第4話
「大輔さん! あなたはずっと親の味方ばかりして私の話を聞いてくれないどころか一緒になって虐めたわね。親の面倒見ろって? 私の自由も仕事も奪いやがって結婚したことに後悔してるわ」
と同時に女は近くにあった辞書を大輔という男に投げつけた。頭部を怪我している大輔は逃げることができず、顔にあたり、大袈裟にきこえるかのように大きな声で叫んだ。そしてのたうち回っている。
「許してくれ!!! もうやめるんだ!」
老夫婦もヒィいいいいと声を出す。悲惨な現場である。冬月は女の気を落ち着かせようと試みる。これ以上被害が大きくならないようにと。
「こんなことしてもどうにもならない、今すぐ包丁を置け!」
冬月がそう言うと女は彼に包丁を向ける。
「あんたにはわからないっ!! 私の苦しみを!!!」
彼女は両目から涙を流している。冬月の横にいた老夫婦は彼女の義理の親であった。そう、あのモンスター住人であり上司が心配していたあの問題のある夫婦。二人はごめんなさい、ごめんなさいと唸っている。上司の嫌な予感は的中してしまったのだ。
「おまわりさん、奥にも私の親戚が……」
と義母が息絶え絶えに話す。まだ被害者がいるようだ。耳を澄ますとうめきごえが遠くから聞こえる。
「この家族はおかしいわ。遺産相続で醜い争いなんてして。あんたらが騒ぎ立てなかったらおおごとにならなかったのに! 執着しすぎなのよ、何に対しても!!!!」
女の顔がさらに歪む。彼女の右手は震え、包丁から血が滴り落ちる。
救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきた。
「早く処分しなきゃ、処分しなきゃ……」
虚ろな目をし、ブツブツ言いながら彼女は一歩一歩、冬月と義親たちの方に歩み寄る。
『ヤバイ、完全にいってやがる。早く他のみんな来てくれ。俺がこの手放したらまた出血してしまう』
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