えた。
光の玉に包まれ運ばれてきた先生コヤナキ チエ以外の生徒達は少し上を見て椅子に座っていた体勢だった。光の玉が消え、時間が動き出しその体勢で座っていた椅子が無くなっているとどうなるか━━
「あうちっ。」
「いって。」
「うお?!」
「きゃあ!」
「うわっ?!」
ほとんどの生徒が硬い床に尻餅をついた。尻餅をついた生徒は痛いとお尻を擦る。
コヤナキ チエは立った体勢だったため少しふらついただけであった。尻餅をつかず咄嗟に体勢を立て直した数名の生徒と先生は周りを見る。
光の玉で運ばれている途中目を覚ましていた男子生徒カワカミ ケイマは数秒空気椅子を維持してから自然と立ちの姿勢になり、ぼーっと立っていた。
「何が起こったのでしょう?」
「ここは?」
学校の教室から白い床と壁と天井に白い柱と部屋全体が白い石材ようなもので出来た部屋に移動していた。窓や照明がないにも関わらず、不思議と部屋は明るかった。
「先生、学校行事ですか?」
「……いえ、このような事は聞いていません。」
委員長の女子生徒イマガワ カナデの質問にコヤナキ チエは「こんなことは知らない。」「聞いていない。」と首を左右に振って答えた。
「異世界召喚じゃね?」
ぽっちゃり体型の男子生徒アサイ アツシが床や柱を見て言った。アサイが言った『異世界召喚』、その言葉に合っているかように床に見知らぬ文字らしきものと紋様で生徒達と先生の二十九名が余裕で収まるくらいの円形の模様が、柱にも見知らぬ文字らしきものと紋様が刻まれていた。
「これが、召喚の魔方陣か!」
「勇者召喚だな!」
「じゃあ!じゃあ!僕達は勇者ですね!」
「チートで活躍してハーレム!」
「王女様!エロフ!けも耳獣人!ロリっ娘ドワーフ!」
「ステータス!あれ?出てこないな。ステータスオープン!ステータス表示!~中略~メニューオープン、メニュー表示、鑑定……ステータス見れないなんてクソゲー。」
「アイテムを使わないと見れない系じゃない?」
「それだ!早く見たいな!」
「どんなチートだろうね!」
ぽっちゃり体型のアサイ含む一部の生徒が物凄く興奮し出す。夢に見ていた、妄想していた事が現実に起こったら、彼らが興奮しないわけがない。
「せんせー、ここ何処だし。」
「先生もここが何処なのかわかりません。」
「えーなんでわかんないしー。」
「せんせー、しっかりしてよー。」
「トイレ行きたかったんだけどー。せんせートイレどこー?」
「ごめんなさい、わかりません。」
ギャルな同級生達バンバ ルカ、ユダ アリカ、ビゼン ベニカが先生に絡む。
困惑しながらも先生は生徒の名前を呼び、生徒達は「はい。」と声を上げたり手を上げて応えた。3-2の全生徒の二十八名の確認ができて先生はひとまず安堵の息を吐いた。
ぼーっと立っていたように見えたカワカミ ケイマの脳裏に封印されていた記憶が駆け巡っていた。
「………あぁ。」
俺は脳裏に駆け巡った記憶を把握し、思い出した。
一度目は中学二年の時。学校のトイレでお尻を拭き終わりズボンを履くところで、トイレにいた生徒と共に召喚された。バランスを崩し前に倒れてお尻丸出しになって、割り振られた部屋に数日引きこもった。
二度目は高校一年の時。体験入部で部活をするため着替え中に着替え終わった人達と共に召喚された。最悪の尻出しではなかったがパンツを女子生徒や異世界の女性に見られ、数日部屋に引きこもった。
「ふぅ……(恥ずかしい思いをしなくて今回は黒歴史にならなかって良かった。 最初が肝心だからな……)」
俺は封印された記憶が甦り、二つの黒歴史のようにならなくて安堵の息を吐いた。
(あの人とすれ違ったということは同じ世界なのか?)
周囲を観察しながら自身の身体を確認していると魔力の揺らぎを感じた。
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